Vol.85 2013.10.1
室蘭に新しいフィールドが
遠い記憶のように思わせる猛暑の夏から新涼の秋へ季節は移ろい、今年の活動も2ヶ月を残すのみとなった。8月~9月は、遠く室蘭も含め7フィールドで9日間の作業が行われ、延べ87人が参加した。
以下、新しい展開もあったこの間の作業のあらましである。
懐かしい祖父ちゃんの森 柴原山林(南区 8月3日)
山主・D倉さんのお祖父さんが大事にしてきた山林である。4年前から、04年18号台風被害跡の整備と、植樹、道作りを行ってきた。この日の作業は、作業(遊歩)道と植林地の草刈り。
思い入れの深い森いっぱいには今を限りと蝉時雨が降っていた。
「標準値調査」で現況を把握 荒巻山林(南区 8月10・25日)
10日は、丈高い草にふさがれていた林道を延々と草刈りし、木が覆い被さり朽ち木が浮かんでいた池を清掃し、その後、次回に備えて間伐対象木を選木した。
25日は、間伐作業と併行し、会員のK倉さんが山林の現況を調査した。計器を用いて、人工林部分の外郭と面積を割り出し(0.57ヘクタール)、残存木本数と平均形状比を推計した。
手際よく計測していく
結果は、現存木が1250本(1ヘクタール当たり)、樹?を胸高直径で割って得られる樹幹の形状比が平均69などで、無難な数値のようだ。
この調査で、今後、荒巻山林をどう仕立てていくかを考える際に有効な、基礎データを得たわけである。
室蘭市郊外に「旋風」襲来! 下山山林(室蘭市)9月14・15日
「ウッディーズ旋風」が室蘭市郊外の住宅街を襲い、野放図に林立する木々をバタバタと倒し始めた。
近所の人々が集まってきて驚いて見守る。瞬く間に、荒れた暗い「森」がきれいになっていく。ボランティアなのに、見学がくる本格的仕事ぶりが誇らしい。
私も、もっと活動に参加しよう!まず、道具を買おう。
そして、湧き出す水にサワガニが棲み、ミズバショウが咲くこの地をみんなの憩いの場所にするのだ。
午後は近くの下山山林へ移動して薪作り。ここでも、皆さんの知識と技術に驚く。
夜は下山会長の小屋で火をおこし、野外での宴会に興じる。
(この項 君知美会員記)
町内会長がきて、「何事ですか?
朝に見た景色とはまるで違う!」と驚く。
(アイスランド旅詠より)
日本では春に花咲くキングサリ レイキャビックでは夏の盛りに
住民に植物園を尋ぬれば車に乗せて届けてくれぬ
中野 常明
われの住むマンションの子ら巣立ちゆき自転車置場の隙間の広し
川の面に白き体を翻し山翡翠(やませみ)行き来す空にみだれて
高橋 千賀
二階よりひびき来る音みどり児の床蹴る音と知れば楽しも
雨の香が先たち匂ふ夕まぐれ木槿(むくげ)の下に秋桜の揺る
原 公子
人と木のひととき
〜石原 亘氏によるコラム〜
第3回【戦争と平和と木材と】
北海道大学の誇る観光名所のひとつに13条門のイチョウ並木がある。手稲山を背景に、イチョウが連なる様は壮観であるが、この並木道の歴史はそれほど深くないという。戦争前はこのイチョウ並木はサクラ並木だったそうで、戦争末期にそのサクラは防空壕の坑木用に全て伐採されてしまったのだという。
木材は「ぬくもり」や「癒し」などのあたたかいイメージがあるが、太平洋戦争中、資源の乏しい日本においては貴重な軍用資材でもあったようだ。極端な例としては、戦況が終末的様相を呈してくると、特攻専用の航空機体にも木材は使われはじめた。
伝説の木製特攻機「剣」。
『大東亜戦争は愈々苛烈なる決戦段階に進入し、いまや国家の総力を挙げて物的戦力の飛躍的増強を図らねばならぬことは贅言を要せぬところである。(中略)
この戦時経済の動脈をなす船舶の増強は、鋼船の増強を基軸としなければならぬことは言うまでもないが、いまや寸刻を争う決戦段階に直面し、資材並びに生産過程より見て幾多の制約を余儀なくされている現状において、資源的に恵まれ生産過程の極めて短期な木造船が時代の寵児として登場したのは決して偶然なことではない…(略)』
実は貴重なものもあるのだが、
その存在を知る学生さんはあまりいない。
北海道大学農学部の木材工学研究室の書棚に眠る技術書籍の中には、帝大時代の古い資料もあって、長い伝統を感じる。
その中には戦時中の技術書もあり、上記の引用はそのひとつである『木造船用材便覧』の前文からである。
これによれば、大戦後半期、250トン級の大型船を含む大規模な木造輸送船の生産計画が国家主導で進められていたようである。もっとも、そのための木材資源ですら不足気味であったらしく、この書中には木材の倹約利用を求める一節もあった。
こうした切迫した資源状況は、皮肉にも木材技術の進展に貢献することにもなった。かつて京都大学・宇治キャンパスの生存圏研究所を訪ねたとき、木質科学研究棟のエントランスに戦闘機の木製プロペラが飾ってあったのを思い出す。大戦中に木製プロペラの開発が進められ、圧縮木材の技術などは相当に研究されたという。
しかしながら、少なくとも東亜戦線においては、こうした木材加工技術が戦況に変化を与えることは殆どなかった。これを悲しむべきか喜ぶべきなのかは分からないが、現代文明において木材は結局のところ「生活の道具」にしか成りえないのかもしれない。この野暮ったさゆえに、木材にある種の人間味を感じるのは僕だけであろうか。
(いしはら わたる ウッディーズ会員)
(コラム「人と木のひととき」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)
エコな住まいを提供したい…
大澤俊信
私が住む石狩当別は札幌駅から学園都市線で37分。あいの里公園駅を過ぎると急に人家が少なくなり、雄大な石狩川を渡る鉄橋が眼に飛び込んできます。当別駅に着くと空気が澄んでいることを実感します。
駅の北口から徒歩5分ほどの所に「かたくりの里とうべつ」があります。私が経営する4棟のアパート群で、その1棟4戸は施工中の「エコアパート」です。エコアパートに「理想的な生活の在り方はエネルギーと食糧の地産地消から」との思いを込めています。
そして、道産材の木をふんだんに使った建物が認証される「北の木の家」に認定申請します。
このアパートには北海道初かもしれませんが、主暖房に「ペレットストーブ」を採用しました。木質バイオマスエネルギーの優等生といわれるペレットを燃料として、炎の見えるストーブを焚きます。ストーブの上では煮炊きができるので、カレーやおでんを作ることができます。そのストーブを畜熱効果が高いとされる土間の上に設置します。ペレットストーブ一台で1階と2階の62㎡(メゾネットタイプ2DK【12+7+6】)の部屋全体を暖めます。当会員の大竹さんが採用されたものと同様のタイプを設置予定です。
アパートで200㎜外断熱を採用したことも冬が長い北海道での断熱効果を期待してのことです。
壁は漆喰タイプで温度を一定に保ち、空気を清浄化させる役割を果たしてくれます。実はこの漆喰壁は私が塗ります。3年前、空室が多かったアパートの改装の際に、漆喰の塗り方の指導をしてくれる資材屋さんと出逢いました。指導を受けながら、最初はぎこちないコテの動きも10室目になるとかなりスムーズに動きます。そんな体験から今回もチャレンジです。
ウリの一つは1階テラス前に20㎡の菜園が付いていることです。家族の口に入る野菜を朝採れ野菜として栽培し、料理をしていただければ…と。土の持つエネルギーは偉大で、育てる方が未熟でも?見事に実を付けてくれます。テラスに雨水タンクも設置しましたので雨不足の対策も万全です。
家賃は7万8000円で、来年3月中旬から入居できます。
ちょっとだけ丁寧で豊かな生活を当別という田舎町でどうぞ…と思っています。
(文・おおさわ としのぶ 会員)
秋の花賑わう野幌の森を歩く
高原久美子
9月8日(日)、どんな花々に出会えるか楽しみに、野幌・自然ふれあい交流館主催の観察会に参加した。晴天のもと参加者は80人を超えた。
北海道ボランティア・レンジャー協議会会長でウッディーズ会員でもある春日さんが開会挨拶。茶色の実を付けたオオウバユリを持って登場し、「一つの実にタネが550粒、それが25個ついている。さあ、タネはいくつ?」ウーン、暗算できない。(実は、13750粒!)。更に、元株の基部に子株を擁するという、子孫を残すための驚くべき用意周到。導入の巧みさに引き込まれ期待が膨らむ。
挨拶が終わるとグループ分けである。同行のT川さんはガイドに名解説者の誉れ高い宮本さんを希望して、「参加者はガイドを選べる」と確認していたのに、機械的に分けられて不満顔。たまたま、春日さんグループの人数が少なく、我がグループが人数調整の枠になったので、「ハ~イ」と名乗りでる (^_^)/
さあ出発。野原は小さな薄いピンクのゲンノショウコの花でいっぱい。シロツメクサは受粉が終わった部分は茶色く下向きになり、未受粉部分は白く上向きである。外来種で嫌われもののオオアワダチソウとセイタカアワダチソウ、花粉アレルギー源というのは濡れ衣で、関係ないそうな。知らなかった~。
実験的に確かめた人はいない、とも。
そして、柳の木の葉に取りついた奇妙な生き物。どっちが頭でどっちがお尻? これはシャチホコガ科モクメシャチホコという蛾の幼虫で、お尻を頭に見せかけてホントの頭を守る「目くらまし戦術」ではないかという。生き残りにかける知恵!
出発早々話題が満載で歩みはゆっくり。少しずつ黄ばんできた木々が秋を知らせている。路傍には丈は高いが小さく白い花をつけた草が多い。木の枝の分岐にはもう冬芽が準備されている。ルーペを近づけながら懇切な説明である。
あまりに多い草花と木々のチェックに追われてゆっくりと観察しているゆとりがない。もちろん名前は右から左である。それでも、「チェック表」の草花80のうち58、木本37のうち25は確認できた。
次々と現れるカタツムリ。色も模様も形も大きさも様々ななかで、エゾマイマイとヒメマイマイを覚えるのがやっと。
しっとりと土が落ち着いた散策路、上り下りの坂道も結構あったが、木々の梢に太陽が陰り汗もかかずに歩きとおせた。4時間半もの長丁場だったが、疲れも心地よい楽しいひとときであった。
動植物の種の生き残りと繁栄をかけたさまざまな戦略のすごさは、春の観察会(ウッディーズ主催)でもたくさん説明を受けたが、この秋の観察会でも変わらず強く印象づけられた。時々はこのような機会を持って心身のリフレッシュをしたい。
(文・たかはら くみこ 会員)
林間独語
▼「ワオーの森」に、オニグルミの落下音が静かに響く9月18日のことだった。夕刻、森の直ぐ下に住むK会員からの着信。「出たー、ヒグマ出たよー!」と、ハアー、ハアー絶え絶えの荒い息をつきながらの報告だ。
▼市役所へ通報したら、ハンター2名、警察官4名も駆けつけた。Kさんが、大柄な警官を指して「50メートルくらい離れたところで、この方ぐらいに見えた」と言うと、ハンターが「250キロくらいかな」と呟く。
▼遊歩道上に数日前のものかという糞を確認する。付近を探索するハンターが「ねぐらがあったぞー」と声を上げる。行ってみると、ふかふかの林床がそこだけ固く締まっていて、「長期滞在」なのかと思わせる。
▼4日後に同林内で行われたウッディーズの活動は「最大限の警戒」のもとに行われた。時あたかも、札幌南区の公園や住宅地近くにヒグマが出没し、1頭が射殺されたと報じられた。
▼森との共存、森の生き物との共生は人間が生き残るために不可避の条件だが、ヒグマとどう折り合いを付けるかの学びは、安全知識・安全技術の取得と並び、我々には重要な課題だ。
編集後記
「森林人歌壇」の一首に詠まれているヤマセミ。渓流の木の枝などから一直線にダイビングして餌の魚をキャッチする画像をよく目にする。単独で生活する「孤高の鳥」をイメージしていたので、「空にみだれ」飛ぶことがあるのだろうか…と気になりだした。
「疑い深いヤツだ」と思われたくないので、作者ご本人にも野鳥に詳しい会員諸氏にも聞くのを思いとどまり、こっそり「野鳥の会」に伺って以下の回答をいただいた。
「繁殖期に♂・メスが川の水面を左右に追いかけ合う姿は見られます。また、縄張りに近づく♂を追いかけて飛び交う等の光景もありです。いずれも2~3羽で水面に近い位置を飛びます。」
ご教示いただいた野鳥の会・S田さんに感謝申し上げる。作者の千賀さん、「見くびったわね」と柳眉を逆立てないでくだされ(詫)