森林人通信

Vol.103  2016.8.1

地域環境美化功績者表彰

 このたび当会 間伐ボランティア「札幌ウッディーズ」は環境省より「地域環境美化功績者」として表彰された。
 6月8日に東京のグランドアーク半蔵門で行われた表彰式には石田事務局長が出席し、環境大臣からの表彰状を受領した。

 この表彰は環境省が毎年、「環境保全功労者等環境大臣表彰」として行っているもので、地域の環境保全や美化に取り組む個人や団体を対象としている。
 今年は「地域環境美化功績者」以外にも「環境保全功労者表彰」等、複数のジャンルであわせて41名、76団体が表彰された。

 当会は平成13年から除間伐・枝打ち・下草刈り・植樹などの森林整備を行っており、こうした長年の活動が豊かな森林を次世代に引き継ぐことにつながるとして評価されたもの。
 また、この表彰を踏まえ、7月15日には下山会長と太田副会長が札幌市の秋元市長を表敬訪問。
 今回の表彰により当会の活動が広く認知され、また今後の活動の励みにもなるものと期待される。

夏恒例、下草刈りに励む

6〜7月活動あらすじ

●6/11 22世紀の森(当別町)7名

 多雪地水田跡での広葉樹植林地という類のないフィールド。7年前に植樹されたエリアはシラカバなどが5mを超す樹高に到達。木の成長により下草刈りの必要性が薄れてきたために7月23日の活動は中止、理由は前向き。

●6/18 山田山林(当別町)6名
 下草刈り、ササとの格闘。快晴で葉緑さわやかな一日。

●7/9 北ノ沢都市環境林/吉村山林(札幌市)16名
 天然更新に期待し、稚樹の周りを手鎌で草刈りなど。スイカの差し入れ。

●7/16 柴原山林(札幌市)5名
 下草刈り、植樹したサクラの成長を願い。

 6月は4日と26日が雨で中止。ひと月に2度の中止はめずらしい。
 7/2 高川山林の山林調査は適期を判断して秋へと延期。

 7月9日に活動をおこなった吉村山林(札幌市)のオーナーである吉村さんから手記を寄稿していただきました。

山のめぐみ  吉村 久子

 北ノ沢の山林に関わってかれこれ50年。当時、私は中学生。父が山林を取得して間もない頃で周りは分譲されてきれいな通路がありましたが、うちのところは本当の山林でした。
 父は日当たりを考えて木を切り薪を作り、表土がありそうなところを開墾し、とうもろこし、苺、枝豆などを作り、私は収穫のときだけ行くお嬢様(?)でした。

吉村山林の「山のめぐみ」の一つ、
タモギタケ(これは昨年の写真。
今年は入山が一週間遅かった!)

 気が付くと周りが山林になり、日向(旧姓)山林には門柱、手作りの作業小屋が出来ていました。

 その頃、吉村家には子供ができ、父は孫のために作物を作り、フキ・ワラビを採り、キノコの時期には出ているところに目印の笹を立てて採らせてもらいました。
 20年くらい前からは父の後をうけて吉村が整備を受け継いだものの、畑はひとつ消えまたひとつ消え、笹に占領されていきました。
 たった一ヶ所の畑を維持していたその頃、札幌を襲った台風。そのお陰で「札幌ウッディーズ」と出会い、山林の整備、伐採した樹木の始末の仕方、草の刈り方、道の大切さなどを教えて頂きました。

 畑は消えてしまいましたが、たくさんの自然の恵みを次の世代に引き継げられるよう、「めぐみの山林」を保っていきたいと思っています。最後に「ちょっと歳を感じる今日この頃」です。 (吉村山林・山主)

案内板の効果 絶大!
= ワオーの森に来訪者増加 =  高川 勝

 5月17日以降、ワオーの森が様変わりしている。以前はほとんどなかった来訪者が、チョット大げさな言い方をすれば、引きも切らず…という状況である。
 下の道路から案内板を発見し、「なにがあるんだろう?」と上がってくるようだ。「ここに、こんな場所があるなんて知らなかった」と言う近所の人ばかりか、手稲や石狩から…という人まで。
 見知らぬお客さん同士、小屋前のテーブルに座し、コーヒーを淹れて草花談義に興じることもある。
 地元の小学生が野外授業にやって来た。引率するのは先生と親御さん、そして、講師役の我が笠倉会員。子供たちの元気な声が森に響いた。笠倉さんは「森は命の巡り。無駄なものは一つもない」と、子どもたちに説いて聞かせたらしい。「9月には別なクラスも…」とオファーがあるのは好評だったということだろう。地域の子どもたちが身の回りの自然に興味を持つ、その一助になるとすれば、こんな嬉しいことはない。

案内板に見入る人が絶えない

 5月17日の「森開き」のメニューだった自然観察会には多くの参加者から感動の声が寄せられた。そうした声に応えて、6月20日、ボラレンの熊野さん、菅さんを煩わして再びの観察会。「花は最盛期を過ぎたけど…」という憂慮は、「自然はいつの時季でも命の不思議を思い知らせてくれるんだ!」という驚きに変わった。観察会終了後、若い保育士たちが図鑑を前にいつまでも熱く語り合っていた。彼等の自然観は間違いなく子どもたちに伝わるに違いない…そう思うと楽しくなった。
 遊歩道に階段をつけたことで歩きやすくなり、道沿いの笹を刈り取ることで豊かな植生が出現した。来訪者へ「またお出でください!」と些かの自信を持って言えるようになった。全ては3年にわたり集中的に行われた整備作業のお陰である。助成いただいたコンサベーション・アライアンス・ジャパン(アウトドア環境保護基金)と作業を担ってくれたウッディーズの仲間に感謝したい。

当別山林購入顛末記  大澤 俊信(会員)

 このたび当別町内の山林を購入し、晴れて山主となりました。これまでの顛末をご紹介します。
 昨年12月に当別の森林組合長から「売りに出ている山林があるのでよかったら見てみないかい」と、突然申し入れがありました。組合長とは一昨年に開催した「当別木質バイオマス産業創造勉強会」でお世話になったのが縁です。
 さっそくウッディーズの笠倉さんに相談してみたところ「地形や路網等は比較的条件の良い箇所ではないか。2012年に間伐済との記載があるので、適正な施業が行われていれば当分手を付ける必要はないのではないか」とのアドバイス。一気に気持ちが動きます。
 その後、私が経営する「エコ・アパート」を建設していただいた武部建設の社長に現地を見てもらったところ「少し荒れてるけど、私なら買うだろうね。2棟目のエコ・アパートにはここの木を使おう」とこれもたいへん好意的なコメント。
 とは言っても、購入となるとまだ心配です。山全体をくまなく見て歩かねば。「もりねっと北海道」の山本さんが同行してくれるとのこと、心強い。

ミズキ、ミズナラ、マカバ

 面積は10町歩。直径30センチを超えるトドマツ・カラマツ林が主体ですが、ダケカンバ、マカバ、ミズナラ、イタヤカエデなど変化に富む天然の広葉樹林もあり魅力的です。山本さんは「経済的価値もあるし、自宅から10分と近いのがなにより。いつでも来れるし、自分の山があると楽しいよ」と私の背中を押します。心が決まりました。

 ところが、今度は売主の態度が煮え切りません。なにか決めかねるものがあるのかもしれません。私は熱意を伝えるためにA4用紙2枚に「なぜこの山を購入したいのか」のメッセージを書き起こし、ご自宅の郵便受けに投函。そして訪問活動を繰り返しました。その結果、4月中旬になってようやく売買の合意が得られ、契約書を取り交わすことができました。これでいよいよ山主です。

さっそく始まった自伐林業

 5月、大工をしている私の息子に手伝ってもらい、直径30㎝のカラマツを40本ほど切り倒し、PCウインチで林道に搬出、そして重労働の皮剥きまでを完了。これが新築アパートのカーポートの柱になります。
 これからは散策路を少しずつ切り拓きながら、樹種や林相を丁寧に観察し、100年後に多様な生き物が共存する針広混交林を目指そうと夢が膨らんでいます。ウッディーズの皆さんにも現地をご案内したいと思っています。

私はこんなひと

仲間のプロフィール:野中 千紘さん

 こんにちは、今年5月に入会させていただきました、野中と申します。札幌には転勤でやってまいりました。初の北海道生活にもわくわくしています。音楽と美術館めぐりとスキーが好きです。最近はジャズのフェスがあったりと、素敵な街だなと思っています。
 私は子どものころから田舎で自然に囲まれて育ってきており、外で遊ぶのがとても好きでした。それもあって、人と自然との関わり方について関心を持ってきました。前の職場の方のつながりで、近郊の里山のお手入れ(主にササ刈りですが)のお手伝いをさせていただいていたのですが、それがなかなかおもしろくて、転勤先の北海道でもできたらいいなと思っていたところ、ウッディーズの活動を知り参加させていただきました。北海道は気候なども異なり、森の様子もお手入れの仕方も異なるだろうと思い、どのような違いがあるのか見てみたいと思っていました。活動を通じて、林業に関わる方々や、その他森に様々なかたちで関わる皆さまともつながりができたらいいなとも思っています。
 私個人としては、どのようなかたちで魅力のある森や里の風景を守りながら、山主・地主の方はもちろん地域がその恩恵を実感できるようにしていけるのか、森との関わりを保っていけるか、ということについて考えていて、管理の大変さをしっかり実感したいという思いもあります。前回参加時は皆さんが林を見て、何年も先のイメージを持ちながら作業をされていたのが、とても印象的でした。
 山菜や野鳥など、詳しい方がたくさんいらっしゃるとのことで、いろいろと教えていただけたら嬉しいです。

私はこんなひと

仲間のプロフィール:三川 一さん

 はじめまして。三川一(みかわ はじめ)と申します。年齢は23歳です。二年前に長野県から移住してきました。今は小樽市内で働いています。樹木が好きです。触ったり、小さな工作物を作ったりして幼いころから遊んでいました。ウッディ—ズには高川勝さんから紹介をいただき、興味をもって参加しました。日程がなかなか合わず、活動にはまだ一回しか参加できていません。これから、できる限りいろんな活動に参加したいと思っています。森林や樹木ともっと広く深く触れ合えたら嬉しいです。
 同じように、畑で働くときの景色も好きで、農作業の手伝いにも時々出かけます。一日畑で働いて、ご飯をいただいて、帰ってくることも、大切な休日の過ごしかたです。食べることも好きで、自分でもいろいろ作ります。その他に好きなことは、読書すること、散歩すること、寝ること、想像することです。これらの趣味には、いつでも、どこでも、一人でもできるという共通点があって、時間に余裕をもって楽しむことができます。
 私が森や畑を好きなのも、自分の好きな時間の流れがそこにあるからではないかとも思えます。私は森が好きで、植物が好きで、土が好きです。そして、それらと好ましい時間を過ごせたら良いと思っています。よろしくお願いします。

これからの活動予定(8〜9月)

◆8月6日(土)荒巻山林(札幌市南区)枝打ち
◆8月27・28日(土日)下山山林(室蘭市)笹刈等
◆9月10日(土)北山山林(千歳市)風倒木処理等
◆9月17日(土)荒巻山林(札幌市南区)山林調査
◆9月25日(日)北山山林(千歳市)風倒木処理等

編集後記

ハチミツ香る、満開のシナノキ

 日の長いこの時期、木々が次々と花を咲かせます。6月のニセアカシア、トチ、ホウノキ、7月のクリ、シナノキ、イヌエンジュなど。クリは独特の匂い、シナノキは梢全体が黄緑色に染まりハチミツそのままの匂い、とそれぞれ個性的です。
 花が終わるとあとはひたすら果実の成熟を目指して。人と木と、それぞれ新しい世代が森を再生していくのが楽しみです。(大竹)