在定 真一氏によるコラム「ログハウスは終わらない」
第3回 — 施主、納期に追われる —
ログハウスを自分で立てることを「セルフビルド」と言い、自分で出来るところだけやって、できないところをプロに頼む方法を「セミセルフ」などと言います。自分の場合は体力や時間などの物理的なことも考えて、最小限の「セミセルフ」とでも言える外壁の塗装をしてコストダウンを試みました。
塗料の方はインターネットで健康によい自然塗料の会社を探し出し、ちょっと金額が高めでしたが長持ちするということで「プラネットカラー」という塗料を使用。7月の終わりからスタートする予定でしたが、塗料を塗り始めたのは8月の中旬からでした。というのは、ただ塗ればいいと思っていたのが、「やすりがけして汚れを落とし、均した方がきれいになるし、機械で磨くと削りすぎる。」という大工さんの指導の下、ひたすら手で磨くことからスタート。自分でやると言った手前、一人で広大な壁の研磨に取り組むこととなったのです。ログの一本一本を研磨しては座敷ほうきで粉を掃き落とし、ひたすらこれを繰り返します。これが実は大仕事で両手が腱鞘炎寸前の作業となりました。
そしてさらに塗料は下地の「クリア」と「アンティークパイン」いう明るい茶色の2回塗りが必要でした。これが「一回り塗れば終了」と簡単に考えていた自分の予想を大幅に上回る作業量で、「磨き」から数えて3回も家全体の壁に立ち向かう大仕事となったのでした。また、ログ壁の塗装だけではなく、建具周りの部材(「窓飾り」など)の塗装と破風板という屋根の縁に沿った板の塗装などなど…細かく色々な部分があったため、建具周りの部材は奥さんの出番となり、この年の8月下旬から9月にかけて、我が家は夫婦そろって塗装屋となったのでした。
しかし、作業は単調でしたが、「研磨終了」のときの達成感、「クリア終了」のときの達成感、と進むにつれ確実に作業が終わっていく充実感を味わうことができました。そして、最後の「アンティークパイン」もそろそろ終了しそうな頃、大工さんから「デッキの塗装はどうしますか? 作業に入る前に、材料を塗ってほしいので…」とさらなる作業が追加されたのでした。「あ、そうかデッキもあるのね…」。目の前のログ壁に集中していたので気がつかなかっただけで、考えてみれば当たり前のこと、しかし、9月の天気は不安定で、土日の休日が雨になることも多く、自分で考えていた作業日程は予定より大幅に遅れていたのでした。しかし、自分が動かねばデッキが完成しない。デッキが完成しないとなると、ログハウスの10月末の納期に間に合わない。「納期に追われる施主」の図が必然的に出来上がった瞬間でした。
と、このような裏話がたくさん隠されているログハウスは小樽市張碓のはずれ(札幌寄り)にあります。一応、なんとか納期に間に合った形になりましたが、1年以上経った今もいろいろ手を加えていて、未だ「完成」していません。まだまだ手も入れられるのがログハウスの良いところなのか、大変なところなのか、分かりませんが、続きの話はまた、いつかの「森林人通信」か、または直接、張碓までお越しいただければお話できるかと思います。いずれにしても、「ログハウス(づくり)」は「終わらない(家作り)」なのでした。それでは、いつかまた…。