春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」
18 ネコヤナギ(猫柳)
早春の芽吹きの美しさに誘われて猫柳を採りに行った人がいるのではないでしょうか。乳白色に輝く芽吹きは、真珠や絹の輝きに似て美しい。頭巾状の袋(鱗片)に覆われた芽も美しい。
ヤナギの仲間は、雌雄異株。沢山の花が集まって尾状花序(花穂)を作ります。花びらはありません。これは一般にネコとよばれ、英語でもキャトキン(catkin)といいます。芽吹きの頃のヤナギ類をまとめて猫柳といいます。
ところが、ネコヤナギという種もあって複雑です。北海道の場合、バッコヤナギを採ってきて「猫柳を採ってきた。」と言うことが多いです。「それは、ネコヤナギではない。」と言う人もいます。あまり気にしないで、日本文化に根付いた「猫柳」の言い方も大事にしましょう。
写真は、エゾノバッコヤナギです。上は開花前で雄・雌の区別がつきませんが、下は雄花です。
エゾノバッコヤナギ 開花前
エゾノバッコヤナギ 開花後 雄花
虫寄せの役割の花びらが退化してありません。それなのに、ケショウヤナギを除いたヤナギ類は密腺が発達している虫媒花です。早春の寒い時期なのに、長い進化の果てに、パートナーとしての花粉の運び屋の虫が活動しているのですね。驚きです。
種子散布は、柳絮(リュウジョ=綿毛)によって空を舞い、遠くまで運ばれます。胚乳がなく、種皮も薄い種子は、乾燥にも弱く、極めて短命です。
着地した種子は、ただちに発芽しますが、発芽率は高くありません。