森林人通信

Vol.82 2013.4.1

新しいシーズン始動
 今年も森づくりを楽しく安全に

 厳冬期、北海道神宮の梅林剪定で2013年度の活動を開始したウッディーズは、総会を経て早くもフル稼働にシフトした。

新フィールドは「植苗の森」

 今年から「植苗の森」(苫小牧市植苗)を重要な活動フィールドに加え、施業を進めることになった。「植苗の森」は「イコロの森」の一部で奥の方にある植樹を目的としたフィールドである。
 イコロの森HPには、以下のキャッチコピーがある。

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 森の庭へようこそ
 森に守られながら、
 自然の息遣いを感じ、
 花を木を育てています。
 森の空気と植物に出会いませんか。
「イコロ」とはアイヌ語で「宝もの」を意味します。
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 3月23日、植苗の森は未だ雪に覆われており、作業現場まで機材を担いで約30分、ズブズブ雪に埋まりながら歩くという難行から始まった。
 行きなり消耗を強いられてたどり着いたそこには大小の木々が林立している。アカエゾマツを植樹するための前段として皆伐を行う。細い木も多いので手ノコも活躍。この日デビューの新会員Arさん、確かな身のこなしの落ちついた作業ぶりだ。

 30日にも同じフィールドで作業が行われた。「ヒグマの糞目撃」も伝える同日版ブログ「活動の記録」は「羆も冬眠から覚める時期、ウッディーズの活動もこれからが本番です。今年も安全第一で楽しみましょう!」と締め括られている。
(この項、文・写真ともブログ「活動の記録」から。なお、「ヒグマの糞」はヒグマの糞ではなかった由)

活動のステップアップを第12回総会で議論

 ウッディーズは、3月20日、第12回総会を開催し平成25年活動方針を決定した。
 その概容は以下のとおり。

①活動フィールドごとの整備計画作成。
②高度な施業技術の習得。
③安全意識の向上。
④森林保全活動の重要性の理解促進。
⑤他団体との協調による森づくりネットワークの強化。
⑥以上の課題を達成するための組織体制整備。

 議事に引き続き、靑柳正英さん(元北見道有林管理センター署長)による講演が行われた。
 題して、「自然の妙味・人の技‐林分施業法を受け継いだ多様性の高い天然林」
 高度な講演内容だったが、自らの実践に基づく勢いの良いお話しにいつか引きこまれていった。
 「山づくりは足跡が肥料(よく見回る)」、「(大径木・中径木・小径木の)家族を育てるような育林を」との言葉が印象に残る。
 次は、森の中で木に触れながらの指導に浴したい…と。

TPP交渉参加へ 国民に情報が届かぬ秘密交渉

 農林水産業は元より日本の社会全体に大きな影響を及ぼすTPPについて、政府は交渉参加へ向けまっしぐらに進んでいる。
 これに対し、道議会は「交渉参加にあくまで反対、速やかな情報提供を」とする意見書を全会一致で可決した。全国知事会も「国民に対する十分な情報開示及び明確な説明を行い、国民的議論を行うこと」を繰り返し要請している。
 一方、自民党も「聖域」が守られなければ「脱退も辞さない」としている。
 問題は、交渉の過程での協定文案や各国の提案などの公開が禁じられ、なおかつ「協定発効後4年間秘密扱い」になっているため、「脱退」の是非の判断に必要な情報が得られない仕組みになっていることだ。(別項・「林間独語」参照)

頼もしい3歳児 チェーンソー?に熱中

 2月のある日、ワオーの森で、かもめ保育園の子どもたちがシイタケのホダ木用に伐ったミズナラの枝を払い、麓まで引きずり下ろした。

 高川オジさんがミズナラを指して、「30年くらい頑張って生きてきたこの木、これから伐るぞ。」と言うと子どもたちはチョッと怯んだ表情をする。
 「でも、大丈夫。伐っても死なないから。春になったら切り株から芽が出て、ホラ、あすこの木のように大きく育つのさ」と、近くの株立ちしたミズナラを示すと納得したようだ。(子どもを驚かせてはイケない)

 この日はテレビカメラも入っていて、緊張気味ののチェーンソーワークだったが、3歳児の春太には格好良く見えたらしい。その日以降、彼は高川オジさんの真似ッコに熱中しているという。
 手にはしっかりチェーンソー?を構え、前に置いてある箱椅子を木に見立て、「ガー、ガー」という擬音入り。樹が倒れる段ともなると、「危ないゾー離れろー!」と絶叫し警告を発する。

 彼は保育園へ行っても「伐木作業」を怠らず、ここでは、「ガー、ガー」の音と身構えだけで、さしずめ、エア・チェーンソー! 伐った木?をバリバリと叫んで階段に蹴落とすなど、芸が細かい。

 「木樵熱」の昂揚は止まるところを知らず、「チェーンソー」まで作って、得意満面! 写真(左)下部の▼はスイッチだという。

頼もしい後継者誕生…。

コンサベーション・アライアンス・ジャパンが、ウッディーズへ活動資金を助成!

 アウトドア関連企業が組織する団体、コンサベーション・アライアンス・ジャパン(アウトドア自然保護基金)は、ビジネスで得た利益の一部を、自然保護のために活動している環境団体に活動資金として援助・提供している。この度、同基金はウッディーズへの助成を決定した。ウッディーズは創立時にも支援を受けており、深甚の感謝を捧げるところである。(同基金のホームページ

ペレットストーブ顛末記(その二) 大竹 啓之

 2月の上旬に自宅マンションにペレットストーブを設置しました。いよいよ、マンションで木を燃やす生活の始まりです。

「排気口問題」クリアー

 工事は半日ほどかかりました。(あまりお勧めではないですが)部屋の換気口を一つ犠牲にして、ペレットストーブの給排気口としました。元々、灯油FFストーブの給排気口はあるのですが、それより大きい110㎜の穴が必要なんです。マンションでは壁に穴を開けるわけにはいかないので、今のところ、ほかによい方法が見当たりません。マンションにペレットストーブをつけようとしたときの最大の課題は、この穴の確保です。うちの換気口は少し小さかったので、中の塩ビのパイプを無理やり抜いてなんとか間に合わせました。
 今回設置するペレットストーブはFFなので、いわゆる煙突と違って、高さを確保する必要はないのですが、換気口の位置が高いので、ストーブ本体からそこまで給排気筒を立ち上げると、まるで薪ストーブかと思うような存在感が出てしまいました。

 設置の次に心配していたのが、点火がちゃんとできるかどうかでした。全自動の灯油ストーブになれた現代人がマッチで点火できるのかと。これが意外に簡単だったようで、妻は毎朝、文句も言わず、かといっておもしろいとも言わずにあたりまえのようにやっています。中学生の子どもでも淡々とやります。要するに、誰でもできちゃうんです。残念ながら、「ストーブに火を入れるのは俺の仕事だ」みたいな優越感に浸ることはできませんでした。

 

ガラス磨きが日課に

 その代わりに、私が毎日やらなければならない仕事は、夜寝る前のガラス磨きと灰掃除です。特に、ガラスは毎日きれいにしないと、ススで真っ黒になって炎が見えなくなるので、どんなに眠たくてもサボれません。もう少し燃焼効率が上がり、ススが出ないようになったらいいのに、というのが正直なところです。
 もうひとつの大事な仕事が、ストーブにペレットを補充することです。うちではストーブのタンクをいっぱい(10㎏)にすると2~3日もちますが、マンションの地下タンクからの自動供給だった灯油に比べるとはるかに手間がかかります。しかも、袋から一気に投入すると粉が混ざって詰まる原因になるので、少しずつ柄杓ですくって入れます。これを面倒だと思ったらやってられません。
 そして、最大の課題、ペレットの置き場所ですが、これはどうにも工夫のしようがなく、寝室の隅に山積みしています。水濡れ厳禁なので、ベランダには置けません。だんだん減っていくとうれしいような、でも消費量が増えるとその分また買わなきゃならないのでうれしくないような、妙に複雑な気分です。
 こんな感じでいろいろと手間がかかるのですが、それも楽しみのうちと言い聞かせて、炎を眺めながらひとり深夜の杯を傾ける日々を繰り返しています。(つづく)

人と木のひととき 

〜石原 亘氏によるコラム〜

第1回【3匹のこぶた】

 大学院を中退して、日本を代表する斜陽産業のひとつである木材業界に身を投じて早くも丸一年経ってしまった。体力を持て余しながら、活動には出ないユーレー会員のせめてもの罪滅ぼしに、僕が業界に出て肌で感じたことを、何回かにわたり伝えたいと思う。
 さて、僕が小さい頃に好きだった童話のひとつに、「3匹のこぶた」がある。訳者や出版社によってストーリーに細かな差異はあるものの、コブタの3兄弟がそれぞれ「ワラ」と「木材」と「レンガ」で家を建てるという粗筋で、当時僕が読んでいた絵本を再見すると、汗をかきながら(そして、下請け業者にも丸投げせず)懸命にシビアな「建設業」に従事するひたむきなコブタの姿があって、なんとも微笑ましいものである。
 このオハナシの顛末は、ご存じの通り、なぜか突発的に発生した嵐(山から下りてきたオオカミが家を吹き飛ばすバーションもあるけれど…)で「ワラ」と「木材」で作った家はアッケなく倒壊、「レンガ」の家とそこに住む末っ子のコブタが生き残る、といった感じである。

道内に急増する大型木造建築物。
とある道の駅の建設現場。

 ここで釈然としないのは、我らが「木材」で作った家、いわば「木造」が「レンガ造」に大敗を喫するところである。もちろん、旧道庁や東京駅に代表されるレンガ造の建築物には独特の重厚感と美しさがあるのだが、現実世界を見回してみると、レンガ造が新たに建築されることなど殆どない。どころか、現在まで残るレンガ造の建物は稀で、せいぜい田舎に残るサイロがノスタルジーを演出している程度である。一方の木造は、国の木造化推進政策(いわゆる「木進法」)も手伝って、昨今では道内にも大型の木造建築が、後継技術者や職人の不足をよそにかなりのハイペースで建てられている。

 僕がここで言いたいのは、木造がレンガ造より優れている、ということではない。この童話が書かれた当時は最先端に思われていたレンガ造が駆逐され、前時代的とみられていた木造が今ではチヤホヤされている。また余談ではあるが、長男のコブタが建材に用いたワラは、現在ではバイオエタノールの原料としてひそかに注目もされている。…すなわち、こうした材料は、イノベーションと並行して、流行ったり廃れたりを繰り返していくのである。
 問題は、生きている木の成長が、そうした社会の変遷とは全く無関係に進んでいくということである。例えばこの先、鉄鋼やコンクリートの値段が何らかの原因で暴落したら、木造の需要は落ち込むだろうし、その反対だって充分に考えられる。それでも、「今は売先がないから、ちょっと成長せずに待ってくれ」とか、「今は木造が流行りだから、さっさと成長して伐らせてくれ」などと木に訴えてもそれは無駄なことである。
 もっとも、長期的な視点が必要となる森林の施業に、そうした短期的な木材需給の考慮を求めるのは酷なオハナシでもあるが、結論すると、森林施業のサイクルと需要先である木造建築の需給バランスの不一致が、技術者不足を含め今日の業界の諸問題の根っこにあるように思う。(つづく)

(文・石原 亘)

(コラム「人と木のひととき」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)

林間独語

▼TPP交渉への参加に、農林水産業の統計・情報の作成を生業としてきたものとして歯がみしたい思いがする。林業担当部署に配属された1960年、木材自給率は70%を超えていた。それが、

64年に関税が撤廃されてから下降の一途をたどり、現在は28%にまで低下している。

▼TPPにより農産物の関税が全廃されたら農業はどうなるかに思いを巡らせば、林業の惨状が二重写しに見えてくる。農業が立ち行かなくなり、多くの農家が消滅する。林家の3分の2は農家でもあり、我が宰相が「息を飲むほど美しい」という田園風景を守りつつ、辛うじて保たれている山林の保守をも担っているというのに。TPPは里山をさらに荒れ果てた景観に変えるだろう。

▼第一次産業は就業者平均年齢が60歳を超え先がないと言われるが、取りも直さず、高齢者の雇用の場となっているということだ。それはまた生きがいと健康を提供している。もちろん、基本は人間生存の土台をなす産業である。若い就業者を積極的に導入し、なんとしても守らねば…。

▼それにしても、「TPP絶対反対!」の負託を受ける素振りで政権についた途端の変身! 政治に求められるものは、白を黒と言いくるめる言葉の詐術ではなく、風土と人を守ろうとする誠実さのはずだろう。