森林人通信

Vol.105  2016.12.1

一年間おつかれさまでした

2016年活動総括

 昨年4月9日、恒例の高川山林から始まった2016年の現地活動は12月3日の大島山林をもって終了しました。無事故で終了したことを皆様に報告します。

以下、簡単に振り返ってみましょう。
※詳細は活動記録ブログをご覧ください。(ウェブで検索『ウッディーズ活動の記録』)

施業した後

 シーズン幕開けはいつもの高川山林。この時期はみなさん春を待ちかねた様子でいきいきしています。高川山林の魅力もあるのでしょう。5月7日の高川山林「ワオーの森 森開き」は雨もあがり大盛況でした。

 高川山林と並び、集中して施業をおこなったのが北山山林です。北山山林はアカエゾマツの枝打ちを5月と9〜10月にかけて5回実施。前号にも登場した笠倉さんが北山山林や荒巻山林で枝打ちのポイントを現地指導してくださいました。

 6月から8月にかけては例年どおり下草刈りが中心でしたが、雨天中止が4回となりました。恒例の下山山林1泊2日も中止となり残念でした。

 なにはともあれ、無事故で忘年会を迎えられたことが一番の成果でしょう。

(10月からの活動は以下の「活動あらすじ」をご覧ください。)

10月〜12月活動あらすじ

●10/1 非公式・支援大澤山林(当別町)9名
樹齢70年超、直径30cm、樹高20m超トドマツの択伐、搬出。
初フィールド。大澤さん所有のロープウインチ(PCウインチ)で安全かつ快適な搬出。   

北山山林(千歳市)

高川山林(お昼の談笑)

●10/8 北山山林(千歳市)6名
アカエゾマツ枝打ち。寒い。キノコ収穫なし。新兵器、高枝ポールチェンソー登場!累計で3haの林班の半分超を消化。

●10/15 高川山林(小樽市)6名
山林調査打合せ。これまでの調査結果を踏まえ施業計画を策定。   

●10/16 高川山林(小樽市)7名(全体46名)
自然観察会。かもめ保育園との共催。北海道ボランティア・レンジャー協議会(ボラレン)の解説員6名にガイドを依頼。「もっと聞きたい。楽しかった!」と参加者から大好評の声多数。   

●10/23 高川山林(小樽市)7名
ツル切り。伐倒の際のツル(弦)は切ってはいけないが、木に絡みついたツル(蔓)は切ってしまいたい。景観スッキリ。

●10/29 高川山林(小樽市)7名
ツル切り、倒木処理。前回の継続。寒さが厳しいがお昼の味噌汁でほっと一息、あったまる。

●11/12 高川山林(小樽市)10名
野ネズミ被害防止対策、倒木処理。この時期恒例、アスファルトフェルトで根際を保護。11月初旬に時期はずれ20cmの積雪。直径40cmのカラマツが倒れる被害。久しぶりに参加した若い女性会員や、体験参加者のユニークなエコ生活の話で楽しい昼食。

●11/27 高川山林(小樽市)10名
玉切り・搬出・選木等。お昼はキムチ鍋。

●12/3 大島山林(安平町)3名
風倒木処理。穏やかな初冬の日和。恒例のもりそば。満足の一日。 

●12/10 忘年会(札幌)26名
今年の活動も無事故で終了。お疲れさまでした。

私はこんなひと

仲間のプロフィール:坂本 雄さん

 こんにちは、坂本雄(さかもとゆう)と申します。北海道大学の公共政策大学院の修士2年で、北海道下川町の地域振興について研究しています。

 出身は栃木県宇都宮市で、大学進学をきっかけに北海道に来ました。高校時代に絶滅動物や環境破壊に関する本を読んだことやキャンプで地元の山を登ったことがきっかけで、自然保護について勉強したいと思い、北大の農学部に進学しました。

 卒論では大雪山の利用状況の調査を行っていましたが、自然を活用した地域振興について勉強したいと思い、現在の大学院に進学しました。その中で、自然を活用した産業である林業に興味を持ったのがウッディーズに参加したきっかけです。それまでは、自然は守るもの、鑑賞するものとして勉強していましたが、林業のように、人が手を加えることで自然が成り立つことは自分にとって新たな発見でした。

 4月から、北海道庁の林業職の職員として、勤務予定です。勤務先によっては参加しにくいかもしれませんが、林業に関してはまだまだ素人なので、ウッディーズの活動を通じて引き続き勉強していきたいです。

 趣味は、映画や漫画を見ること、絵を描くことなどインドア系から、登山や一人旅行などアウトドア系まで様々です。最近は時間とお金の都合上インドア系の趣味に偏りがちですが、昨年、廃線になる増毛線に乗ってきたのが久しぶりの旅行でした。

 ウィンタースポーツは、北海道に来るまでやったことがなかったことに加え、初めて行ったスキーで迷子になったことがトラウマになり、北海道に在住して6年ですが今ではほとんどやっていません。

 映画は、黒澤明やチャップリンなど昔の映画の方が好きで、最近の話題に全然ついていけないのが悩みです。

 今後ともご指導のほどよろしくお願い致します。

森の本棚

『植物はなぜ動かないのか』
稲垣栄洋(ちくまプリマー新書)

植物はなぜ動かないのか 「植物はなぜ動かないか」を解き明かす一冊であるが、動物はもちろんひいては自然と地球の成り立ちまでにさかのぼって論は及ぶ。

 植物なくして人間も含めた動物は生きられない。動物は自ら栄養分を作り出すことができず、もっぱら植物を食べて植物が作り出す栄養分を摂取する。肉食動物と謂えども草食動物を食べるという形で植物が作り出した栄養分を間接的に摂取している。

 その植物は居ながらにして二酸化炭素と日光から体内で栄養分を作り出すことができるため、「餌」を求めて動き回る必要がない。

 地球誕生から植物の歴史を考証した本書は、与えられた環境で臨機応変に進化してきた植物の強さを存分に伝えて飽きさせない。太古からの自然の営みが眼前に立ち上がってくるかのようだ。

 ちなみに、動物は正に動くものだが、植物の「植」はどういう意味だ?と字源辞典に当たってみれば、「定着して増殖するの意」とあって納得。

 「植物や自然を何も知らなかったなぁ」と、深く感じさせられた一冊である。草木との無言の語らいから、多くを学ぶ一年にしたい。

(高川 勝)

 

『「木の駅」 軽トラ・チェーンソーで山も人もいきいき』
丹羽健司(全国林業改良普及協会)

「木の駅」 軽トラ・チェーンソーで山も人もいきいき 「いや〜山仕事の後の酒は旨いね〜」「山仕事に行くときは、かあちゃんが機嫌よく弁当作ってくれるよ」こんな楽しそうな声が聞こえてくるのが、最近全国で続々と始まっている「木の駅」に関わったおじさん達です。

 北海道にはまだひと駅もできていませんが、この本には全国各地の「木の駅」のさまざまな事例が豊富に掲載されています。

 前書きにある「まずは社会実験で小さく気楽にやりましょう。実験は失敗して何ぼですから」。この書き出しが「木の駅」プロジェクトの本質を表現しているのかもしれません。

 「木の駅」には、限界集落と言われるような中山間地域が身近にある山林に目を向け、地元の商店街を巻き込んで『地域通貨』を流通させるしくみが上手に組み込まれています。人任せではなく自分たちで意見を出し合う中でユニークなアイデアが生まれます。

 山主自らが伐採して「木の駅」に持ち込んだ材を地域通貨と交換し、その地域通貨が裏書きされて3回〜5回も繰り返し流通するという事例には驚きました。財布の中の日本銀行の紙幣を全く使わずに、冒頭のごとく、一杯飲めるのです。

 今、当別の山の仲間や役場の町有林担当にもこの本を読むように薦めています。北海道で第一号の「木の駅」を目指そうと、私は密かに目論んでいます。

(大澤 俊信)

 

『日本林業を立て直す 速水林業の挑戦』
速水亨(日本経済新聞出版社)

日本林業を立て直す 速水林業の挑戦 著者は日本で最初にFSC認証を取得した速水林業(三重県)の社長。

 持続的な林業経営のためのこれまでの取り組みや森林に対する考え方を思う存分に披露した著作である。

 しっかりと手入れされた針葉樹林で下草がじゅうぶんに生えていれば土砂は流れないとし、針葉樹人工林を自然災害の元凶として広葉樹林ばかりをもてはやす風潮に異をとなえる。

 経済性と持続性を両立させ、数十年から数百年のスパンで経営判断をおこなうことは他産業では考えられないことなのではないか。そう考えると林業経営とはとてつもなく難易度の高いビジネスである。

 生物多様性を強く意識した施業をおこなっているが、林分自体を複層林化するよりも林齢の異なる林分をモザイク状に配置する手法をとっている。

 施業のやり方についてもプロにはプロのやり方がある。プロのやり方は素人山主がそのまま真似できるものではないしするべきでもない。それぞれの異なったやり方が並存することこそが健全なのではないかと考えさせられる。

 著者はつい先日、コープさっぽろ主催の「北海道の森づくり交流会」で講演。木材利用がCO2排出を抑え、環境面で大きな意義があることなどを語った。

 使い手のことを考えた造材が重要で、やり方次第では木材の価値を一割から二割、ときには五割以上も高めることができるとの言葉が印象的。

(大竹 啓之)

 

『粘菌生活のススメ:奇妙で美しい謎の生きものを求めて』
新井文彦(誠文堂新光社)

日本林業を立て直す 速水林業の挑戦 タイトルがふざけています。いわゆるおやじギャグ。でも写真がすばらしいんですよ。

 粘菌って、それなりに名前は知られるようになりましたが、実際に見てわかる人はほとんどいないのではないでしょうか?この本ではその粘菌の実態が写真と文章で具体的に解説されています。

 著者のおもなフィールドは阿寒。そう、粘菌は北海道にもいるのです。

 ピンク、白、オレンジ、黄色、茶色、銀色…森の中にこんなに鮮やかで不思議な生き物が本当にいるとは!雪が解けたら早く森に入ってぜひ実物を見てみたい。そう思わせる内容です。

 イグノーベル賞を受賞した、北大の中垣先生も登場します。

(大竹 啓之)

これからの活動予定(2〜3月)

◆2月2日(木)北の国・森林づくり技術交流発表会
札幌ウッディーズの発表は「よりよい森づくりをめざして〜市民活動による森林調査と施業方針の策定〜」発表者は坂本雄、石田豊勝

◆3月11日(土)札幌ウッディーズ総会
札幌エルプラザ(札幌駅北口)にて。今年の活動計画をぜひ直接お聞きください。懇親会も予定されています。お気兼ねなくご参加のほど。

編集後記

 今年も札幌は大雪。冬の間はなかなか森に行く機会がありませんね。そういうときに読書はいかがでしょうか?
森林に関する本を読むと森に行くのが待ち遠しくなってしまいます。

 冬芽はもうふくらんできていますよ。さまざまな個性的な姿で。(大竹)