Vol.55 2009.7.1

森林を創る 自然と人間の営み どろ亀さんの「林分施業法」を見る
6月17~18日 東京大学北海道演習林見学ツアー

 木材生産と環境保全を両立させる林分施業法-もし、全国の森林にこの施業法が展開していたら、今日の荒廃を免れることができたのでは…。参加者の胸をよぎったのは、そんな思いではなかったか。

研修ツアー・ルポ

(参加者18人) 富良野市にある東大演習林へ向かうレンタカー。運転は道内の道を知り尽くした下山さん。知る人ぞ知る「裏街道」を走る、走る。
 車窓からは、見渡す限りニセアカシアの花。山をクリーム色に染めてそのすさまじい侵蝕ぶりを誇示する。
 富良野でお出迎えの倉橋さんは、山川草木を育てる集い富良野本部代表委員。最初から最後までお世話いただく。
 東大演習林で、犬飼技術主任に「林分施業法」の理論と実際を伺う。(右写真)
「将来のイメージを描きながらの施業」「一本の木を限度まで成長させ、衰退直前に伐る」「登録番号をつけて個体管理する木が3,000本」「成長率に見合う分だけ択伐する」。 要するに、森林生態系の法則に沿いながらきめ細かな人為を加えるということだ。木を指しながらのお話しはとても解りやすい。

 2日目は、倉橋さんのご案内で遊々の森「太陽の里・ふれあいの森」を歩く。
 倉橋さんは森の精が乗り移っているのでは…と思わせるひたむきさで、森の不思議を説き明かしてくれた。積年の夢であった東大演習林の見学、必ずやウッディーズのささやかな実践に資するものあり、と感じる。そして、今回参加できなかったメンバーのために再度の企画を、という願いも。

 

倒木の上に次世代が育つ「倒木更新」
  幸田 文『木』(「えぞまつの更新」)から

初出『学燈』(71年1月号)

▲倒木更新の様子:樹齢数十年(「遊々の森」)

▲倒木更新の様子:稚樹(東大演習林・神社の森)

 北海道の自然はきびしい。発芽はしても育たない。しかし、倒木のうえに着床発芽したものは、しあわせなのだ。生育に楽な条件がかなえられているからだ。(…)
 それらは一本の樹木のうえに生きてきたのだから、整然と行儀よく、一列一直線に並んで立っている。
 やっとそれがみえた。ほうとばかり溜息をついて、その更新に見入った。まさに縦一文字に生え連らなった太い幹たちであった。えぞという大きな地名を冠にかち得ているこの松は、ほんとうに真一文字の作法で、粛然と並びたっていた。威圧はおぼえないが、みだりがましさを拒絶している格があった。(…)
 だが、残念なことにそこは、倒木のうえに生きた、という現物の証拠がなかった。一列であるというだけの推理であって、証の物がない。かつてそこに倒れていた大木の容積である厚さ、太さなどの跡を示すものは、何もない。いささかもの足りなかった。
 すると言下に、そんなことなんでもない、少し探せばその希望にぴたりのが、必ずあるさ、という。間もなく、こっちという合図がきた。 それはまだひょろひょろと細く若い木を何本も、満員の形でのせている。まごうかたなき倒木だった。肌こそすっかり苔におおわれているが、土からちょうど私の立った足丈ほどなかさが、もと倒れた木の幹の丸さをみせており、その太さは先に行くに従って細っている(…)死の変相を語る、かつての木の姿である。そしてあわれもなにも持たない、生の姿だった。これはまあなんと生々しい輪廻の形か。

 

6月の 他の活動経過

■7日北海道神宮 12人参加
  前週に続きまたも雨。傘を差した人々が行き交う参道脇で黙々と下草刈り。
  草刈り機初体験 以前から、草刈り機を使う人を見て「私もやりた~い」と思っていたので、
 「やってみる?」の声に思わず頷いちゃいました。
 でも、見るとやるとは大違い。
 振動が凄く、回転数のコントロールもやっと。
 笹一本をまるで大木を倒すかのように…、
 というわけで午前中でヘトヘト。
 でも、今度は経験者として…。フフフ。(星さん)

■13日北の沢都市環境林 参加18人(うちローソン社員10人)
 入社時研修の一環として森林整備体験をする新入社員を主体にローソンの皆さんが下刈りに参加してくれ、アドバイスを受けて一心にカマを振るった。
 ローソンは、全国の顧客から寄せられる「緑の募金」とローソン本部の寄付金を国土緑化推進機構を通じて国内外の森林整備に役立てており、その額は08年2月までに25億円を超えるという。
 この日、新会員の大和ゆかりさんが自前の刈払機を携えてデビュー。
 積丹町に山林を購入、毎週のように通って笹刈りや井戸掘りに励んでいる!という。
 
■14日どろ亀さん記念22世紀の森 雨の中11人参加
 22世の森へ乗り入れると道端にルピナスのピンクや薄紫が靄に霞んでいる。
 この日は、6haを下刈りした。
 新会員の青木さん、「新山川…」藤原理事長や同会ベテラン会員の指導を受け、「勉強になりました。楽しかった~!」と。

■28日河崎(弟)山林 18人参加
 当別町へ出動し、下草を刈る。日光の直射と熱風で、吹き出す汗が目に沁みる。
 Uターン会員・佐藤さんも長柄ガマを振るって奮闘。
 あまりの暑さに、午後の作業は中止する。

ニセアカシア

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森の時間

【ニセアカシア】
写真:沓間洋子  撮影地:ワオーの森

若葉雨 真珠の雫を宿して


木を友に

Vol.22 【ナラ】

海道ではナラ(楢)と言えば、普通、ミズナラのことである。ミズナラは、ブナ科コナラ属の落葉高木で、高さ20m、直径2mにも達する。雌雄同株でサハリンから九州まで広く分布するが、本州中南部以南では標高1,000m以上で見られる。北海道では平地でも見られる。材は堅くて重く、やや紅色を帯びた褐色で、磨くと美しい艶が出る。家具材、床板、たる材、舟材、椎茸のホダ木などに使われる。昔は、木炭の原料や薪材として重要だった。名前通りタップリ水を含んだ木である。ドングリの木と言えば、子どもでも分かるお馴染みの木である。

物学では、ナラと言えばコナラを指す(ミズナラの別称はオオナラである)。コナラはミズナラより小振りで、葉やドングリの形で見分けられる。寒冷地では育たず、札幌と岩見沢を結ぶ線が北限と言われている。従って、道北や道東では見掛けない木である。札幌の北星学園や円山動物園では、この木の森が見られる。有名な武蔵野の雑木林は、このコナラとクヌギが主体の林である。

じブナ科コナラ属で道内で見られる木にカシワ(柏)がある。柏餅のカシワである。海岸や日当たりの良い山地に生える落葉高木で、高さ20m、直径1mになる。冬になっても葉は枯れたまま枝に残っており、春になって新葉がでてから古い葉が落ちる。秋になると葉を守る神がこの木に宿ると言われたため神聖視され、神職の家紋などに使われた。北海道神宮の境内にも柏の巨木が見られる。樹皮に含まれるタンニンは最良の皮なめし剤で、戦時中は軍事用として大量に伐採された。ウィスキー樽にはカシワが最適でナラ材では5年程度の寿命が20年も持つと言われる。

ころでカシワの他にカシ(樫)という木もある。両者は似ている点はあるが異なる木である。カシというのは、ブナ科コナラ属のうち特に常緑性の木の総称で、シラカシ、アラカシ、ウラジロガシ、アカガシ、ツクバネガシなど沢山の種類がある。ただし、カシという単種はない。カシワは落葉するので、本来ならナラの部類のはずだが別格で単独名を持っている。

幌では、外来種のアカナラを見掛けることが多い。北米原産で、葉はカシワに近く切り込みが深く、幹はすべすべしている。秋になると紅葉することからアカナラの名が付いたらしいが、楓のように紅葉した木はまだ見たことはない。木の姿は堂々として風格がある。道庁と植物園の間に見事なアカナラの巨木の並木がある。

参考図書
朝日新聞社 『北方植物園』
辻井達一『「日本の樹木』(中公新書)
佐藤孝夫『「新版北海道樹木図鑑』(亜璃西社)

命を引き継ぐ 木や虫たちの智恵

12. ニセアカシア

コクワ雄株

 6月中旬、札幌中に純白で甘い香りのニセアカシアの花が満ちあふれていました。
 美しい花は観賞用に、養蜂業に大きく貢献してきました。繁殖力も旺盛で明治以降、治山緑化の現場で積極的に導入されてきました。
 ところが、外来種問題の視点から考えると、すさまじい繁殖力ゆえにニセアカシアは問題のある木なのです。外来生物法の「要注意外来生物」にリストアップされています。

 ニセアカシアを特徴付ける性質を列挙してみます。


 伐根からの萌芽能力。高川山林の倒れたニセアカシアの根から、すさまじい数の萌芽を目にしています。

 根萌芽能力。親の木から数メートル離れたところから芽を出し生育範囲を広げます。これも高川山林で目撃。

 種子散布による分布拡大。埋土種子になると40年も休眠出来るといわれます。地表の攪乱によって一気に発芽という可能性もあります。

 窒素固定能力。根粒菌と根が共生するので荒地でも生育します。

 大量開花。鈴なりに一杯の花が咲き、ハチが沢山寄ってきます。その結果、 同時期に咲く農作物に影響があるといわれています。

 他感作用(アレロパシー)(注) を出します。そのため、ニセアカシアの林床の下層植生は貧弱だそうです。(注ある植物が葉や根などから放出する物質(アレロケミカル)で他の植物の生長を抑制・阻害する現象のこと)

 本州ではニセアカシアの大量発芽・生育に頭を悩ませ、駆除したという例があります。
 ニセアカシアは命をつなぐ方略をしっかりと持っています。
 しかし、在来の生態系に悪影響を及ぼすマイナス面と有用性というプラス面があり、身近でありながら、目の離せない樹木です。

参考:『光珠内季報』No.142(2006・3)

(文・写真 春日頼雄)

木霊(こだま)

「森林人通信」54号を読んで

▼ 出倉さんのお話(注転載メール)から、ご家族の様子が伝わってきて、心が和みます。気持ちの良い森林にしたいものです。ご家族の方にも、都合の良いときに遊びにきて頂きたいですね。
春日さんのお話も毎回なるほどと思いながら読んでいます。
今回の「森林人歌壇」は「白」が印象に残ります。  (Abさん)
▼ 最近は柴原山林、北山山林など会員ゆかりの新しいフィールドでの活動も活発になってきている様子、通信を楽しく拝見しています
 春日さんの「知恵」シリーズは日頃おやりになっている解説活動が目に浮かびます  (Aoさん)
▼ 娘の連れ合いも建築家。(君さん・川崎さんの入会動機〈木を使うばかりでは申し訳ない。植えることも…〉を読んで)、
 「参ったなぁ~。若いのに立派。利益追求ばかりで反省だなぁ~」と。
 久し振りにすがすがしい話題に触れた、と感激していました。(Saさん)

林間独語

★次々と新しい会員を迎えている。「あまり参加できないかも…」と、遠慮がちに言う方もいるが、大威張りでいてください、と申し上げたい。

★ウッディーズの規約に言う「森林に関心を持ち、人々と手を携えて…その環を広げていく」ということが原点だから、その思いさえあれば参加の形はそれぞれの事情次第でいいのでは、と思う。

★「ウッディーズのおかげで、恒例の家族キャンプのときには、木のことや花のことを子や孫たちに話してあげられそう。本を読んでいて以前だったら読み過ごしていたと思うことに目がとまります」
これは、なかなか活動に参加できない会員の便りの一節だが、ウッディーズに連なることで自然環境への関心を高め、森林への気遣いを絶やさずにいてくれるとすれば以て瞑すべしだ。

★「出席率」などは二の次。要は、それぞれの日常で木の大切さを世間へ伝える…、「気」を送ることだろう。

★東前さんの「山中林思」が前号で終わった。縄文から現代までの、人間と森の深い関わりを辿り、現代における課題を提起している。ウッディーズに対して、「森林救助隊」システムの構築を目ざし、たゆみない活動を続けようと訴えて終章を結んでいる。気宇壮大かつ胸に落ちる提案である。

 

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