Vol.76 2012.4.1
春の空気を吸い込んで 元気よく活動を始めよう!
3月10日、札幌エルプラザで札幌ウッディーズ第11回総会が開催された。議事終了後の「林業講座」では、日本が高度経済成長期に突入する以前の林業作業の様子などを学習した。
サァ、いよいよ活動開始だ。安全第一で!
2012年活動方針の要点は以下の通り。
① 各山林ごとに整備計画を明確にした山づくり
② 施業技術の向上と安全面を重視した体制づくり
③ 森林保全活動の重要性に対する理解を深める
④ 他団体との交流を活発化し、森づくりネットワークの強化に貢献する
役員は2名増員し、定数いっぱいの10名となった。4名が新規に就任し、担当任務が替わった留任役員もいて清新な陣容となった。重要ポストを引き続き担う役員を含めた新体制、活発なリードを…と期待が高まる。
林業講座 − 人と自然の力を活用 驚きの往時の林業
A.K会員による講座。
盛んに肯く人、熱心にメモをとる人、
学ぶ喜びが会場に満ちる。
講座では、手ノコによる大径木の伐採、馬による搬出、堰き止めた小川に木材を貯め、堰を切った瞬間の水の力による木材の押し出しなど、林業機械導入以前の林業労働の様子が紹介された。生身の力と工夫が全ての時代…。現代にあってもそれがベースであることに変わりはないかも。
講座のもう一つのテーマは「森林ボランティアに対する森林所有者の意識」。
これについても、しっかりした理解が必要だ。
今年の活動 − 苫小牧・植苗病院「癒しの森」から本格的スタート
そこは病院に隣接した森で、患者さんが散策したり、カウンセリングを受けたり、時には軽作業もする、つまり森林療法に利用されている森だ。当然、平坦で見通しのきく美しい森だ。体力が心配で…という会員にも是非とも参加をお勧めしたい。続く高川山林は急斜面での間伐と玉切り材の山出し。少し厳しいが、それも面白み。
日程はそれぞれ、4月14日(土)、22日(日)である。
いよいよ今年の活動が始まる。森の恵みを身体と心に感じ、仲間とともに楽しみながら進めていきたい。
何よりも安全を重視して。
木の智恵を知り 納得しました~ − 冬芽観察会(円山登山)−
眼下に札幌の街が
観察会は本当に楽しかった。私は講師の後ろにピッタリくっついて歩いたので、たくさんのお話が聞けました。木々は自らの選択で、不要な枝を切り離したり(後に残るのが落枝痕?)、大木になった木が弱ってくると、幹から新しい枝を伸ばして勢いをつけたり…など、初めて知ることがいっぱいあり、木には人間の智恵の及ばないような戦略があるんだと納得しました。
風は少し冷たかったですが、快晴で札幌の街並み、遠く真っ白な増毛の山なみとその下に青い海・石狩湾が見えたのも感動的でした。
餌付けされているからこそ間近まできてくれた小鳥たちにも感謝です。
S.Tさんの福島からの姪御さんとお子さん、行きも帰りも楽しんでおられたようで…。日本国中に散った「原発難民」のことを思います。
追記 このような観察会なら何度でも参加します。無責任に参加のみとばかり言っているのも気が引けますので、何かお手伝いしなくてはいけませんね。 (T.K 記)
森づくりを巡り活発な意見交換
− コープ 未来の森づくり基金主催「第2回 北海道の森づくり交流会」 −
12年度助成団体代表
(写真:コープ未来の森づくり基金提供)
第一部は、森林をテーマとした著述や講演で知られる浜田久美子さんのお話し。
(講演要旨)
スェーデンやドイツ、イタリアで、伐採した木を使い切る暮らし方を見聞きした。例えば、地域の木材で建築物を建てる、ストーブでペレットや薪を燃やす、ピザ窯でも…。健全な森を保つための手入れ、手に入れた木材の始末という森づくりと暮らしをつなげる「装置」の重要さを感じた。
自らも木を使った家を作ってみようと思い立ち、長野に地場産の木材で家を建て、東京と長野の「二住生活」を実践中である。
写真を使って具体的なお話をされる講義はとてもおもしろいものであった。
次は「新山川草木を育てる集い」など11年度に「基金」から助成を受けた団体の活動報告。
どこの団体も懸命に活動をしている。また、活動の中にけっこう遊びの要素が取り入れられていることに気付く。子供たちとの植林や食事会など…。また、サロベツ・エコ・ネットワークは一年間で53日もの活動に延べ180人弱の従事人数。海風と闘いながらの砂丘林再生活動にはかなり少ない人手という感じ。ウッディーズが援助に行ってあげられたら、と思った。
第二部は、参加団体をシャッフルしてグループに分け、それぞれに森に対する思いやどんな森林活動をしたいかを話し合い、その内容を全体に報告した。
私の参加したグループでは、森と遊びたい、森に憩いたいという思いが語られた。森で音楽祭をしたり、山菜採りを楽しんだり、ツリーハウスを作ったり…。できれば遠出せず、近くの森で憩えるのが望ましいが、そんな森が近くにはない…。
3時間にわたり、「森」の奥深く入り込んだ冬の午後だった。 (S.T 記)
旅で出会った花と木 − 八重山諸島 −
3月の一週間、八重山諸島を夏気分で経巡って多くの珍しい草木に出会った。
テッポウユリ:
テッポウユリ
(崖の上で風雨に揺れていた )
沖縄原産。与那国島久部良(くぶら)の海岸で見かけた。季節風による潮害など厳しい生育環境に抗して健気に咲くところがイイという。3月初めから海岸近くの岩場から野山にかけて咲く。与那国町の町花。
「自衛隊誘致絶対反対!」の横断幕を島の随所で目にした。町長が掲げる自衛隊誘致策をめぐり、賛成・反対で島が2分されている。「観光客は〈癒された~〉と言ってくれるけど、島の暮らしは厳しい。自衛隊が来れば、急病人がでてもチャンとした病院へ運べる」と誘致賛成派住民の言葉を聞き、日本という国の姿が思われ哀しくなった。
オヒルギ:
オヒルギ
(西表島ヒナイ川マングローブ樹林帯で)
西表島ヒナイ川をカヌーで遡行して出会った多くの亜熱帯樹種の一つ。
他にヤエヤマヒルギ、メヒルギ、など。泥質の中は酸素が不足がちなため、地表に顔を出す「呼吸根」を発達させる。また、汽水域に生育するので塩分を吸い上げるが、吸い上げた塩分を葉の中にため、その葉を散らすことで排出するなど、生きるための巧みな工夫をこらす…、なんてことを地元ツアー会社のガイドさんに学ぶ。
ちなみにこのツアー、父と娘の二人だけの客なのに、野生生物に造詣の深い女性ガイドさんと、修行中とのことで時々図鑑を取りだしていた二人の初々しいガイドさんと、3人もの若い女性にかしずかれるVIP気分のツアー。(このツアー会社の名称は、「クロスリバー」)。
(T.M 記)
会員の動静
I.W さん
社会人になりました
就職先は木材専門商社。配属先が北海道支店なので、これからも大好きな北海道の森に関わって生きていけます。森の神様から「厳しい状況の林産業界で頑張れ」と啓示を受けたようです。皆さん、これからも宜しくお願いします!
A.K さん
博士になりました
博士(環境学)論文のタイトルは「北海道における関係者のニーズを活かした森林ボランティア活動の発展方策に関する研究」。
森林ボランティア団体と活動参加者、森林所有者、行政など多方面の関係者から得た情報がベースとなっています。ウッディーズを始めご協力くださった皆さまのお力添えがなければ私の研究はなし得ませんでした。心からお礼申し上げます。
Y.T さん
クリスチャンになりました
団塊の世代。鉄とコンクリートの設計に疾走したあげく木にたどり着きました。人生を振り返って、忸怩たるものあり。これからは清く正しく…。神様に見ていただいている、山づくりをそんな思いで進めます。
木を友に
~中野 常明氏によるコラム~
30【タラノキ】
タラノキの棘
タラノキは別名タランボ、地方によっては、オニダラ、タラ、ホンダラ、阿呆ダラ等いろいろの名前がある。棘のある木の代表で、薮こぎをしながらキノコを捜したり、ヤマブドウ、コクワ(サルナシ)などを採りに行った時など棘に刺されて、「ええい!このアホンダラ」と悪態をついたものである。
日当たりの良い所に生える陽樹で、高さは4m位までで大木にはならない。幹や枝には棘があり、枝数は少ない。花は黄白色で余り目立たないが、実は3㎜位の球形で、10月頃に真っ黒に熟すので目立つ。葉をひっくり返すと、真っ白な毛が生えているものと生えていないものとがある。前者をメダラ、後者をタラノキと区別することがある。
陽の光が大好きな、典型的な陽樹である。山火事の跡地や皆伐跡地、森林に新しくつけた道路の道端などに良く生えている。困るのは、手入れをして日当たりの良くなったスキー場や、ゴルフ場に沢山生えることである。昔、山スキーに夢中になっていた頃、なけなしの金で買ったスキーズボンを、タランボの棘に引っかけて破りガックリと来たことがある。嫌われ者の木で、紀伊半島には、「大蔵、宮川へ女ごし(女中)いくまにゃ、という俗謡があるという。つまり、「人里離れた不便なところへ行って女中奉公をやるよりは、棘のあるタランボに登った方がまだましだ」ということである。
タラノキの若芽
中標津町HP(nakashibetsu.jp)から
棘は嫌われたが、この木の若芽は、山菜の王者と言われ昔からよく食べられている。食べ方は、おひたし、和え物、揚げ物などさまざまに楽しめる。子供の頃は、胡麻和えが主で、それほどうまいとは思わなかった。最近は、専ら天ぷらにして食べているが、ほんのりと香りのあるあっさりした味はたまらない。よくタラノキの若芽を採りに出掛けたが、「二番生いの芽は摘むな!」とお袋によく言われたものだ。二番生いまで摘んでしまうと木が枯れてしまい翌年から若芽最近は、山菜ブームのせいか、二番生いまで取り尽くして枯れた木が目立つ。
工場勤務で社宅生活をしていた頃、近くに沢山のタラノキがあり新鮮な若芽を天ぷらにして、どっさり食べることができた。実は定年で札幌に引っ越すとき、2本のタラノキを前庭に移植した。日当たりが良かったのでグングン伸びて大きくなり株数も増えた。夏に庭草を取る時、あちこちを棘に刺されて往生した。止むなく日当たりの悪い裏庭に移したところ、適当な成長速度に納まった。
今年も元気に芽が伸びて、やがて天ぷらになる日も近くなってきた。
参考図書
宮部金吾・工藤祐舜著、須藤忠助画『北海道主要樹木図譜』北大図書刊行会
奥田実『生命樹』新樹社
佐藤孝夫『新版北海道樹木図鑑』亜璃西社
(コラム「木を友に」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)
林間独語
▼シラカバ樹液を採取する時期がめぐってきた。樹液が大木の梢端まで届くワケは、葉から水分が蒸散する時に発生する「テンション(張力)」によって枝先へ引き上げられるからというが、展葉以前のシラカバでも樹液は勢い良く登っていく。何か巧みな仕掛けがあるのだろう。木の賢さには脱帽する。
▼エゾニワトコは葉を2枚ずつ互い違いに、上から見れば十文字になるように出す。それは日光を十全に受け取るためだ、と過日の冬芽観察会で学んだ。旅先の西表島で出会ったオヒルギは、塩分を含む汽水域に生きて、根から吸い上げた塩分を葉の中にため、その葉を散らすことで排出するという。
▼木は木偶の坊(でくのぼう)然と突っ立っていながら、実はとても頭が良いらしい。すばしこく動き回る動物や虫や小鳥に葉や皮を齧(かじ)られ、実(み)を食われ、と散々な目に遇っているように見せかけ、そうすることによって自らはその連中の何十倍、何百倍も長生きをする。動物は木の僕(しもべ)に過ぎない、と思えてきた。
▼賢(さか)しらに大したモンだと自惚れながら、浅ましい欲望に駆られて互いに殺し合う人間など、植物に比べたら愚かもイイところなのではないか。今夜は焼酎のシラカバ樹液割りでも飲んで、チョッと考えてみようか。