Vol.50 2009.1.1
新たな飛躍を期す発足八年目・2009年度の活動指針(案)
★間伐など森林育成作業を重視しながらも、会員の趣味や志向を踏まえて活動の幅を拡げる。
★山林所有会員への支援を強化するとともに、新たな活動フィールドを求める。
★森林・環境関係分野の個人・団体と交流し、学び、自らの能力や見識を高める。
★林業技術・安全意識の向上を図るために研修体制を整備する。
★模範林等を視察し、自らの森づくりにおける示唆・指針を得る。
★これらの課題を追求することを通じて、「間伐ボランティア札幌ウッディーズ」を、社会貢献を果たせる組織として、魅力溢れる人間集団として、成長・発展させる。
(12月22日忘年会における会長挨拶から。文責・編集者)
植えた、刈った、伐った
- 08年活動実績(講習会・イベント等を除く)-
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-2008年の活動納め-
ワオーの森で樹名板づくりなど
12月7日(日)参加者19人
以下の作業を実施した。
(1) 植林した苗木に野鼠対策として建築紙を巻き付ける。ネズミが、建築紙に染みこんでいるタールを忌避して寄りつかないとのこと。成果が楽しみ。
(2) 展望台新設のために樹木を伐採する。眼下に桂岡町市街と石狩湾を望み、対岸に増毛連峰を遠望する視界が開けた。
(3) 樹名板をつくる(左写真)。直径約10㎝の丸太をスライド丸ノコでスライスして、100枚ほど作成。これに樹種名を書き込み、林内の遊歩道沿いに取付けるが、裏返しにぶら下げ、樹種名を当ててもらう趣向だ。
(4) 林内の自然観察。樹名板をつける木の和名を特定する。
仲間の和が心地よく… 小樽・春香小屋で忘年会
年配者集団に定番の、病気や孫自慢が話題にならない。誰かが言ったように「いつまでも現 役でいるつもりで夢ばかり語っ ている」。それで楽しいのかも。
一夜を語りつくし、明けても語り継ぎ、 また「夢」が膨らんだ。
植樹せしほとりの草を刈りてゆく雨のなごりの雫散らして
原 公子
庭に立つ二本の大木いずれかを切れと促され今年も倒せず
中野常明
怒るなと諫め合いつつ時々は禁を破りて介護は続く
中野常明
地響きのごとき音をし先駆けに麓より風吹きあげてくる
高橋千賀
吹きおろす尾根よりの風足もとを駈けぬくる時落葉さわがし
高橋千賀
木を友に
~中野 常明氏によるコラム~
19【ハリギリ】
ハリギリは、別名センノキ(栓の木)といいウコギ科、ハリギリ属。山地に生える落葉高木で、高さ25m、直径1m以上にもなる。小枝には沢山の棘があり葉の出ない早春にはタランボと見違えることがある。幹には、粗い網み目のような割れ目が出来る。ハリギリは漢字では「針桐」で、針のような棘のある桐という意味である。木質や葉の形が桐と似ている所から来ている。
土地の肥えたところで育つので、開拓時代には土地選びの指標になった。葉は天狗の団扇形で、秋には黄葉し遠くから見るとイタヤカエデと間違うことがある。幼木はヤツデによく似ているが、ヤツデにはない鋭い棘があるのですぐ見分けがつく。七月には枝先に黄緑色の小さな花を付け、10月には実が熟して黒くなる。巨木になるので街路樹として植えられることは少ないが、公園樹として植えられている。道庁前庭や北大植物園では巨木が見られる。
アイヌ語では、アユシニといい、棘が沢山ある木という意味である。この木でアイヌは丸木船、木鉢、臼などを作った。明治の末から下駄材として大阪方面に大量移出されたが、大正十年をピークとして次第に量が減った。下駄からゴム靴に変わったことや下駄以外の建築、家具、車輌材などにも使われ始めたのも原因である。
木材としてのハリギリは、オニセンとヌカセンの二種に分けられている。オニセンは材の色が白く、年輪の幅が広く、石センと呼ばれるほど堅くて重い。材は変形しやすく細工物には向かず枕木くらいが主な用途であった。ヌカセンは年輪の幅が狭く、軟らかく、カンナをかけると桐に似た艶がでる。木目が綺麗で明るく家具材として使われた。山の人達は、この二種を木肌で見分けている。樹皮が黒ずんだ褐色で、粗く深い裂け目のあるのがオニセンで、比較的に樹皮が滑らかのがヌカセンだという。
春先に枝の先に付く芽は、タランボの芽とそっくりで、枝にはタランボと同じ棘もある。子供の頃タランボの大木を見つけたと信じ棘に刺されながら手かご一杯に芽を摘んで、自慢げに帰宅した。ところが「それはセンノキの芽だ。食べられないから捨てて来なさい。」と、お袋に言われがっくりした思い出がある。しかし、最近山菜の本を見るとセンノキの芽もタランボの芽と同じように食べられると書いてある。一度試してみたいと思っている。
朝日新聞社 「北方植物園」
辻井達一「日本の樹木」(中公新書)
佐藤孝夫「新版北海道樹木図鑑」 (亜璃西社)
(コラム「木を友に」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)
山中林思
~東前 寛治氏によるコラム~
9【森の幼稚園】
これまで「森に入る心」から、人と森との関わり方について歴史をさかのぼる形で、入会権を中心に述べてきた。今日では、日本の国土の66%が森林原野で、そのうち人工林が43%、林業家が251万戸、その75%が5㌶未満、林業労働者は6万人に過ぎず、その老齢化が深く進行している。 このような山林の実際の状況はどうだろうか。森林の保全と利用には多くの問題が含まれている。戦前・戦中そして終戦直後の薪炭利用と住宅建設などで大量の伐採と植林が進んだ。しかし、その後の手入れの不足により多くの山林を荒廃させてしまった。そのことが自然災害を多発させ、漁業資源の減少にまで及んでいる。1000万㌶をこえる人工林が造成されているものの、安い輸入材に追いやられて、国産材の需要は極めて少ない。そのため人工林の間伐や手入れは不十分となり、農山村の過疎化の進行に拍車を加えている。
一方、現今の地球環境問題のクローズアップやエコブームとあいまって、森林に関する文献が数多く出版されている。ある書店では「森林・環境」と銘打ってコーナーを設けているほどだ。ついては「木育」なる言葉も出てくるなど、森林について触れた書籍の発行量も増加してきた。それだけ各地でさまざまな取り組みがなされてきたということであろう。これからはそんな実践例や森のために活躍してきた人の動きを取り上げていくことにしよう。いわば今日における人と森との関わり方である。
ワオーの森で遊ぶ子どもたち
まず紹介するのは、1960年代デンマークで一人のお母さんの活動から始まった「森の幼稚園」である。園児が野外で過ごす生活を中心にした幼児教育で、北欧をはじめドイツなどヨーロッパを中心に広がっていった。日本でも神奈川県鎌倉市の「青空自主保育なかよし会」などが知られている。その活動とは、林道を 歩き、崖を滑り降りて よじ登ったり、水たまりや用水で水遊び、虫つかみ、草を噛む、草木の実を取る等々。ドイツでの比較研究によれば発語が早い、発語量が多い、語彙が豊富など、園児のコミュニケーション能力の向上が見られるという。もちろん体力・運動力の向上は言うまでもないが、森林内での遊びが子どもにとって偶発的な状況の連続であり、子ども同士での働きかけの必要性が増すことが、大きな要因と言えるだろう。森林内での子どもの気持ちの開放、その機会の多さ、読み聞かせと遊びの組み合わせなど集中と拡散の切り替えも大きいという。このような森の効能は、ウッデイーズの会員なら誰しも予想がつくことであろうと思う。実際の義務教育でも教育課程の中に取り入れることができたら、どんなにかすばらしい実践が、というより生き生きとした人間教育ができるだろうと思うのは決して私だけではあるまい。
参考文献
浜田久美子「森の力―育む、癒す、地域をつくる」 岩波新書
宮崎勇・本庄真「日本経済図説」第三版 岩波新書
(コラム「山中林思」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)
仲間のプロフィール:佐藤 くに子さん
出身地は自然…
20年来、美容カウンセラーとして接客に忙しい日々を過ごしてきたが、最近、骨格や筋肉のバランスを整えるピラティスなるエクササイズを始めた。自分磨きも怠りなく、心と体をみつめよう、という志とお見受けする。
人生の節目を迎えているような気がして、‘何かを始めたい’と思っていたとき、ウッディーズと出会った。山深い日高(旧門別町)の生まれ育ちだからか、「もともと人間は自然の産物、自然になじむのが本来」という信条も正に自然体。山に入ると、緑が体に染みこんでくるように感じて、心が静まる。作業も楽しい。‘でも、遊んでるだけ、何の役にも立っていないことは自覚してる’とご謙遜。
入会のころ、ヘルメット姿を披露したら、ご主人や二人の娘さんに大笑いされ、「どこの地下鉄工事へ?」と冷やかされたというが、キャンプを楽しみ、自然に親しんできた佐藤家のこと、お嬢さんたちも森づくりに貢献するお母さんを誇りに思っているのでは。ヘルメットが板に付いてきたくに子さん、よく笑う。「大口笑い、私のキャラです」と、また笑う。
余録
年の瀬に職を奪われ住むところを追われた人々が正月を寒風に震えていないだろうか。昨年10月から12月までに解雇された非正規労働者は3万4千人、今年3月には8万5千人に上るという(厚労省発表)
日本経団連・御手洗会長(キヤノン会長)は「苦渋の選択としての雇用調整」と言うが、1万500人の人員削減を計画しているトヨタ系6社の場合、内部留保(17・4兆円)の0・2%(300億円)を取り崩すだけで計画を撤回できる。「苦渋の選択」とは、苦しみ抜いた末のやむにやまれぬ意思決定をいう。現在進行中の首切りは、自分たちが散々に吸いまくった甘い汁は一滴も吐き出さず、いきなり労働者に苦汁をなめさせる、言うなら、労働者にとっての「苦汁の選択」だろう
言葉の意味を取り違える財界トップ。対するに漢字を読み間違える政界トップは票欲しさに2兆円もの大金をばらまく。血税の活きた使い方、あるんじゃねえの? 林野庁の施策に「緑の雇用担い手対策事業」がある。予算規模は67億円(H20年度)だが、H15~18年度で約4千人が研修を経て林業に就業している。仮に「給付金」の10分の1を「緑の雇用…」に充てたら、単純計算で3万人の林業就業者を創出できる(注・H17年林業就業者数5万人)。寒空のもとで途方に暮れている人々が生き生きと働き、山を甦らせてくれたら…。 (髙)