森林人通信

Vol.99  2016.2.1

2015年のウッディーズ 活動日数 34日   延べ336人参加

 15年の一活動日あたりの平均参加人数は9.9人で、前年を1.5人下回ったが、ほぼ平年並みである。  これから総会にかけて活動状況の点検と改善策の模索が試みられる。活動を実質的に支える事務局体制のあり方は?  技術力・安全意識をどう向上させる? 参加したくなる活動って? 環境学習は?課題多し。

2016年 年初から活動開始! 森林調査の集計・分析始まる

森林調査集計作業(はるか小屋)

 山林の本格的な手入れには、その実態把握が前提となる。
 山林の境界と面積、植生、立木の材積、品質などの基礎的な情報を得て山林の全体像を描き出す — それが森林調査だが、これまで、当座の対応に追われてノウハウを習得できずにいた。その積年の課題に森林・林業のプロであるKKさんの指導を得て取り組み、一年が経過した。
1月23日、昨年の髙川山林での実査で得られたデータの集計作業が行われた。6箇所の標準地ごとに積み上げた数値により山林全体の姿が明らかになってきた。
 次回2月13日には、調査結果を分析し、施業の進め方を検討する予定である。

新メンバーも溌剌 賑やかに忘年会

一年間、ご苦労さん!(はるか小屋)

年忘れの餅つき

 昨12月13日、恒例の忘年会。新企画の餅つきは、ビックリするくらい小さな臼と杵だが、搗き上がった餅は一丁前に美味い!  忘年会名物となっているOTさん手打ちの茹で立て蕎麦、これも美味い。
 飲み食いも盛んだが、隣り合い向い合う同士、話も盛ん。新メンバーもズーッと前からそこにいるように馴染んでいる。
 一年を回顧し新年への抱負を語る忘年会らしい一幕を過ぎて日帰り組が退出すると、後は果てしもなく議論を交わし、飲み続けて、15年の全スケジュールを終えた。

「コープ さっぽろ 森づくり交流会」に参加

縦横無尽 森を語る

 1月30日に開催された「北海道森づくり交流会」にウッディーズから9人が参加した。森づくり団体が専門家の知恵に学び、経験を交流する貴重な機会である。
 写真絵本作家・小寺卓也氏の講演「森でつながる・森でつなげる」。
「ややもすると見過ごしがちな当たり前の景に、草木や虫たちの命の輝きが見えるんですよ」と語りかける、その語り口が優しい。同氏が映像に写し撮る森の深み、草木や虫の密(ひそ)やかな営みがスクリーンに映し出される。
 同氏と「もりねっと」・山本牧代表よる対談も出色。山本氏が説く、「生きたがっている樹を育てるだけ」という謙虚な林業作法が胸を打つ。  森への眼差しが変わる。

CuP of Tea(カップ オブ ティー) 
〜菊地 憲浩氏によるコラム〜

その3

回に続き、イギリスの話をもう少し。ロンドンに長く住んだので、その間家を借りたり買ったり売ったりと、幾度となく引っ越しを繰り返しました。イギリスの貸家は家具が完備されているので、買い集めた小物や衣服くらいの荷物しかなく引っ越が楽なのも原因だと思います。パーパスビルトという日本で言うマンションのような集合住宅にも住みましたが、思い出として残るのは芝生の庭付きの家での生活です。管理会社の人に「庭の手入れはキチンとして下さいよ」と言われていたので、仕方なく手入れをしていました。

戦場にて

仕事柄出張が多く、一度の出張は2週間位なのですが、連続して出張が続こうものなら、数カ月ほとんど家にいないことも珍しくありませんでした。イギリスはヨーロッパの中でも交通の便が良いので、特に出張が多かったのです。例えば、1999年、パキスタンのクーデターの取材のため、私たちはロンドンから飛びました。

信社の速報しかなく現状が分からないまま、急いで出かけました。空港が閉鎖される前にイスラマバードもしくはその近隣の都市に入っていたかったのです。私たちが到着した時には他のメディアの姿はなく私たちが一番乗りでした。その後、世界各地からメディアが続々と集まってきましたが、日本や地理的に近い地域、他のヨーロッパの国から来た人たちよりもダントツの早さで現地入りできたことが、交通の便利さを物語っています。

街路を彩る八重桜
 

んな生活をしていたので、庭の手入れどころか、そもそも家にいないのだから、出張から帰ってきた頃には芝ボウボウで収拾不能です。電気芝刈り機のモーターを幾つ焼いたのか数えきれません (涙) せっかくの休みの日も庭の手入れで潰れるし「もう庭なんていらん!」と、市街地のパーパスビルトのフラットに住みましたが、無ければないで寂しくなり、「芝生の庭でのんびりしたい」と、ロンドンの外れの静かな住宅街に庭付きの家を買いました。イギリスは一般的に古い家の方が価値が高いのですが、築70年前後の比較的新しい家でした。近所には大きな公園が幾つもあり、家の前の道路には八重桜の街路樹が並び、開花時期には華やかでした。とても静かな住宅地で、すごく気に入ったので長く住んでいました。

 バックヤードと呼ばれる裏庭と通りに面した玄関の前に小さな前庭があります。裏庭には芝生が植えられ、奥の方には大きな林檎の木が一本あります。その奥にはブラックベリーがモサモサと生い茂っていました。ハリネズミやカエル、リス、キツネなども遊びに来ます。 ここで起きたチョットした事件については次号で。

(きくち・のりひろ 会員)

樹木、その不可思議なもの
 (ニセアカシア その二)  髙川 勝

侵略的外来種という汚名?

 前号で記したように、得がたい特性を有するニセアカシアだが、日本生態学会の「日本の侵略的外来種ワースト100」に指名されている。「北海道ブルーリスト」においても「本道の農林水産業、生物多様性、および人間などへの健康へ大きな影響を及ぼして」いるとされる。
 しかし、ニセアカシアが繁茂する場所は、道路沿い、鉱山跡地、耕作放棄地、住宅地周辺、街路樹や河畔林、海岸防風林など人手を加えた土地に限定されており、人目に付きやすいこうした場所から離れると、ニセアカシアを目にすることはあまりないと思われる。
 ニセアカシアは窒素固定菌を有していて空気中の窒素を取り込むからどんな痩せ地にも旺盛に侵出し生態系を攪乱するという見解が流布しているが、前述の限定的な土地以外でそうした現象が見られるのだろうか。少なくも筆者の所有山林で実施した森林調査によれば、ニセアカシアは他の樹種と折合いを付けて生育しており、他の樹種を圧迫するような状況は確認されない。

 以下は、調査(15年実施)の途中経過が示す概要である。
 4標準地(計0.3ha)の調査立木数合計221本中、ニセアカシアは7本。樹高は17〜24m、樹径24〜44cmであったが、耐陰性の低さが後継木の生育を困難にするのか、これらニセアカシアの周辺に同種の幼樹・小径木は認められなかった。伐木や地際までの笹刈りなど地表部の攪乱が萌芽や実生を促すことは経験的に知っているが、そうした場合を除けば在来樹種からなる林内へむやみに侵入することはないと思われる。

他樹種に抜きんでるニセアカシア

 また、ニセアカシアは、アレロパシーを起こして、在来種を駆逐すると言われるが、多くの植物は多かれ少なかれ、アレロパシー物質を有している。古くから指摘されてきたクルミなどと違い、ニセアカシアは要注意外来生物と目されてから、そのアレロパシーが特定されたという。
 先ずは、ニセアカシアの養蜂業や果樹・蔬菜園芸への貢献を確認する。その上で、「農林水産業、生物多様性、人間などへの影響」が如何なるものかを明らかにし、管理のあり方を検討すべきである。
 冷静で科学的な観察と対処が求められる。

(たかがわ・まさる 会員)

森の本棚

樹は語る(築地書館) 清和研二 著

「樹のことを知ってもらい、遠くなった自然と人との距離を縮めたい。樹々がいかに苦労して育つか知って欲しい」と望む著者は、あとがきに「この本は『もの言わぬ』木々の気持ちを代弁したものである」と書く。
 北の森に普通に見られる12種の樹木を取り上げ、木々が花を咲かせ、種子を作り発芽させる過程をわかりやすく説いてみせる。3ページと措かずに配される著者自らが描いた繊細なスケッチが理解を助ける。
 北大で学び、道内で研究生活を続けた著者だけに、あぁ、あの地方に…、あの川べりに…と、見知った場へ導いてくれるかのよう。木々の生活史をこれほどまでわかりやすく説く本に出会った幸せを感じる。
 著者は、先に『多種共存の森—1000年続く森と林業の恵み—』(14年10月号の本欄で紹介)を世に問うているが、「多様な種が共存する自然に近い森を作る方が長期的には効率が良い」として、同一種だけを植えて単純林を作るような、短期的な効率重視の林業作法を排する。

森林人歌壇


 土臭く甘さ不足のビート汁を汁粉に用いし戦後の冬至
  久々に会いし仲間は口々に元気そうだと励ましくれぬ

中野 常明

 硝子越しに見ゐる伊当のおほかたが頤傷めて泳ぐさびしさ
 
 伊当: 「幻の魚」と謂われるサケ科の魚イトウ。 頤 おとがい。あご。
 背負ひたるランドセルより手と足が出でたる如し孫の姿よ

高橋 千賀

 山葡萄の太きその蔓巻きつきて痛々しく見ゆ白樺の幹
 雪原に一すじ風の道あるや飛び来る雪のかがやき止まず

原 公子

木霊(こだま) 前号への 読者の感想

★「樹木、その不可思議なるもの」、気に入りました。「いいね!」です。最終行、うまい。次号を期待させる。「森の本棚」の『ふき』、うまい紹介の仕方です。読んだことはないけど手にとって見たくなりました。
きくち・のりひろ さん ! イギリスの子供たちに、おにぎりのおいしさ、教えてあげてくれたのかなあ?(T・Yさん)

★「カップ オブ ティー」の二風谷ダムに目が行き、考えました。
 私の住む旭川を流れる石狩川も忠別川も、上流にダムがあるのでほとんど氾濫しません。そのために、川幅が固定され、その部分ばかり削られて、岩盤が見えている場所が増えているそうです。そうなると、サケの産卵床に適した場所が減ってしまいます。せっかく自然回帰の兆しがあるのに、またサケが帰ってこなくなるかも知れません。
 河川敷に公園が作られ、水が入らないように整備されます。増水したらまた整備し直します。河川敷は「川」なのだから、水が来るのは当たり前だと思うのですが…。そこに設備を作って、流されて、また作る。それは全て税金で賄われます。変な話では ?
「サケから学んだ石狩川」といった講演を聞きました。大量放流→大群遡上から、今は、自然回帰を守る体制になっていること、札幌では「カムバックサーモン」から「ワイルドサーモン」へと、市がサケの遡上事業に熱心なことなどを聞きました。残念ながら、旭川はイマイチなんですよ。
でも…、小さな思いだって、叶わぬ夢だって、持ち続けることに意味があると確信しています。正しいと信じることを貫けば、未来に何かを残せるかも知れないのですよね! (N・Nさん)

林間独語

▼ウッディーズが行った森林調査の数値がまとまり、調査対象山林の姿が俄然生き生きと浮き上がってきた。数字というもの事ほど左様に雄弁である。

▼例えば、最近、世界の富裕層の上位62人が保有する資産が世界人口全体の下位半数(36億人)が持つ合計資産と同額だと報じられた。世界を覆う凄まじい格差が見えてくる。

▼日本の例では、子どもの貧困率16.3%、6人に1人は貧困状態にあるというデータがある。ひとり親世帯の場合は54.3%、つまり子どもの2人に1人!5500万トンの食糧を輸入しながら1800万トンも廃棄する日本で、「お腹がすいて眠れない」ほどの貧困に苦しむ子どもたちもいるという現実を数字は示す。

▼「わたしが月50万円、景気が良いので妻がパートに出て25万円の安倍家の収入は…」なんて与太話に使われるのも数字。ご用心、ご用心。

▼66.5%は日本の森林率。先進国では第三位というのに木材自給率は31%。その不条理に暗然とする。そこへ、紙パルプから鉄の5倍も強く軽い新素材・セルロースナノファイバーが開発されたというニュースを聞く。森林率66.5%。その数値が孕む希望が見えてくる。(T.M)

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