森林人通信

Vol.68 2010.10.1

森をつくり 森を楽しみ 恵みをいただく
爽やかな秋日 活動いろいろ 

 長かった猛暑から急転直下の秋到来。森に親しむ季節がやってきた。学校林の作業指導、「ホームグランド」での森づくり、室蘭遠征、薪づくり支援など、 9月の活動は多彩を極めた。

8日 札幌南高・学校林 9名

高校生に対し作業指導を行う。

11日 柴原山林 12名

 本年最後となった「夏日」の作業。除伐、笹刈りなどを行う。

18日~19日 下山山林 11名

下山山荘と作業機

 それぞれに札幌から高速道約130㎞を長駆して、10時ころ室蘭の現場に到 着。(江別・札幌を早立ちしたWaさん・Ooさんは、室蘭岳登頂後の参加)
 1年ぶりの下山山荘は、バルコニーが完成し、さらにトラクターなどの機械 置き場が普請中、着々と整備が進んでいる。
 それにしても、トラクター、ブルドーザー、ユンボを買い揃える入れ込み様はどうだろう。スゴイなぁ、と感じ入るばかり。
 昼食をはさんで牧草跡地の草刈りや林地の作業道予定コースを笹刈りした が、秋の日は短い。
 急いで、ドラム缶を縦に半裁した特製の大コンロに木炭を熾 (おこ)し、買い出し・持ち込みの野菜や肉、山海の珍味を取り出して、熱く なった特厚鉄板や金網の上に載せる。ジュージューと音がして、湯気が上が り、脂が沁み出て、さぁ、本番(?)と晩餐になだれ込む。

 豚や牛の焼き肉・焼き鳥、焼きそば、イカのまるごと蒸し焼き、ホッキガイ の殻ごと「焼き貝(?)」(醤油を垂らして美味かった)、口直しの幌加内ソバ。 秋の夜は長い。12時ころまで談笑が続いた。

 翌朝の作業前、巨樹の森(国有林)を案内してもらう。巨大なミズナラの根元 で記念写真を撮る。その直径は6m。畏敬の念に打たれる。

語り合いの貴重な機会でもある

大きな命の前で

26日 髙川山林 16名

 冬の備えをしない能天気なキリギリスに、仲間のアリさんが薪づくりの支援 に駆けつけた。
 午前中に2度、篠突く雨に作業を中断する。雨は降らないという天気予報に 毒づき、変わりやすい空を呪(のろ)っていたら、間もなく天気回復、結局、 作業はまずまず滞りなく捗った。
 「薪割り術」は、殊に女性陣の上達が著しい。両足はしっかり地面を踏みし める、腰を入れてマサカリを上段に振りかぶる、割る一瞬にインパクトを最大 に強める - すっかりコツを掴んだようだ。

様になってる

薪小屋がイッパイになった

 その女性陣の感想。
S.K.さん「2年目の薪割り。少しは上達したかな~と、自分を褒めてやりました。楽しかった後の筋肉痛も心地の良い痛みで…。来年の薪割りも楽しみです。」
S.T.さん「積んだ薪が崩れないように慎重にやっていたら遅くなってしまい…。Nさんが巻き返してくださり、助かったです。ハードで楽しい〈お山〉でした。」
H.K.さん「海を望み、爽やかな空気を吸い、温かな方々と過ごした楽しい一日でした。お役に立つどころかお邪魔虫ですが、皆さんの優しさに甘えさせていただきました」
T.C.さん「久しぶりの高川山林の薪わり、楽しかったです。思いがけないところが筋肉痛ですが(笑)」
 昼休みには、薪切りをしたり薪割りをして薪とともにあった子どものころの、生活を懐かしんだり、薪ストーブ(「おがくずストーブ」などという知る人ぞ知るストーブも)や石炭ストーブの思い出を語ったりした。
ストーブの炎や温もりは人を引きよせる郷愁を纏(まと)っているようだ。
 作業が終了するころには、薪小屋を満たすばかりか、溢れて野積みされた薪の山もできた。森の恵み、そして、友情の賜 - 手を合わせたくなる。

森をつくる動物たち

北海道開拓記念館HPから

(開拓記念館で開催中の特別展「どんぐりコロコロ展」の図録から引用。一部加筆)
 北海道の主なドングリの木(堅果:堅い殻に覆われた実を持つブナ科の樹木)には、ミズナラ、石狩海岸などで見られるカシワ、北広島市や苫小牧市などで見られるコナラがあります。
 ドングリは乾燥に弱く、渇いた場所に置かれると数日で死んでしまい、発芽できなくなります。風に飛ばされるための羽根や動物にくっつくトゲを持たないドングリが生き残るには、食料として動物に湿った場所へ運んでもらわなければなりません。
 森に棲むアカネズミやヒメネズミは「貯食(ちょしょく)」といってドングリなどの木の実を集めて落ち葉の下や浅い地面に埋めて溜め込み、冬の食料にします。
 そしてドングリは、オシドリ、ヤマガラ、アオバトなど鳥たちにとっても大切な食べ物です。中でもカケスは、樫(カシ)の実=ドングリをよく食べることから「樫鳥」とも呼ばれ、冬のためにたくさんのドングリを集めます。のどの袋に一杯のドングリを詰め込み、隠し場所に着くと1個ずつ吐き出して地面の落ち葉の下などに隠します。この仕事をドングリがなくなるまで繰り返し、さらに他の場所へと隠し直します。1羽のカケスは1シーズンに数千個ものドングリを運び、運ぶ距離も最大1㎞以上にもなるそうです。
 動物たちが食べ残したドングリは親木から遠く離れた場所で芽を出し、分布を拡げていきます。
 みなさんもこの季節、森にドングリを探しに行ってみませんか。

その名は ヤマブドウハトックリフシ

かわいらしいトックリ…

 ヤマブドウの葉に不思議なものを見つけました。
 ネットで調べたら、「ヤマブドウハトックリフシ」の虫(ちゅう)えい=虫こぶとありました。
 虫こぶは8月中旬には成熟し、9月に入ると虫こぶ部分が、葉から離れて落下し、幼虫は地上の虫こぶの中で冬を越すらしい。
 虫こぶって、それぞれ植物と虫のペアがあって、形もさまざま、おもしろそ う。(会員O.H.さん発)

絶海の孤島問題 
~荒巻 義雄氏によるコラム~

第3回 番外編【異常気候】

 一夜明けたら晩秋になっていたという感じだが、それにしても今年は暑かっ た。終戦の日の暑さをはっきりと記憶しているが、その比ではない。
 来年はどうだろうか。猛暑と厳冬、短い春と秋という新たな気象パターン が、これからはじまるような気がしてならない。
 根拠はある。グリーンランド沖で北大西洋海流が冷やされ、海水から氷山が できる過程で、塩分が濃縮されるため、海水の密度が重くなる。これが、あた かも滝のように深海に沈み、南北米大陸東縁を南下、さらに南極大陸ぞいに深 海流となってゆっくり移動するうちにさらに冷却される。やがて、これが、印度洋、太平洋で海面へ上昇するのだ。その結果、地球の全大洋に連動する海流の大循環がおこり、撹拌されているらしいのだ。もし、これが止まったらどうなるか。撹拌されない風呂のように表面だけ温度が上がる。
 以前は、グリーンランド沖で二〇〇〇米は下降した密度流が今、五〇〇米も ないらしい。いや、すでにゼロになっているかもしれないのだ。結果的に、高 い海面温度が上昇気流を生み、印度洋ではサイクロンがヒマラヤを越え中国奥 地に豪雨をもたらす。日本では、今年、南方洋上に大きな高気圧が発達、北極 からの冷気の南下を阻んだ。台風が小型化し、少なかったのもこの気圧配置の せいだ。
 すでに地球は、この異常なパターンに入ったように思えるが、前例は沢山あ るらしい。
 対策はあるだろうか。二酸化炭素排出量を減らす運動も必要だが、森林を増 やす対策も有効らしい。たとえば、アマゾンでは炭素貯留だけでも六〇億~一 二〇億$の経済価値がある。しかし、アマゾンでは今、大規模伐採が加速的に 進んでいるのだ。
 アマゾン地区は〈地球の肺〉である。だが、将来、サバンナになるという説 もある。アマゾンに降る雨は、ブラジル沖で上昇気流が雨雲となり、貿易風で 東の内陸に運ばれ、アンデス山脈にぶつかって雨になる。ところが、最近は、 海水温度が異常に高く、陸に着く前に海上でスコールとなり、アマゾン地区に は熱風が吹き降ろすという。
 など、今回は、イースター島問題が、地球規模で始まっている異常気候の話 題になった。いずれ、いや近々、森林保護がますます脚光を浴びる時代になる だろう。同時に身近な問題として、北海道の都市にも集中豪雨被害が起きる可 能性がある。対策が必要である。

(あらまきよしお 作家・荒巻山林 山主)

(コラム「絶海の孤島問題」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)

木を友に 
~中野 常明氏によるコラム~

28【ポプラ】

ポプラの木

ポプラの葉

 良く知られた木である。しかし、和名までご存じの方は少ないのではと思う。セイヨウハコヤナギがその和名である。名前の通り柳の仲間であり、春になると柳絮(綿毛)を飛ばす。ポプラの語源説には二つあり。一つは、古代ローマで沢山植えられ、市民の木という意味の「アルボル・ポプリ」のポプリから来たという説。もう一つは、葉が風に良く震えることから、ラテン語の震えるという意味の「ポプリス」から来たという説である。

 ポプラの分類はなかなか難しい。古い文献によればポプラとイタリアポプラの二つに分けられるが、新しい文献では、ポプラ=イタリアポプラとエウロアメリカポプラ=改良ポプラの二つに分けている。このほかに王子製紙が独自に開発した、製紙原料用の「王子ポプラ」がある。これはポプラの俗称を持つが、ドロノキを改良したもので、正しくは、ポプラとは呼べない。
 

 ポプラ類は雌雄異株で、雌と雄とでは樹形が異なるので、目で見てポプラ類を正しく分類することは、大変難しい。ここでは新文献分類法によって、ポプラを説明する。原産地はヨーロッパまたは西アジアの落葉樹で、高さ20m~30mになる。スラリと空に伸びた樹形は、良く知られている。但し、それは通常雄の木で、雌の木は、横にも枝を広げてずんぐりしているものが多い。葉は広三角形、長さ4~12㎝、細かい鈍鋸歯があり、葉柄2~5cm、6月頃に種が成熟し柳絮となって大量に種を飛ばす。並木、公園樹として植えられるが、最近では風に弱いことが嫌われ、交通量の多い道路には植えられなくなった。材質は軟らかく、色が白いので、昔は折り箱材や強度の要らない器具材用として利用された。

 北大構内のポプラ並木は有名であるが、並木が思ったより短いのにがっかりした観光客が多いという。それも数年前の強風で大半が倒れてしまい次代の並木を造成中である。倒れたポプラを使いハープシコードを作り北大博物館に記念として残してある。北大以外にも、真駒内、月寒、石狩街道などにも立派なポプラ並木がある。これらを観光客に紹介したいものだ。
 ポプラは、成長が早い反面寿命が短くほぼ百年である。我が家の近くの防風林に沿った道は、「ポプラ通り」と名付けられている。しかし、ポプラの姿はあまり見掛けない。明治の初めに植林され既に百三十年以上経っている。従って寿命はとうに過ぎて補植もされていないので、僅かな老木が、残るばかり、というのが原因である。欠点の多い木だが、改良されて性質の優れた新種がどんどん出てくるのは心強い。

参考図書
『北方植物園』(朝日新聞社) 
辻井達一『「日本の樹木』(中公新書)
佐藤孝夫『「新版北海道樹木図鑑』 (亜璃西社)

(「木を友に」Vol.1~Vol.27は、「森林人コラム」で読めます)

(コラム「木を友に」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)

林間独語

▼運転免許証更新時の「高齢者講習」を受けた。講習内容は、講義(高齢者の事故増えてます、というような)、視力・視野検査、反応動作テスト(TVゲームのようなシミュレーション)、実車による運転指導など。一時停止線をはみ出して停止するクセを指摘してもらったのはありがたいが、その他は何だかいい加減クサイ。だって、一緒に受講したカミさんの方が技術評価が高いんだもの。納得いかない

▼受講料は、立派なテキスト(読む人いる?)2冊分を含め約6千円。義務で押 しつけといてチョッと高い、という感じ。受講した某教習所は、当日、高齢者 講習受講者以外は人影まばら。最近、自動車教習所は軒並み受験者不足に喘い でいるという。フト、この制度、警察官僚の天下りが多い自動車教習所支援策 かと…。(イヤ、下司の勘繰りですって)

▼今回は、再交付申請料までおまけに払った。そう、免許証を紛失していたの だ。本来、更新時期だと再交付は免除になるが、更新には高齢者講習が必須、 講習には免許証の提示が必要。で、再交付申請のやむなきに。自業自得なが ら、腹立たしい。しかも、再交付を受けた数日後、無くしたはずの免許証がポ カッと…。今さら出てくるな! エッ、そんなドジなヤツだからこそ、高齢者 講習が必要だって? 分かってますよ。

<< 前の号へ    次の号へ>>