Vol.84 2013.8.1
厳しい真夏の作業 猛暑と折り合いをつけながら
‘このクソ暑いのに、何を好んで汗水垂らすのか?’ と、〈まっとうな〉人は不思議がるだろう。なのに、彼らは暑気でムッとする森へ徒党を組んで入っていく。「暑い、暑い」とぼやきながら、どこか満ち足りた表情を浮かべて…。
でもね、みんな、もう若くないんだから、張り切りすぎずに体長を気遣ってダラダラとやったらイイよ。木立の陰は涼しい。いつだって逃げ込める。寄り添えば誰も拒まず青葉傘 岡本瑞穂 (樹木医)
(7月21日「NHK俳句」から。「青葉傘」は「大夏木」がベーターでは、との選者のアドバイスあり。)
6月~7月のウッディーズは、9回にわたり延べ106人が活動に参加した。そのうちの、3つのフィールドについて概要を紹介する。
山田山林(当別町弁華別 25ヘクタール)
面白みと意欲が増して
祖父・父と引き継いで当主の山田さんは三代目。先代は平成13年に指導林家となった直後に亡くなる。
跡は継いだものの、勤務(農業共済組合)に集中していて山林に足を踏み入れることはなかった。だが、18号台風で事情は一変し、おびただしい風倒木の処理を迫られ、否応なしに山林と向き合わなければならなくなる。この時の処理作業に要した経費を売り上げで賄えず、林業の厳しさを実感する。
だが、この経験を通じて、父祖の遺志を継ぎたい…と思い始める。まだ、何をどうやるべきか手探り状態だが、昨年から、森林ボランティア・シラカンバとウッディーズの支援を得て手入れを始めた。仲間との作業を経験しているうちに面白味も出てきたという。しっかり学ぼう、という意欲も…。
2トンブルドーザーとユンボを駆使して本格的な林業へと構える。
吉村山林(南区北ノ沢 1ヘクタール)
森がスッキリしてきた…
冷たいスイカ(7月6日)
大工だった、夫人の父君が老後の楽しみにと取得した山林。やはり、18号台風で壊滅的な被害を受けた。アクセス道路に折り重なる風倒木を踏み越え、跳び越えて山に辿り着いてみたら、大切に育ててきたカラ松などが根こそぎ倒れている。「アァ、もうダメだ」と、目の前が暗くなったことを今でも覚えているという。
その風倒木の処理が縁でウッディーズに加入することにもなった。
自宅のある北区から1時間ほどをかけて通うが、自分たちだけではなかなか大変。年に1~2回の除伐と笹刈り、歩道づくりを支援してくれるウッディーズと、刈払機を持って笹刈りに来てくれる友人に感謝する。目に見えて気持ちの良い森になっていく…、その変わり様を楽しんでいる。
どろ亀さん記念・「当別22世紀の森」(当別町青山 11.3ヘクタール)
科学的森づくりのお手本
22世紀の森で特筆されるべきは、科学性に裏打ちされた揺るぎない森づくり、ということだろう。植栽地の特性の科学的把握、それに基づく多様な植栽樹種と植栽手法、生長過程の精緻を極めた観察、状況に応じた適切な処置など、いろいろな面で森づくりの範を垂れるという趣である。
昨年までの10年間、30種を超える約1万本の植林、年2回の下刈り、ネズミ・シカによる食害や積雪への徹底した備え、整枝・補植など、森づくり全般に十全な目配りを尽くして、これぞ森づくりのお手本!と思わせる。
ウッディーズとしては及ばずながらのお手伝いが誇らしく思えてくる。どんな森が出現するのか、思うだけでも胸が膨らむ。22世紀を待たず、年々の生長が楽しみだ。
会員の動向
生き方が問われる…、エネルギー問題
会員の大竹さんが7月3日、北海道新エネルギー普及促進協会の「自然エネルギー実践講座2013」で「マンショへのペレットストーブ導入」と題して講演した。わかりやすい資料を用いた、要領の良い説明ぶりだった。
講座修了後、講座に参加したウッディーズメンバーで飲み会。山形・協会理事長(北大・工学博士)にも加わっていただき、木質エネルギーの優位性、利用のあり方について論が交わされる。
太陽光発電は、地元に雇用を生まず、借地代を得るだけで利益は持ち去られる。地元のエネルギーは地元でまかなうのが本来で、それができないのはどこか植民地的ではないか。エネルギー問題とどう向き合うかで生き方が問われる…などなど、森づくりと地続きにある重要な課題に気づかされた。
自然の恩恵なしには生きられない!
会員の春日さんは北海道ボランティア・レンジャー協議会の会長である。
「広報紙ほっかいどう」7月号で、「自然の営みに目を向けると、多くの学びを与えてくれます。」と、同協議会が催す「自然観察会」への参加を訴え、次の様に述べている。
「観察会では、単に植物名だけでなく、そこに生きる植物の生き抜くたくましさや巧みさ、賢さなど自然の営みのすばらしさを知ってもらいます。どんなに文明が発展しても、人間は自然の恩恵なしには生きられません。観察会は、私たちの自然との向き合い方を学ぶ場でもあります。」
キノコ食べたい!知りたい!
高川 勝
昨年、仲間が笹を刈ってくれた跡にボリボリが大発生した。野生キノコを発生させるにはそのための条件整備が必要だと聞いていたので、アァ、笹刈りをしたご褒美だったのかと得心した。驚喜して採り漁ったボリボリ(ナラタケ)は乾燥貯蔵して冬が過ぎるまで賞味した。今年も「二匹目のドジョウ」を狙っているが、先ず、発生環境をきちんと理解し、整備しようと思う。それと、採り頃を逸しないようにマメに足を運ばなければ…。
キノコとは摩訶不思議なものだ。光合成で養分を作り出したりはしない。つまり、植物ではなく、ましてや動物でもない生き物。地中に秘めた大きな謎のほんの片鱗を地上に明かしては跡形もなく消える。
食欲と知識欲を2つながら刺激するもの─キノコ。
思い出した山小屋(*)でのこと
本間 善久
*タイトルにある「山小屋」は、小樽商大短大部山岳部OB会所有の「春香小屋」(小樽市春香町)である。
山小屋での些細な一件を思い出した。5年も前の10月下旬のことで、残っている写真ファイルから薄れかかった記憶を呼び戻している。
夕方、辺りを散歩して、あわよくば茸でもと企んだが、歩き出して間もなく「クマ出没速報」の立て看板を見て気勢をそがれた。ただ、まさか昼間に出ることはないだろうと、及び腰ながら散歩は続けた。晩秋の景観は美しく、山道を横切る流れは清い。早速、苔むした朽ち木にエノキタケやムキタケが見つかった。この時期にも茸は多い。道脇の法面には、ツチグリが顔を出していた。晴雨のバロメーターといわれている。
夕暮れになってはクマも気になる。茸散策は早々に切り上げて山小屋に戻った。夕食の小宴を楽しみ、いつの間にかぐっすり眠ってしまった。夜中の2時頃だったろうか、酔い覚めの水を飲んでから、玄関先のバルコニーにでてみる。冷気が漂い、木々の梢を透かして星空がきらきらと輝いていた。人工光のない山小屋ならではの絶景である。
・・・と、闇の草むらに何か光るものが見えたように思った。ほんの一瞬であったかも知れない。この時期に蛍ではないだろうと思いながらも、気にはなった。ただ、闇に潜むクマの気配があったわけではないが、寒さを感じて長居はしなかったのでそのことはそれっきりになってしまった。
翌朝、玄関前の草むらにシラカバの丸太が沢山転がっているのが見えた。樹皮は残っていたが材はぼろぼろに朽ちていて、黒い針金のようなナラタケの根状菌糸束が沢山からみついている。最盛期には、ボリボリが沢山出たに違いない。菌糸束は暗闇で光ると云われているので、あのことはこれだったのかも知れないと思った。
確かめるために、菌糸束が縦横に走る朽ちた木片を失敬して持ち帰った。しかし、残念ながら暗闇でも光らなかったのである。色々と試してみたが、駄目であった。菌糸束が古かったのかも知れない。ところが、朽ちた木片が光ったのである。あれはこれだったのかも知れないと、対象をころころとすり替えてつじつまを合わせようとしたが、ことの真相は依然としてすっきりしなかった。
星空と闇と不思議な光と、些細な一件ではあったが消去法で謎解きみたいに探ってみたが・・・。
BはCから剥がした木片、露光10分
本間善久氏プロフィール
1945年生まれ。農水省研究職員として国内外で土壌微生物・植物病理の研究を行う。退職後、『茸の森の私空間』『右巻きの朝顔』『アルゼンチン、身近なニョモのきざし』などを著す。
「藻岩山きのこ観察会」に入る
自生キノコに出会う。見た目には食べられそうだが、毒きのこかも知れない。知ったかぶりをして、毒きのこを食べさせては大変なので、「木の親は知っているが木の子(きのこ)についてはよく知らない」と言っている。
木の親の方は、図鑑で名前を知ることはほぼ可能だが、木の子の方は数が多すぎて、名前の確定は難しい。きのこの図鑑(『北海道のキノコ』五十嵐恒夫著)では800種が載り、木の図鑑(『北海道樹木図鑑』佐藤孝夫著)では545種が載っている。
つまり、きのこの方が樹木の約50%も多い。だから、きのこは図鑑だけで名を知ることは大変難しい。さらに、きのこの新種はまだ次々と発見されているということなので、鑑別はさらに難しくなりそうだ。
以前、となりの石狩市の森林ボランティア「クマゲラ」にも所属していたことがあった。そのとき当別の山で採ってきたきのこを、「藻岩山きのこ観察会」のメンバーに名前を教えてもらったことがあった。広い屋内運動場にブルーシートを敷いてきのこを広げ、数人のメンバーでほぼ全部の名前を言い当てた。そのとき一番博識だったのは、大学の先生らしかった。
そんなことがあってから暫くして、「クマゲラ」を退会してしまった。きのこ観察会に入会希望を持っていたが、あれこれ多方面に手を出しすぎていたので遠慮していた。しかし、今年に入ってから何か新しいことを始めたいと考え思い切って「藻岩山きのこ観察会」に入会した。この会の理事長は女性で、会員数約200名のトップである。因みにウッディーズの会員は約70名であるからその3倍ほどの会員である。人数が
多すぎるので、全体で行動するのが難しく、今年から5班に分けて行動することになった。なおこの会は、きのこの観察ばかりでなく、野生草花の観察、植樹、下刈り作業、小中学生へのきのこ教育など多彩な活動を行っている。
6月19日に初めて会の行事「きのこ写真撮影会」に参加し、藻岩山のきのこの観察と写真撮影を行ってきた。まだきのこの数は少なかったが、きのこの増える秋が楽しみである。
(文・中野 常明)
林間独語
▼ひいきの日ハムが大谷君の活躍で大いに湧くものの最下位に低迷し、気分が冴えないこの夏ではある。だが、憂鬱のホントの素(もと)は、これからの日本、どうなるのだろうという恐れを抱かせる過日の参議院選挙の結果。選挙制度のからくりと本音を隠す選挙戦術で安定多数を得た政権が時機到来とばかりに牙?を?いてくるだろう、そんなおぞましい予感がするからだ。
ありがたいことに、森林に入り草木に向き合っていると、一時(いっとき)そんな憂鬱な気分を忘れられる。5月の観察会で植物の不思議に触れたことが大きい。俄然、学習意欲が湧いてきた。勢いづいて、山に遊びに来た保育園児に草や木の話をした。その子どもたち、テレビ番組のために来園した尾木ママに「葉の裏側が白いのがヨモギ。トリカブトと間違えないで」とか「ウルシに触ると手が腐るよ」とか聞いたことを右から左。オー、生半可なことは教えられん!しっかり勉強しなくては。
そんなわけで、「この草、何だっけ」と、図鑑と首っ引きとなる。次々にやってくる虫にも、お前は誰だ?とルーペを向ける。お陰で山の作業は遅滞するばかり。仕事と学習の二刀流は大変だな~と気分は大谷翔平である。