Vol.88 2014.4.1
安全作業、技術と意識の向上を誓う
− ウッディーズ13回総会 −
ウッディーズは、3月23日、札幌・Lルプラザで2014年総会を開催、これまでの活動を総括し、今後の運営について意見を交換した。役員体制が若手の参入で強化され、新たな飛躍を予感させる総会となった。
チェーンソーを手に思い新たに木々と向き合う − 程なく、鮮やかな緑に包まれる森で、仲間と共に…。
新体制で意気高く
総会冒頭の会長挨拶では、作業における安全の重視が強調された。
事務局長からは、それを踏まえながら、
①高度な技術の習得や森林保全意識の向上
②活動参加の機会拡大を図るため、「ウィークディ活動日」を設ける
などの報告と提案があった。
意見交換では、研修機会の充実、調査用計器の装備等が要望された。
清新な会員の登用による役員体制の強化が図られた。新体制には特定ポス卜に偏りがちな負担を全体で処理する仕掛けを急ぎ作り出すことが求められる。
5年間にわたる会計業務を全うしてWt・Kさんが会計担当幹事を辞任された。この間、命に関わる大病を乗り越えて現場へ復帰、‘さすが、K子さん!’と仲間をうならせた。これまでの献身的な貢献に深甚の感謝を献げる。
理論と実践に基づく提言
総会と併せて企画された学習・講演会では、講師に「新・山川草木を育てる集い」藤原理事長(北大名誉教授)を煩わし、先生がリードする「当別22世紀の森」について、その歩みや技術的課題、森林の維持管理一般についてお話しいただいた。
藤原理事長
林業は経済的にはペイするものではなく、木材供給のみならず水源涵養など多面的機能を有すること考慮すれば、森林経営を「個」に委ねるべきではない。地方ごとに安定した地元森林労働者集団を存在させ、「森林に対する働きかけ→観察・実証→働きかけ→観察・実証」を継続する「公的経営」の必要性を述べられた。
エゾヤチネズミの生態と食害にっいての話題がとりわけ興味深かったが、決め手となる対策がなく苦慮しているという。(ウッディーズはエゾヤマザクラの幼木にアスファルト・フェルトを巻き付けて、ほぼ完璧な効果を確認しているが、引き続き検証していきたい。)
学習・講演会には、「新・山川草木…」の方々も多数出席された。皆さんには、その後に設けられた懇親会にも引き続きご参加いただき、交流を深めた。ひたすら楽しいひとときだった。
(詳細は、こちらを参照)
広がる「地材地消」
3月7日、札幌で開催された『北の木づかいフォーラム〜地材地消で生まれる地域の個性、地域の未来〜』で、道産材を活用した店舗・住宅・事務所の建築事例、木材ペレットの活用、「木育」などの社会活動など多彩な取り組みが紹介された。
「地材地消」が「ここまで来ているのか」の驚きと「これからだなあ」の感慨が相半ばした。
北海道新エネルギー普及促進協会・山形理事長が「ペレットストーブの家庭普及に向けた取組み」と題する報告で、我が大竹会員のペレットストーブをマンションにおける利用事例として紹介した。
(詳細は、こちらを参照)
春香小屋焼失
たくさんの楽しい思い出をありがとう〜
2月17日9時ごろ、ウッディーズが、例年、忘年会で利用していいた「春香小屋」が火災で全焼した。(別項「林間独語」参照)
冬も面白い野幌森林公園 (高原久美子)
2月16日、積雪Iメートルを超す野幌森林公園での自然観察会に参加した。
北海道ボランティア・レンジャー協議会・春日会長は開会挨拶でいつも「植物の不思議」をお話ししてくださる。今回は、つる性植物のイワガラミ。イワガラミは3月ころ雪上に枯れ花を落とす。それが固くなった雪面を風に運ばれ、落ち着く先は「根開き」が始まって窪んだ木の根元だ。そこで、小さなタネが芽を出し、後は木に絡みついて這い上がっていくだけ…という。賢い生き方だこと!
森の中は、すっかり葉を落とした木々が大も小も枝や幹にこんもりと雪を載せている。樹皮に模様が見える木がけっこう目につく。白、黄、茶、黄緑、灰、桃色など色もさまざま、広さも大小まちまちにはりついている。これは樹木に着生する地衣類で、外見が似るコケ植物と混同されるが、地衣類は菌類であって植物ではないのだという。酸素と水分を必要とするが、木から養分を吸い取っているワケではない。地衣類は酸素がたくさんあってこそ育つので、公園などでは大通り側の樹木に地衣類が着生しないという例がよくみられるという。それで大気汚染の指標生物なのだそうだ。
本の幹にキツツキ類が開けた穴が見える。つつかれた木は枯れるのでは…と心配になるが、木は樹皮近くの管を通じて水分や栄養が運ばれて成長するので大丈夫。むしろ、木に付いた害虫を食べてくれるので益になっているのだという。
樹上高くに、昔は「鳥の巣なのだろう」と思っていたヤドリギがある。その丸い塊の中に実がたくさんあって、それをヒレヤジヤクが食べ、タネを末消化のまま糞と一緒に出す。ヤドリギのタネには粘性があって、枝や幹に「金魚の糞」状態に連なってぶら下がる。それが見えた。やがて、枝や幹に根を食い込ませて生長するのだという。ここでも、木と鳥の見事な共生ぶりを見る。
気温が低く、朝に入れ替えたのにカメラの電池が赤く点滅を始め、手もかじかんでうまくシャッターを押せないが、苦にならない。
ガイドさんの説明に上を仰ぎ見、左右に目を凝らし、雪上の踏み分け道で足をとられないようバランスをとって歩いた3キロメートル。気分すっきり(酸素いっぱいの効果?)、自然を楽しみ、ちょっぴり物知りになれた2時間半のコースだった。
(たかはら くみこ・会員)
自然に潜む危険と向き合う
〜今内 覚氏によるコラム〜
第3回【ダニ(マダニ)による危険性】
感染症はヒトや動物の健康を害する一番の原因であり、時としてヒトや動物の健康だけでなく命まで奪ってしまいます。原因となる病原体によっては、‘虫さされ’により病気が引き起こされることもあります。昨今、ダニによって媒介される病気が問題となっていますが、ダニにも種類があり、大きく分けて屋内の絨毯や布団にいる小さいダニと野外に生息するマダニとに分類されます。
屋内の小さいダニは、主に喘息、アレルギー性鼻炎、かゆみの原因となりますが、問題となっているのは、動物の血液を餌とするマダニです。正確には‘マダニ’が問題ではなく、ダニの体中に潜む病原体が原因となります。マダニは血液だけを餌に、幼虫-若虫-成虫と脱皮し成長します。よって1匹のダニは生涯に3回血液を吸うことになります。
血を吸うだけなのになぜ感染するのか?と思う方もいるかもしれませんが、ダニは血液を固まらせないように唾液を注入しながら吸血します。このときに唾液中の病原体が人間の体内に侵入することで感染が成立します。ダニは病原体を故意に伝播している訳ではなく、病原体がダニを‘乗り物’として利用しているのです。 ニュースなどで報道されている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の原因はウイルスです。このウイルスは、北海道のダニからも検出されました。現在のところ北海道では、患者は発生していませんが、発見が遅れると重篤な症状を呈することから注意が必要です。ダニの中の細菌が体に侵入することで病気になるライム病や回帰熱も気をつけなければなりません。
このような病気に対するワクチンは現在ありませんので、ダニに刺されないことが唯一の対策です。残念ですが、一般的な虫除けはダニには有効ではありません。ダニに刺されないように肌を隠すことが基本ですが、いくら気をつけていてもダニは襟元、裾、袖から巧みに侵入します。ダニはカのようにすぐには刺さず、皮膚の柔らかいところを探し回った後、刺します。私の場合、仕事上ダニを目当てに山に入りますので、山仕事の後は、必ず風呂に入り、念入りにダニにさされていないかチェックします。湯船にダニが浮いていることもしばしばです。
万が一、吸血しているダニを発見した時は無理に自分で剥がそうとせず外科へ行き剥離して下さい。無理に引きはがすと注射の原理で、自分で病原体を打ち込むことになり危険です。ダニを使った実験から病原体は、すぐには体の中に入らず吸血開始2日後くらいに侵入することがわかっています(但しウイルスの侵入はこの限りではありませんので注意)。
山開きが待ち遠しい方も多いと思いますが、クマだけでなくダニにも気をつけましょう。
(こんない さとる・北海道大学大学院獣医学研究科准教授)
(コラム「自然に潜む危険と向き合う」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)
森林インストラクター資格試験を受験して (笠倉 信暁)
● 森林インストラクターとは
一般社団法人 全国森林レクリェーション協会 の実施している資格で、森林や林業に関する適切な知識を伝え、野外活動の指導を行なう「森の案内人」です。
一次試験は筆記で、森林、林業、安全及び教育、森林内の野外活動の4科目で、二次試験では、一次合格者を対象に実技試験と面接が行われます。
● 受験のきっかけ
一昨年、自然観察会で経験豊富な方の指導を受け、興味を持ったことがきっかけです。仕事上では、この資格を得ることにメリツトはないのですが、自己のスキルアップ、また、幅広い人脈作りの一環として受験しました。
● チャレンジ開始
合格率を甘く見て、過去問の簡単な分析をしただけで本番に臨みました。が、3科目のみ合格、森林内の野外活動を落としてしまいました。幸い、一次の合格科目は、その年を含め5年間免除されるということで、次年度の再チャレンジを決意しました。
2年目、残り1科目ということもあり、緊張感がなく1ヶ月前から勉強を再開しました。前年は、過去問の分析を怠っていたので見直しを行い、なんとか体勢を整え一次を突破しました。
二次試験は、時間にすると12分程度と短く、実技では用意された素材の一つを用い、野外活動の模擬演技を行います。そして12月、無事合格通知が届きました。
● 資格取得、その後の展望
二次試験の講義で講師の方が、「健全な社会を作っていくためには、いろいろな人が森林に関心を持つことが重要」と言っておられました。このことは、「森林に関心を持つ人々、森林づくりに取り組もうとする人々と手を携え、…その環を広げていくことを目指す」というウッディーズの理念と合致し、実際、様々な人達の力を借りて、実現されているものと思います。
一昔前と比べると、森林管理に携わる人々の態様に変化が見られる中で、森林インストラクターには、そのリーダー的ポジションに立つことが期待されています。北海道の森林ボラいティアの代表であるウッディーズですが、森林インストラクター資格は、その会員
の方にこそふさわしい資格ではないでしょうか。
もし、この記事を読んで興味を持たれた方がいましたら、是非声をかけてください。私も経験者として、力になることができればと思います。そして、共に学び、森づくりの姿を模索していきましょう。
(かさくら のぶあき・会員)
林間独語
▼春香小屋はウッディーズ会員のOtとTkが所属する山岳会の山小屋だった。25年前、メンバーみんなが資金を拠出し、ノコやハンマーを手に建設に参加した。嬉々として釘を打っていた、まだ小・中学生だった子どもたちの姿も目に浮かぶ。あまり山に登らなくなったメンバーも小屋にはよく顔を出した。会員の心の拠り所となっていたのだ、と今になって思う
▼生活の根拠とする建物などではない。ましてや尊い命が失われたわけでもない。しかし、思いもしない喪失感にとらわれている。小屋と共に過去の時間と記憶も潰えてしまったかのような…。引き比べることも愚かしいが、東北震災・原発被災、世界各地に絶えない戦争による壮絶な破壊・喪失を想う
▼これまでの多くの利用者から焼失を惜しむ声が寄せられ、小屋は自分たちだけのものでなかったことにも気づかされた。メンバーの高齢化などで再建への道は険しいが、再びの薪ストーブを囲む語らいや、林間にこだまする子どもたちの歓声を思い出し、夢に描いて歩み出す。小屋周辺の、風雪に抗して生きる木々にあやかり、しぶとくしなやかに。(T.M)