2018年 ≪冬号≫ Vol.110 2019.03
人と自然が繋がり、人と人が繋がる活動を
ー 18回総会で活動指針を採択 ー
3月16日、ウッディーズ18回総会が開催されました。議長に選出された松田会員の議事進行のもと、担当役員から平成30年の活動経過・決算の報告及び31年の活動方針・予算の提案が行われ、質疑応答を経てそれぞれ採択されました。
【経過報告の一部】
・地方自治体からの要請に応えて実施した間伐作業では、「誰かの役に立っている」という思いを実感した。
・安全に配慮した施業方法の探求に意を尽くした。
・10名の新会員を迎えたうえに、既存会員の作業参加が昨年比3割ほど増加した。
【参会者からの感想】
・役員が会務を分担し合い、楽しくやっているように見える。
・会員にアピールする新しい活動スタイルを常に模索しているように見える。
【向こう1年の活動指針として掲げられた事項】
・ボランティア精神に基づく、人と自然が繋がる森づくり
・会員相互が思いやりを持ち寄り、人と人が繋がる活動
・安全最優先の意識と体制づくり
・会内外向け広報活動の充実
・「課外活動」としてのレクの実施(9月 黒松内ブナ林キャンプを予定)
総会に引き続き、講演会が行われました(次項) 。終了後に希望者参加の懇親会があり、談笑に花を咲かせました。
講演会:テーマ 市民による森林活動への期待
〜 重視したい森と人との関わり 〜
北海道水産林務部 森林環境局 森林活用課長 濱田 智子氏
総会議事に続く講演では、北海道の森林・林業の変遷と現状を踏まえた「市民による森林活動」の来歴と展望が示された。
先ず、1990年代に首都圏から盛り上がった森林ボランティア活動の波が、2000年代には北海道にも及び、行政と森林組合などがボランティア組織・活動の養成に力を入れ始めた。ウッディーズはその時期の、そうした試みから生まれた、謂わば、誇り高き一期生である(ということらしい)。 その後、森林に関わる市民活動が活発化する中で、団体数も増加し、活動内容も多様化して現在に至っている。
「市民による森林活動」を進める上で、「森と人との関わり」という観点を重視したい。その中心に「木育」という言葉を置く。木育は北海道発祥の言葉で、全ての人が「木と触れ合い、木に学び、木と生きる」という生活・思考スタイルの謂いである。木育を通じて、森に生きる樹木と生活の場にある木材との“つながり”を実感する。その繋がりは「メビウスの輪」になぞらえることができるかも知れない。
道は、平成30年12月に、植樹月間である5月の第2土曜日を「植樹の日」、育樹月間である10月の第3土曜日を「育樹の日」と制定した。道民一人ひとりが植樹及び育樹を通じて木々に親しみ、それがもたらす恵みを感じ取れる機会としたい。 道としては、こうした条件整備を進めつつ、北海道の豊かな森を未来に引き継ぎ、人と木や森との関わり方をしっかりと考え行動する人が育つよう民間と力を合わせて各種事業を展開していくこととしている。
講演余聞 〜 ウッディーズという名称の由来 〜
講演の中で濱田さんはご自身が間伐ボランティア札幌ウッディーズの名付け親であることを明かされた! 現会員にとっては、未だ見ぬ親との感激のご対面?のような。ちなみに、ウッディーズ(アルファベット表記ならwoodies ?)は、木を意味するwood またはwoody を連想させる濱田さんの造語だという。洒落てる!
さらに、普通に「森林ボランティア」ではなく、「間伐ボランティア」としたのは、一般的に行われていた植林や下草刈りなどの域を超えて、チェーンソーなどの機器を駆使して行う間伐という森林活動に挑んで欲しいという、関係機関・団体の願いと創立メンバーの意気込みが込められているのだということがわかった。
改めて、ウッディーズという名の組織のメンバーであることを誇らしく感じた。
濱田さんからのお便り
ウッディーズの皆さんの熱心な活動の一端に触れられて、私自身もこの20年を振り返り、感慨深い思いになりました。機会があれば、皆さんが活動されている現地の様子も拝見したいところでしたが…
実は、4月1日付の異動で十勝に行くことになりました。勤務先は、浦幌町の十勝森林室で、林業普及指導や木育の推進のほか、道有林の整備・管理も所管しています。いろいろな見所もあると思いますので、機会がありましたらウッディーズの皆さんで視察にお越しいただければ、ご案内いたします。
とてもつもなく大変で、とてつもなく面白い (?)
ー 総会、そして、役員会というもの ー 会員 佐藤 友子
総会が終了し、ホッとするものがあります。
一段落したところで、ウッディーズのようなボランティア組織において、総会というものはどんな意味を持つものだろうかと考えます。
6年、いや7年前だろうか、会計という役を預ることになって以来、役員会議を始め様々な討議に参加させて頂いています。その過程で、この“総会”の有する意味・価値について、色々考えることがありました。NPOでもない団体の総会における決議・決算は、いかなる外部機関の監査も受けず影響もされません。ならば、どこまで何を求め、それをどのように表現するのが適切なのか。
話出したらキリがないので(それでは疑問を投げるな!ですが)、この総会資料作成について内幕を書かせて頂きます。
12月、やっと活動もお休みとなり“冬眠”と思いきや、毎月の役員会があり、そこで3月の総会に向けて、経過報告と事業予定の作成に取りかかります。一言一句の文言の検討、ページ数、書き方、フォントの指定、そして講演会講師の選定など、まぁこれでもかというほど長い会議が行われ、総会資料に仕上がっていきます。
その総会資料、総会の席上で手にされる方と郵送で受け取る方に2分されます。10ページ前後のボリュームが多いか少ないか、それぞれのご判断でしょうけど、そこには、間伐ボランティア札幌ウッディーズの活動指針とその実施手順が示されるほか、活動参加の促進、会員の安全確保など、真剣な討議を経た到達点が示されています。
それは、役員を務める会員が真剣に話し合いを続けて得られた「成果」です。そして、それを検証し、足らざるところを付加してこれからの指針として確定するのが総会の役割というものです。
あ、釈迦に説法、ゴメンナサイ。
総会の意義については今更…ですが、そこには役員会という縁の下の力持ちがおりまして。そこで、こんなとてもつもなく大変で、とてつもなく面白い(?) 役員会を、ちょっと手伝ってみよう、チョッと入っちゃってみよう、なんて間違ってみませんか?
人生、多少の間違いは楽しいものです、よ! そこで、
役員募集ちゅー!
これくらいしかできないよ?の
‘限定’役員、大歓迎!
と。少しづつ…でいいんです。
早春の高川山林を満喫!「冬芽観察会」に参加して 会員 笠倉 信暁
3月23日、ウッディーズ主催の冬芽観察会がワオーの森にて行われ、私はガイドとして参加しました。イベント前日は、このところの寒の戻りで吹雪模様。一時は開催も危ぶまれましたが、当日になって雪はちらつく程度で、なんとか開催することができました。
高川さんの山小屋前に集合したカラフルヤッケのご一行は大人子供あわせて18名。開会挨拶、準備運動の後、スノーシューを装着して、冬芽の観察をしながら、にぎやかに昼食会場を目指して雪山を往きます。
ガイドからは、冬芽(近い視点)から、枝ぶり(離れた視点)まで全体を観察することで、葉や花がない冬の樹木でも見分けがつくことをご説明し、樹木を見て触って、ときに味わうことをとおし肌で感じてもらいました。また、樹木の生理や関わりのある生物、木材としての利用など、樹木それぞれに個性があるということをお伝えしました。こうした個々の特徴については、なかなか一度に覚えきれるものではなく、かくいう私も相当年数をかけて今の状態にあるわけで、皆さんが覚えきれなかったとしても、何かひとつでも心に残ったワードがあって、興味を持っていただけたのなら、ガイドとしてはうれしい限りです。
そして、今回のもう一つの目玉は、冬山ならではのアトラクション「雪中ジンギスカン」です。
いつもは豪快に焚き火に鍋を渡しジュージューやるところですが、新兵器スゥエディッシュトーチを導入し、結果大成功!みなさんに大変喜んでいただけました。もちろんジンギスカンの味もサイコー!だったのはいうまでもありません。
日ごろなかなか踏み入れることのない雪山の中で、普段と違った視点から樹木をじっくり見つめ、思いっきり体を動かして、皆さん充実したひとときを過ごしていただけけたようです。
私自身の反省点としては、説明補助用としてかかせないホワイトボード(のマーカーのほう)を忘れてしまい、イメージ通りに説明できなかった部分もありましたが、「また参加したいです!」との言葉をはげみに、ガイドとして一層のスキルアップをしていきたいと思います。
最後にイベント準備にご尽力いただいた、オーナーの高川さん、ウッディーズ宮田さん、イベントの段取り、冬芽図鑑の印刷カッティング(大変でしたね!)等いろいろありがとうございました。また、桂岡のフォトグラファー工藤了さん、とっても素敵な写真を撮っていただき感謝感激です!そして参加者の皆さん、素晴らしい笑顔をありがとうございました!
※冬芽観察会の記事で使っているほとんどの写真が、工藤氏撮影です。
ワオーの森 「冬芽観察会」に参加して 会員 金澤 絵里
3月23日(土) 高川山荘に大人子ども合わせて約20名が集合し、冬芽観察会が開催されました。
講師はウッディーズの会員であり、森林インストラクターの笠倉信暁氏です。前日の積雪で、天候が心配されましたが、当日は穏やかな天気で一安心。全員で自己紹介、準備運動、昼食荷物を分担し、かんじきをしっかり装着して林内へ出発です。 冬芽は芽鱗(がりん)と呼ばれる芽を覆って保護するうろこ状の小片があり、芽鱗で保護されているものを鱗芽(りんが)、保護されていないものを裸芽(らが)と呼ぶそうです。芽鱗にも、毛皮やレザージャケットを着ているものや鱗片葉(りんぺんよう)など色々な形状があることを手作りの図鑑に沿って一つ一つ丁寧に教えて頂きました。
高川山林で1番早く咲く「キタコブシ」。笠倉さんが樹皮を削り、参加者に渡してくれました。かぐと、とても良い香りがしました。調べると、アイヌの言葉で「オマウクシニ」「オプケニ」と呼ばれ、それぞれ、「良い匂いを出す木」「放屁する木」という意味を持つそうです。樹皮は煎じて茶の代わりや風邪薬として飲まれるそうです。
「ホオノキ」の樹皮も良い香りがしました。木の幹はとても彫り物がしやすい木材で、アイヌの生活では色々な生活用具を作っていたそうで、今は木彫りのお土産もの等で見かけます。ホオノキは成長が早く、葉痕(ようこん)で年齢がわかることも教えてもらいました。
そして、この葉痕には、様々な「顔」があり、それがとても可愛いのです。冬芽観察の面白さを知りました。
「ミズキ」の若枝は、冬に色鮮やかな紅色を帯びてとても美しく、正月のマユダマを飾るのに用いられています。枝振りも空をみあげた扇状で縁起の良い感じです。こけしの材料にミズキが使われているそうです。
「オニグルミ」の周りには、他の植物が生えにくいことも初めて知りました。オニグルミ類は、葉に含まれるユグロンという毒素で他の植物を排除し、生育場所を確保しているのです。このように、植物が毒物質を分泌して他の植物に害を与える作用を「アレロパシー(他感作用)」というそうです。驚きました。また、穴が開いているクルミはネズミが食べたもの、半分に割れているのがリスが食べたものと教えてもらいました。
鹿は「ツリバナ」の木の皮が大好きなのだそうです。樹皮をぐるりとむかれた木は、養分や水分が行き来できず、枯れてしまいます。鹿も生きるために必死なのでしょうが、食べられた木を見るとため息が出てしまいます。ちなみに高川山林で桜を好んで食べているネズミは、エゾヤチネズミというそうで、調べてみたら、頭胴長90~140mmほどの小型のネズミで愛らしい姿でした。すくすく上に枝を伸ばす樹形の「ヤチダモ」は、野球のバット等に使われるそうです。「キハダ」は、昔から山村の代表的な胃腸薬として常備されたそうで、苦味がありました。漢方薬としても優れているそうです。樹皮や枝の形態から樹種を絞り込むヒントやお話の面白さに引き込まれ、あっという間に時間が過ぎていきました。
お楽しみのジンギスカンは、丸太を使った焚き火「スウェーデントーチ」で実施。差し入れのノンアルビールやうどん、甘味もおいしく、焚き火を囲んで暖かいお茶もいただきながらの話は尽きませんでした。
貴重で楽しい学びの時間を準備して下さった方々、本当にありがとうございました。
仲間のプロフィール:道田智宏さん
~夢は薪ストーブでの寛ぎ ~
仕事:歯科技工士(歯を作るお仕事)
趣味:睡眠 音楽鑑賞 お酒
昨年4月より活動に参加しています。
入会の動機は自宅に憧れの薪ストーブを導入したい!という思い。ゆらめく炎と薪のはぜる音を聞きながら自宅でくつろぎたいと色々と調べていましたが、実際には薪材調達、運搬から保管、ストーブや煙突の購入と施工などクリアすべき厳しい条件が多々あることがわかりました。あきらめかけていたところ、偶然ウッディーズの活動を発見し、薪ストーブユーザーの方との情報交換と薪材確保のために最後の悪あがきをしてみようと思い、体験参加、入会となりました。
入会してみて、皆さんとても優しくフレンドリーで森林やそれを整備する知識と技術が豊富で、体力もあり元気に楽しく活動していると感じました。
印象に残るエピソードとしてはウッディーズ初となるキャンプに娘と2名で参加させて頂き、夜遅くまでメンバーの皆様に娘と遊んで頂いたことです。娘も大変喜んでおりました。
昨年末より仕事が忙しくなってきて中々活動に参加出来ませんでしたが今年も時間のある限り活動に参加するつもりでおります。そして、いつか皆さんとお酒を酌み交わしたいとも…。
創立メンバー・春日 順雄さんのお便り
弥生3月は、生物たちの目覚めの時期です。
人間も生物ですから、何となく気持ちが晴れ渡る躍動感を感じます。
私は、札幌ウッディーズの発足のころから、仲良しの友を得て沢山の楽しい想い出を作りました。
その後、自然観察ガイドのボランティア活動のためウッディーズは欠席がちになり、なんとか出席しようと思いつつも名前ばかりの会員になっていました。
心はあっても出席できない状況は続きそうなので、心ならずも退会の連絡を差し上げます。
会員の皆様、そして、ウッディーズの益々のご活躍とご発展を祈念します。
お世話になりました。有り難うございました。
森の本棚
ようこそ! 葉っぱ科学館
写真・文 多田多恵子
(少年写真新聞社 1500円+税)
草や木にくっついて、ヒラヒラしているだけのように見える葉。呑気そうな振りをしているが、実はすごく賢い。健気でさえある。我が身をまもるために植物の葉が身につけている様々な工夫が分かりやすく説かれていく。
「皿回しの葉っぱ」のページでは、垂直に立ち上がる葉柄の上に皿回しのように葉を広げるシロツメクサ(クローバー)の知恵が語られる。日中は水平に葉を広げて光をいっぱい受けているが、夜になると、その葉を立ててしまう。夜間の放射冷却を防ぐためともいわれる。葉が3つのパーツに別れているのは、葉の上に水が溜まりにくくするだけではなく、光の変化や乾燥に応じて角度を変えるためだ。
平易な文章と精細な写真で葉っぱの、いや、植物の秘密が次々に明かされていく。この手のものを写真絵本といい、子どもをターゲットにしているようだが、理解力が減退していく高齢者にこそ! と自らに薦めている。(髙川)
枝払いに挑む保育園児たち
ウッディーズが森づくりを支援する高川山林・ワオーの森に、毎年、かもめ保育園の園児がシイタケのホダ木原木を採りに来る。山主の「高川オジさん」が伐倒したミズナラの枝払いと材の搬出が子どもたちの仕事だ。伐倒材を切断してホダ木をつくるのも、コマ菌を打ち込むのも自分たちで楽しみながらやる。採れたシイタケは給食のテーブルに載り、園児たちのおなかを満たす。
シイタケも野菜も、自分たちが食べるものを自分たちでつくるのが20年も前から続く「伝統」である。「心も身体も健康な子ども」の育成を目指す保育にとって、子どもたちが自然の中に飛び出して虫や草花に親しみ、山を走り回る、そんなことが当たり前の生活になっているのだという。