森林人通信

Vol.102  2016.10.1

爽やかな森にひびく子どもたちの歓声と歌声

 5月7日、高川山林『ワオーの森』で森開きが行われました。関係者や「かもめ保育園」の子どもたちの熱意が雨の予報を吹き飛ばし、ひとりひとりが元気いっぱいに楽しんだ一日となりました。

 以下に参加者の感想などを掲載します。詳しい内容はインターネットの活動記録ブログをご覧ください。東前さんが詳細なレポートを書いてくださいました。(紙で読みたいかたはお電話でご相談ください。)
 高川山林が一段落した後は、翌週から2週続けて、北山山林でアカエゾマツの枝打ちを行うなど、ウッディーズの活動は精力的に進んでいます。

明るい森にしてもらって (涙)

 5月7日、大人と子ども総勢100人近い人々の中にいて、十数年前の、足を踏み入れることも出来なかった薄暗い高川山林の佇まいを脳裏に浮かべていた。そして、整備を後押ししてくれたウッディーズに、「よくぞここまで…」と感謝の思いを新たにした。これは高川山林・ワオーの森の「メインユーザー」であるかもめ保育園関係者の思いでもあり、園長が「ウッディーズの皆さんのお陰で…」と謝辞を述べた。
 先日、知床五湖をトレッキングしてきたが、林床の草本植生が極めて貧相なことに驚いた。その時、「ワオーの森案内板は国立公園の看板にも引けを取らない!」と自画自賛し合ったことを思い出し、看板だけじゃない、我が山林は知床にも負けない魅力がある! と不遜にも思ってしまった (笑)
 知床に匹敵する…は冗談にしても、ワオーの森の面白さを多くの方々に知っていただいたようだ。「是非、このような観察会を恒例に!」という要望をたくさんいただいている。
 そんな反応に勇気を得て、「森に入り、森と遊ぶ、ご一緒にいかがですか!」と、どなたでもお誘いしようと思いを新たにしている。

(ワオーの森オーナー:高川 勝)

森開きに参加して 

児玉 毅(かもめ保育園園児父)

 普段休みがあると、子供たちにいろいろな体験をさせてあげようと意気込んで、車を長時間走らせていた私ですが、もしかしたら親の自己満足だったんじゃないかと少し反省しました。
 車で数分のごく身近な山林に、こんなにも美しく、面白く、大人も知らない自然があるわけです。山野草や木々、小鳥や昆虫たち。自然はまるで沢山の不思議が詰まった宝箱です。
 我々大人は知らず知らずのうちに忙しさで早足になり、遠くのものにばかり目がいって、自然が精一杯生きているドラマチックな物語を大股で踏み越えてしまってはいないでしょうか。

お誘いありがとう 

高原久美子(会員)

 ワオーの森へのお誘いありがとうございました。
 すっかり変わった森の様子にびっくり。太陽が降り注ぐ恵みが植生の変化に大きく影響することを実感しました。
 春日さんが挨拶で「里山を作った」という言葉に納得。椎茸菌を初めてとは思えない手つきでほだぎに埋め込む子ども達。危険防止の役割をしっかり果たしているウッディーズメンバー。ボラレンの方からの詳しい情報も新鮮でした。
 雨も遠慮してくれましたね。気配り準備本当にありがとうございました。ワオーの森の看板はしっかりと目に焼きついてます。

高川山林のシラネアオイ 

芝田美智子(会員)

 高川山林の自然観察会で名前を覚えたシラネアオイです。名前を覚えると一層親しみが増すのは人も植物も一緒ですね。

すくすく育つアカエゾマツ

千歳市 北山山林

 アカエゾマツの人工林。1.5m程まで幹がスッキリ立つ木と裾までもそもそと枝を付けた木が混在しています。ここは、数年前に3シーズンほど掛けてウッディーズの皆さんに手入れをして頂いた林班です。お陰様で、間伐事業(列条間伐6列から1列伐り抜く)が入るほどの成長を遂げました。以前は1m程で枝打ちも出来なかった木が、枝打ちが必要なほど成長したのです。
 私の森作りは、周辺のゴミ拾いから始まりました。シルバー人材センターの小父さん達と拾い集め、役場の担当者達と収集作業をして、「放置されていないゾ!!」宣言だったでしょうか。一般の車が縦横に走り、ゴミを投棄していた森に車止めを作り、何度も壊され、ジムニーのハンガーの上から単管を打ち込んだのも今では思い出ですが、悪意の人間の陰に若干おびえながら・・・。
 森作り2年目、道の指導機関と一緒に山に入り「10年後が楽しみな森だね!」と言われました。3年目は台風の被害に遭って森林組合・集材業者と現地確認で山を歩き回り、10年先どころか・・途方に暮れていました。縁あって、阿寒湖町の前田一歩園の方に広大な森林内を見せて頂き、『山作りは、300年の計。慌てることもない、少しずつでも役に立たないことは何もない。』ことを学ばせて頂きました。
 ウッディーズに仲間入りして、手入れをするとドンドン変わっていく山・森に多く出会え、私の山もお陰様でドンドン変わっています。私も、一人で山に入るのは以前ほど恐怖を感じなくなりました。・・・ただ、以前ほどの体力は無く、森林組合の事業に乗らない手入れは出来なくなっていくと思っています。とは言えまだ、アカエゾの手入れや風倒木処理、広葉樹林班の樹種を考慮に入れた手入れ・育成など仲間の皆さんのお力を借りようと思っています。
 何時も、何処にも、手入れをしたい山と山主は出現します。間伐ボランティア“札幌ウッディーズ”の存在価値は消えないと思っています。

(会員・山主:北山 浄子)

これからの活動予定(6〜7月)

◆6月4日(土) 北ノ沢第二都市環境林(札幌市南区)下刈り等
◆6月11日(土) 22世紀の森(当別町)下刈り等
◆6月18日(土) 山田山林(当別町)笹刈り等
◆6月26日(日) 山田山林(当別町)笹刈り等
◆7月2日(土) 高川山林(小樽市)山林調査
◆7月9日(土) 北ノ沢第二都市環境林(札幌市南区)植樹保全作業
◆7月16日(土) 柴原山林(札幌市南区)下刈り
◆7月23日(土) 22世紀の森(当別町)下刈り
◆7月30日(土) 荒巻山林(札幌市南区)草刈・枝打

自然に潜む危険と向き合う 

〜今内 覚氏によるコラム〜

第5回【流行り病 ジカ熱について】

 長い北海道の冬がおわり初夏が近づいてきました。家族や仲間で山菜採りや魚釣り、登山に出かけるかたも多くなってきたと思います。心地よい温暖な気候はアウトドアライフに駆り立てます。その一方、暖かくなるとやっかいものが現れ人間や動物を苦しめます。蚊の出現です。
 蚊は水中に産卵し、一般的に約2日で孵化し幼虫(ボウフラ)となります。さらに約7日で蛹となったのち3日で羽化し空中を飛び回ります。ここまでたった約2週間です。成虫となった蚊の寿命は2ヶ月くらいとされます。
 吸血するのは交尾後のメスで、オスや交尾しないメスは吸血を行わず植物等の汁を吸って一生を終えます。よく見かけるヒトにたかる蚊は、交尾後のメスで、短い間に子孫を残すために血眼になって宿主(吸血相手)を探している最中なのです。

 研究報告によると、気温が15℃から20℃になると孵化率は2倍になり、夏日(25℃〜30℃)だともっとも吸血活動が活発になるそうです。
 蚊による害はかゆみだけではありません。時には病気も媒介します。以前、本編においてマダニによって媒介される病気について取り上げました。マダニ同様に蚊の体中に潜む病原体が原因となります。蚊は病原体を故意に伝播している訳ではなく、病原体が蚊を「乗り物」として利用しているのです。
 蚊によって媒介される病気はマラリア、日本脳炎、デング熱などです。現在、ニュースが大々的に取り上げているジカ熱も蚊によって媒介されます。ジカ熱はジカウイルスに感染することで起こる発熱性の疾患です。ウイルスの由来はアフリカのサルと考えられています。恐ろしい感染症として取り上げられていますが、実は健常者が感染しても死に至ることは非常に稀な感染症です(ほとんどの感染者は無症状)。しかし、妊婦が感染した場合、胎児に感染し小頭症を引き起こすとされています。現在、有効なワクチンが無いことから妊婦の方は特に注意が必要です。
 ジカ熱はアフリカ、中南米、アジア太平洋地域で発生があります。これまでに日本国内でのジカ熱の発生例はありませんが、海外でウイルスに感染し、帰国後発症した例はあります。
 ジカウイルスはネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されることが確認されています。ネッタイシマカは、日本には常在していませんが、ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域(東北以南)で認められます。
 ヒトスジシマカはデング熱の原因ウイルスも媒介します。数年前まではジカ熱と同様にデング熱も日本では発生がありませんでした(69年間)。しかし、2014年の夏に東京を中心に流行が認められ、問題となったのは記憶に新しいと思います。北海道にはデング熱やジカ熱を媒介するヒトスジシマカがいないとされていますが、数年前に東京で蚊に刺された札幌の方が、帰宅後デング熱を発症しています。
 近年国際化が進み海外との距離は一気に縮まりました。多くの方が海外渡航され、多くの海外の方も北海道を訪れます。過剰な警戒は必要ありませんが、対岸の火事ではなく、今そこにある危機として感染症の動向にも目を向けなければならない時代となりました。デング熱やジカ熱流行地への渡航を控える身としては、さらに注意し調査に挑む予定です。

(文・こんない さとる・北海道大学獣医学研究科准教授)

(コラム「自然に潜む危険と向き合う」のバックナンバーは、「森林人コラム」で読めます)

森林人歌壇

 雲間もるる光たちまち消えゆきて余剰のごとき空のあかるさ
 ビルごしに見えゐるクレーン青空を己がものとし傾きゆけり

原 公子

 わが膝に来る七歳のをのこ孫日向のにほひ清かにまとふ
 ひと日雪の降り次ぐ中を這ひながら帰るとぞ言ふ孫を愛しむ

高橋 千賀

私はこんなひと

仲間のプロフィール:金澤絵里さん

 職業人となって初めて赴任した釧路管内霧多布では、霧多布湿原の美しさに魅了され、湿原ファンクラブに入りました。湿原のなかを水がゆっくりと流れるうちに有害物質がろ過され、大量の水を蓄えるダムの役割を果たす等、湿原が自然が作り出した壮大な環境保全装置だという事を知り驚きました。
 次の転勤先、寿都町では漁師の方に「森が豊かでなければ魚は取れない」という事を教えてもらいました。また、セヴァン・カリス=スズキさんの講演を聴き、もっと自然環境について学びたいなぁと思っていましたが、行動には至りませんでした。
 小樽に転勤し「かもめ保育園」に息子が通いだしたことが縁で、高川さんを通してウッディーズの存在を知る事ができました。手入れのされたワオーの森に行くと本当に元気が出ます。
 今の楽しみはキャンプと山登り。読書も大好きなのですが、今は子どもを寝かしつけると自分も寝てしまう毎日です。森林人通信で紹介された浜田久美子さんの本を自然の中でゆっくり読むのを夢見ています。

編集後記

たくさんの原稿をいただきました。感想などをお寄せください。
投稿も大歓迎です。(大竹)