森林人通信

2020年 ≪冬号≫ Vol.116  2021.03

人と自然が繋がる森づくり活動を
ー創立20周年記念・2021年度総会ー

 3月13日、ウッディーズ創立20周年記念となる20回総会が行われました。
議長に選出された東前会員の議事進行のもと、2020年度活動経過・決算及び2021年度活動方針・予算が質疑応答を経てそれぞれ承認・採択されました。

【議事などの概要】

●過年度の活動について
・20年度の活動はコロナ禍のもと、計画の一部中止を含め少なからぬ制約を受けたが、様々な対策を講じたうえで、例年のレベルに近い活動を維持した。
・新たな活動フィールドとして新篠津村防風林が加わり、間伐作業を実施した。

●新年度の活動指針について
・人と自然を繋げる里山づくりを旨として、
① 地域の住民や保育園児に親しまれる森づくり
②会員の薪材調達に資するという視点から、高川山林(小樽市桂岡町)における活動の比重を高める。
・従来から安全に配慮した施業を追求してきたが、引き続き「事故発生件数ゼロ」を目ざす。そのため、
①20年度に作成したリーフレット『ここが危険! 山の作業』を活用して安全意識の醸成に役立てる。
②「ヒヤリ・ハット」の具体例をブログに掲載するなど、情報の共有を図る。
・チェーンソー・刈払機の取扱講習、救命救急講習を企画し会員の参加を促す。

●新役員体制について
冨士本会長以下7名の役員が選出されました。退任される北山さん・高橋さんには、長い間のご苦労に感謝し、新任の村上さん・松田さんのご健闘に期待します。

20周年記念講演会

ウッディーズ創立20周年記念として、北海道森林整備公社・ウッディーズ会員の笠倉さんと、小樽市銭函在住の松本様ご両名に講演していただきました。

高川山林森林調査ワーキングの振り返り
 ~今後の施業に向けて~  会員:笠倉 信暁氏

 当会では平成27年度から28年にかけて森林調査WGを実施しました。その結果を見える化することで、ゾーン毎の管理レベルが明確になり、施業方針についても分かりやすく明文化、スケジュール化できました。(WGの取り組みの詳細については当会HP「当会について」→「山林調査」で検索できます)
 今後の課題については、平成28年の施業方針策定後、しばらく時間が経過していることから、現時点で会員内のコンセンサスが得られているか、時代の要請にあったものか、改めて見直して、修正すべきところは修正すること。伐採計画についても、標準地調査を再度行ない、算出した成長量等を参考にしながら、選木のシミュレーションを行なう必要があります。

 ウッディーズとしての活動方針も以前と変わってきており、それに伴う課題もあります。高川山林の活動拠点化によって、作業範囲が広がっていくスピードが増し、いつかのタイミングでは道具の運搬、集材、搬出を行うための路網を新たに作設する必要が出てくるでしょう。また、各種作業には人力の限界があるので、当会の活動スケールに見合った、最小限の機械力の導入も検討が必要になるでしょう。もし仮に人力で搬出を行なうにしても固雪を利用するなど、作業時期の見直しの必要でしょう。大事なことは参加者が無理なく安全に、かつ、環境負荷の少ないコンパクトな手法で行なわれることです。
 最後に、これらハード面だけではなく、活動メニューの多角化など、ソフト面での検討と、先に挙げた施業方針の見直し等を併せ、WGの場が再び必要なタイミングではないか提案させていただきます。今後、こうした議論が会員内で活発に行われることを期待しています。

天然力を生かした美しい山づくりへの挑戦
 松本啓吾(小樽市銭函在住)

 自らが関わってきた施業事例(馬搬、近自然森づくり、自伐型林業)をもとに、天然力を生かした美しい山づくり提案したい。

 見た目がきれいなものはそれ以外の機能も優れているという「機能美」という考え方がある。吉野林業や自伐林家山林で、大径木と多種多様な動植物が併存する美しい山(森)を知った。

 美しい山(森)とは、木材生産能力を有し、かつ経済林でもある。それは多種多様な生物、複雑な階層構造(高木層、低木層、草本層など)をもち、土の露出が最低限であること。100年続く、ずーっとそこにある森林。山に来た人が気持ちいい、嬉しいと感じる山林である。

*『最も美しい森林は、また最も収穫多き森林である』(アルフレート・メーラー著「恒続林思想」)

 天然力とは土壌、川、湧水雨、雪、湿度斜面方位斜面位置標高日光などの諸要素からなる。

 天然力を生かす=土地にあった木を育てる→適地適木。施業による改変を最小限にする。天然力を生かすことから生まれる効果として、土壌・水系など自然環境の保全、災害防止、生物多様性の促進、育林コストの軽減などが期待できる。

 その実践例として、馬搬、近自然森づくり、自伐型林業などがある。
馬搬は伐った木材の搬出を機械ではなく馬で行うことで、・土壌を保護する・不必要に林道をつけない・低コストである・ササを食べてくれる・いやされる、などの利点がある。反面、・馬を操る技術や馬の世話が必要・搬出量が少なく大面積の施業を望めない・大きく儲からないという側面がある。これをデメリットとみるか。

近自然森づくりはスイス、ドイツなどを発祥とし、・大面積の皆伐をしない・天然更新を基本とし植林しない・立地にあった多様な樹種を仕立てる・林業で利益を出す経済林などを旨とする。

「林業で利益を出す」ためには、元本を崩さずに利子で食べる・樹齢ではなく径級で管理する・強みで勝負し弱みで勝負しない・手札を多く持ち、いつの時代にも対応する。

 選木・伐採がポイントで、将来性のある優秀な木(育成木)を選ぶ・育成木が生長しやすいように伐採する木を選ぶ(「えこひいき」) ・育成木が見つからない場所は無理に選木、伐採せず(一時的に)ほったらかす。

自伐型林業(≒小規模林業)は・小型機械(3~5t) ・強固な小規模作業道(幅員2~2.5m)・低密度多間伐施業(10~15%/5~10年) ・非皆伐施業などを基本とする。特徴は初期投資が小さく、複業型とも言え、ハードルが今までの林業と比べると低い。

「人工林皆伐再造林施業」からなぜ「天然力をいかした山づくり」に着目するようになったか?
「人工林皆伐再造林施業」は、儲からない、美しくない、量では勝負できない。じゃあどうしよう? 原点回帰である。
「自分が好きな、きれいな山をつくる」「自分が係わる森林が、生産量以外にどういうところで林業の役に立てるか」
そこから、先進的な取り組みを導入し、モデル化、一般化を図ることを目ざす。

 

フォレスター(山守)として

「理念と安全(装備、危険予知)をベースに、観察と思考を言語化し知識として蓄積する」というサイクルでレベルアップを図るという意識を大切にしたい。

 

まとめ

・環境への負荷が低い低密度間伐、小規模な山づくりによる経済林を仕立てることにより、環境維持と経済収入が両立する天然力を生かした持続的な山林管理が求められている。 「山づくりは長期投資」と心得る。

会長2年目、よろしくお願いいたします。  会長 冨士本 充佐

 昨年より会長を務めさせていただいております。1973年7月生まれの47歳、会員歴12年です。入会2年目より役員を仰せつかり、安全・施業担当として微力ながら関わらせていただいております。現在も会長職と兼任で務めさせていただいておりますが、そろそろ次の方へバトンタッチしたい思いもありますので、興味と意欲のある方はぜひ役員に立候補していただきたいものです。
 年齢的には、ウッディーズの中ではまだまだ若手?の部類に入る私ですので諸先輩方にはさぞ物足りない、頼りがいの無い存在だと思います。「役職は人を育てる」とも言いますので、少々お時間をいただき見守っていただけますようお願いを申し上げます。

コロナ禍と故郷と総会   副会長 佐藤 友子

 福島に実家のある私は、コロナ禍のなか、もう1年以上も親をほったらかしです。日本中にそんな人は沢山いるのでしょうが、今回は「母親、容態急変!」という連絡があって、総会を目前にして止む無く帰省しました。
 お陰様で母はなんとか持ち直しましたが、滞在中はまさしく介護に明け暮れた日々でした。それでも首から上は元気で、立派な食欲もあり、泣き笑いの介護というところでした。総会直前の帰省でしたので、自分の準備ミスはなかっただろうか(あったんです(^-^;))、議事はスムーズに運んでるだろうかなど、あれこれと気を揉みながら、母の脚も揉みながらの日々でした。帰省介護はただでさえ色々あるのに、それにコロナなど加わったら、日本中みんなコロっちゃいます”(-“”-)”。

どーか、早く逝っちゃってくれー、コロナ!!

入会して1年、いま想うこと   幹事 村上 雅文

 ウッディーズに入会したいと思ったきっかけは、二つあります。
 一つ目は、小さい頃から自然が好きで農業高校(森林科学課)に入学し、卒業後は林業に関わる仕事をしているのですが、普段の仕事は山林の調査や検査で自分自身で伐採等の作業は行うことはなく、それで、自分自身の手で森林環境整備に役立てる間伐などの活動をしたい、そして、森林ボランティア活動を通して森林整備の知識やチェーンソー・刈り払い機の操作技術を学びたいと思っていたことです。
 二つ目は、ウッディーズのHPに出会い、今までの活動の写真や記録を見てみると魅力的で楽しそうだったので、体験を申し込み、いざ体験をしてみると大変でしたが本当に楽しくて、会員の皆さんの人柄が良く、今後も一緒に活動をしていきたいと思ったことです。
 入会後の活動では間伐や風倒木の処理、下刈り、山菜採りなど様々な活動を行い、活動を通して森林・樹木に関する知識や機械の操作に関してたくさんのことを学ばせていただきました。
 日々の活動では、天気の良い日に自然豊かな森の中でいい汗をかき、緑の中で美味しいご飯を食べ、作業を振り返り少し綺麗になった森を見る。達成感と充実感を満喫する日々を過ごすことができました。「ウッディーズに入会して本当によかった!」という思いでいっぱいです。これからも活動に参加して熟練の方々のように適確に伐倒ができるように頑張っていきたいです。
 4月からは役員として市町村との調整役を担うことになりました。山主の意向をしっかり汲み取り、より良い山林となるように調整をしていきますのでよろしくお願いいたします。

「森」 そこは我が子の育ちの場   会員  南部 久子

 我が家には3人の子供がいます。上はJK、下はウッディーズのテツ、真ん中は少し個性的なタカです。タカは春から中学3年生になります。しかし、去年学校を辞めてしまいました。(義務教育課程で辞めるも何もないのですが)
 代わりに、高川山林が彼の学校となりました。高川さんが彼の先生であり、師匠となりました。2019年の夏から通い、最初は剪定鋏でアカシアの枝切り、アカエゾマツの植林、そして、薪割りは今や職人技(と、師匠は持ち上げます)。そして、本人の強い希望で、時折はチェーンソーで伐木させてもらえる程になりしました。伐木する木を相手に、どの方向に受け口を作り、どの高さで追い口を入れるか考えている息子は何とも誇らしいです。伐木後は、ツルの状態を見ながら師匠と反省会もします。
 小学校から不登校で、義務教育課程はほぼ身についていないタカですが、高川山林に通うにつれ、無気力だった彼に興味や好奇心が湧き始めました。作業手順を打ち合わせたり、チェーンソーの取扱教本を読むなど、山での経験が彼の自信となり、他者と交流を持つこと、学問(文字)に興味を持つことに繋がってきました。
 高川山林には、高川さんの他、ウッディーズの宮田さん、今田さん、そして時々西田さんが見えられて、息子を気遣い、一緒に作業をしてくれます。今田さんが一斗缶でミニストーブを作れば、早速自宅で真似をして作ります。宮田さんがチェーンソーで棚を作れば、彼もチェーンソーでサイドテーブルを作ります。西田さんが丁寧にチェーンソーの目立てをすれば、じっと観察しています。
 他の現場で(余市の果樹園にも通います)、道具が無い時や物が足りない時に「高川さんならこうする」と言いながら、今ある物でどうにか乗り切ろうと工夫します。森には学校に行って椅子に座っているだけでは身に付かなかった貴重な学びがありました。
 長い間、笑わうことがなかったタカが回復し、仲間に話しかけるのを見て驚愕し、呆然とします。森はなんと懐が深いのか。私たち親子はどれほど幸運だったのか。息子を通して新しい世界に、ウッディーズに出会えたことに感謝です。そして、皆さんに感謝です。

ご報告:ホームページの「スマホ対応」が完了

広報担当の宮田です。
ウッディーズのホームページは、私が関わり立ち上げてから、約10年の月日が流れました。立ち上げ当時は今のように「スマホが当たり前」の時代ではありませんでした。
昨今ホームページはパソコンから見る人よりもスマホから見る人の方が多くなってきました。そこで以前より要望があった「ホームページのスマホ対応」に取り組み、先月公開しました。(パソコンで見ている人は変化ありません)
これでウッディーズのホームページはスマホで見ても、文字も適度に大きく見えて、SEO(Googleなどの検索エンジン側からの評価基準)的にも高評価されるようになりました。みなさん、お気軽にスマホからウッディーズのHPをご覧ください! 見やすくなってますよ!

森の本棚

土 地球最後のナゾ

藤井 一至 著 (光文社新書)

土とは一体何なのか?
 森林ボランティアである我々は、当然のことながら樹木に親しみを感じている。そして、樹は日光と水と、そして土に育まれる、という当たり前の知識もある。しかし、そこから先の「謎解き」はなかなか難しい。特に、樹がその根を据える土については無関心と言ってもよく、土の成り立ちとその機能は?と問われれば、答えに窮するのではないか。本書は、土は「ナゾ」である!と気付かせてくれ、そのナゾを懇切に解き明かしてくれる一冊である。
 先ず、地球上には面積の多い順に、未熟土、砂漠土、若手土壌、粘土集積土壌、永久凍土など12種類の土がある。ちなみに、日本の国土の31%程度に分布する黒ぼく土は国外ではほとんど見られないという。しかし、この黒ぼく土、地球温暖化に役立ち、土壌種類ごとの人口密度ではナンバーワンである。(図参照)

 さて、土の生成過程である。火山噴火により地上に花崗岩が露出し、火山灰が積もる。「地球の岩石は水と酸素、そして生物の働きによって分解する。風化という。こうして粘土の一つが生まれ、土の一部となる。」、「ここに植物が育ち、やがてその遺体から生まれた腐植が混ざることにより土壌ができる。混ぜ込むのは、ミミズやアリ、ヤスデ、ダンゴムシの仕事だ。」腐植は「土壌中で動植物が不完全に分解してできる黒褐色の有機質」と定義される。二番目の図は、地上部から地中へと掘り進むと①→②→③→④の順に現れる土の構造である。

「腐植と粘土は一体となって水を保持し、植物へ、そして下流の私たちへと少しずつ水を供給してくれている。森が緑のダムと呼ばれる所以である」。そこに当たり前のように黒い土があることの有り難みを知って欲しい、と訴える。
(会員 髙川 勝)