笛木 森之助氏によるコラム「白旗なあなあ日常」
Vol.4
何の話の続きでしたっけ? そうそう間伐作業の始まり始まりーッ。
作業の手筈は決められていないので、人其れ其れ。加えて、同一現場に同じ作業で入ることは二度とないので、数十年後の状況を想像しつつ、次の作業(間伐だと、木寄せ、ブル集材)に支障のないよう作業するのが森之助流。
この現場は風害で地面に横倒しになったネギ(寝木?)がメッチャ多いので先ずはその処理から。採材できる部分は枝払いと玉切りし、残りは木寄せやブル集材で支障にならない程度の枝払いと切断をして土に還って貰う。地面に埋もれ気味の場合もあるので、土を切らないよう気を付けているが、何度か地球を切るうちにソーチェーンの切れ味が鈍くなり、焦る気持ちは抑えて目立てする。
次に、採材できない雑木、支障木、枯損木を伐木して土に還す作業をし、漸く採材できる立木を心置きなく伐倒できるようになったが、何処にでも倒せる訳ではない。一本一本、木に相談しながら、材が重ならない方向に伐る。空隙がない場合は、根元を大鳶で移動し易い方向に伐倒して掛かり木処理するか、無印の立木を余分に伐倒して空けるかのどちらかを選択する。この方向しかないと決めて箭を打ち、倒れ始めたのに途中で止ってしまうことがある。よーく見ると糸のように細い蔓が隣木からピーンと張っている。大鳶で木を引き下げるだけで簡単に切れることもあれば、ここでは言えない様々な方法を使い、七転伐倒(八倒)することも。時にはヒヤリ・ハットもありつつ、伐倒後に根元と切り離す。残った伐根が高い場合は、ブル集材時にキャタピラを外したり、ひっくり返る原因にならぬよう低く切り直すのも樵の作法の一つ。
その後は、少しでも丸太の商品価値を上げるように、一本でも多くなるように色々と工夫しながら採材する。枝・蔓・胴吹きは丸太を回して総て切り離すが、その枝等で丸太が隠れないよう、他の立木の伐倒時に邪魔にならない程度に片付けながら、黙々と作業を繰り返す内に一日が終わる。ふと振り返り、色付いた葉が逆光に浮かび上がっていたり、林床や樹幹に陽が当たり、まるで樹々が両手を広げて背伸びをしているように見えると、心地良い疲労感と充実感が徐々に湧いてきて、穏やかな幸せ気分に。
その後、間伐作業には八日半掛かってしまい、日給を下回ることに…ガッカリ。で、ここで質問。チェーンソーの燃料タンクを満タンにすると一時間程度、三本の中径木を順調に伐倒して枝を払い、立木一本当たり四、五本の丸太に玉切りすることができますが、一時間当たり幾らの稼ぎになるでしょうか? (正解は…)