森林人通信

Vol.100  2016.4.1

駆け足の春 到来
 心新たに 森に向き合おう!

15回目を迎えたウッディーズ総会

議事を裁くKさん

山林調査の結果を聞く

総会では、2015年に実施した13フィールドにおける山林整備と新規に着手した森林調査などについて報告が行われた。
 16年の活動については、施業技術の習得、安全意識の向上、森林保全活動の意義に対する理解促進、他団体との積極的な連携に努めることを確認した。
 役員に一部入れ替えがあり、新体制で活動の発展を期することとした。
 議事に続き、一年を超えて実施した「森林調査」の結果が報告された。報告は調査メンバーが手分けして行った。先陣を切ったMI会員が「樹高の計測に、不得手な三角関数が出てきて失神しそうになった」と苦労話で笑わせたが、実際、かなり高度な知識と技法を求められた。専門知識を有する会員がいてこそ実施できた調査だった。報告は4人が手分けして行われたが、KH会員は大学院を修了し、故郷・石川の林業関連機関への就職が決まっていて、律儀な性格まんまの丁寧な報告が、ウッディーズ最後の仕事となった。
 報告を聞き、調査対象となった高川山林の整備方針と手順が次第に明らかになってきた、との感を強くした。

16年の活動 森林調査でスタート

「アレは残そうね」

冷気の中で熱々の肉を頬張る

3月19日、高川山林で体験参加者一人を含む9人による森林調査が行われた。
 スノーシューやかんじきを履き、雪山登山の心持ちで出発する。調査の内容は、六区分したゾーンごとに保護すべき必要がある対象や求められる作業種類をあげ、その必要度と難易度を全員で判定していくというもの。
昼は、恒例?となった雪上ジンギスカン鍋である。手近の枯れ木を集めて積み上げ、それを上部から燃やしていくという意表を突く着火法(!)である。  森林調査リーダーのKSさんは野外生活術の達人でもあった。
 午後は麓の小屋に戻り、観察結果を基に、重要度が高く作業が容易であるものから順に着手するということで、そのランク付けを行った。

社会人スタートのKH君から 「ありがとうメッセージ」

ウッディーズでの四年半、学校で学んだことを現場で活かす難しさ、楽しさを感じてきました。大人の方たちに授けていただいた色々な知恵を、ふるさとでの人生とキャリアに活かすよう頑張ります。 お世話になり、本当にありがとうございました。

声を合わせて「セーノ!」

「ホダ木」を下ろす
 3月、残雪の山で、小樽市張碓町にある「かもめ保育園」の年中さん(5歳児)がシイタケのホダ木用に伐倒したミズナラの丸太を山出しした。年長になる4月、それぞれの「Myノコ」で玉切りをし、コマ菌を打ち込むことを楽しみにしている。

今後の活動予定(4〜5月)

4月9日(土)高川山林 (小樽市桂岡町)  間伐・薪割り
4月23日(土)荒巻山林 (札幌市南区) 山林調査
4月24日(日)高川山林 (小樽市桂岡町)  間伐・薪割り
5月7日(土)高川山林 (小樽市桂岡町)  山林調査
5月14日(土)北山山林 (千歳市)  山菜採り等
5月22日(日)北山山林 (千歳市) 遊歩道草刈り等
5月28日(土)柴原山林 (札幌市南区) 草刈り等

山主からのメッセージ
★山に人が入る。それだけで山は変わります。よろしくお願いいたします。
 皆さんに感謝! 感謝! です。 北山
★皆さんの手入れのお陰で心地良い山に変わりました。ひたすら感謝! です。
 引き続きよろしくお願いいたします。 高川

随想 あれから五年 福島の今を見て   高原久美子

 一年ぶりに福島を訪ね東日本大震災と原発事故か5年たった現状を見、聞きしてきました。昨年は海岸線のあちこちに見られたガレキが無くなり、家々は片づけられ田畑は整地され、ぼうぼうだった草も刈り取られて、もう避難先から戻って生活できそうにも見えます。あんずや紅白の梅、椿の花が咲き競い、のどかで平和そのものに見えます。しかし、家にも道路にも田畑にも人々の姿が無く、生活の気配が感じられません。警備員と放射能を除染する人々、行き交う車の動きがあるだけです。

積み上がる除染廃棄物(バスの車窓から)

 大きな変化は、除染廃棄物の仮置き場の増加で、そこここに廃棄物の入ったフレコンバックが5段重ねで野積みされ、まだ造成され続けています。
 福島市の渡利小学校では、校庭の地下1・5m下に除染物が埋められ、子どもたちはその上で遊んでいます。校庭では遊べても帰宅したら遊ぶ場所がなくゲームで遊ぶといいます。「なぜ原発が再稼働されるの?」と子供たずねられる母親…。
 中間貯蔵施設の建設もおぼつかず、仮置き場に置かれた廃棄物は行き場を失っています。除染された場所にも、放射能が風や雨に流されて集積し、新たなホットスポット(高線量地点)が出現するのです。

 帰りたくても帰れない大勢の人々がいるのでした。避難指示解除の楢葉町には6%しか帰らない。子供がいる若い人たちは戻れず、帰るのは車のある高齢者ですが、帰ってもご近所さんなし、お店もなしでは快適に暮らせる環境ではありません。生活の場を奪われ、仕事を失い、友達とも会えなくなった多くの人々。他ならぬここが正に「存立危機事態」に見舞われている。
 道路一本を隔てただけで帰還困難区域と帰還制限区域、避難指示区域が決められました。これが住民の心の分断にもつながっているそうです。隣は賠償金をもらえるのに自分のところはもらえない、という事態となって。国や東電へ向かうはずの怒りが隣近所へ妬み・恨みとして向けられ、これがコミュニティの崩壊にもつながります。

原因 不明の脱毛や斑点が生じている、
「希望の牧場・ふくしま」 の牛。

 小雪が舞う、3月11日午後2時46分、案内のボランティアの人が「あの日と同じ天気です」と言う海岸で、津波にのまれた人々へ黙とうを献げました。それから、多くの人たちと出会いました。事故後の模様と現状を話してくれた方々。心慰む音楽を交え実際の生活を語ってくれた母親たち。講演で、子供たちに増加する甲状腺がんの今後の検査継続の必要性を訴えた福島渡利病院の鈴木医師。原発から14㎞の距離にある浪江の「希望の牧場・ふくしま」では、「死と隣合わせ」で、殺処分の指示に抗して牛を飼い続ける。誰もが厳しい選択肢のいずれかを選び取りそれぞれ懸命に生きているのでした。
 福島を忘れまい、小さなことでいい、何かをやらなければ…という思いを強くした、短い旅でした。

(たかはら・くみこ 会員)

被曝(ひばく)の森 〜原発事故5年目の記録〜

  (3/6 NHKスペシャルを観て) 髙川 勝

 5年後の原発被災地の惨状に息を飲み、恐怖した。
朽ち荒れた住宅はイノシシ、アライグマ、そして、ネズミなどの住みかと化している。降り注いだ放射性物質は、特に「森」に多く残留しているので、動植物はもろに汚染される。
 放射線可視フィルムに撮られたスギの葉、トカゲ、マムシの画像には放射能汚染を示す黒い影が映し出される。汚染された植物の葉も根も丸ごと食べるイノシシの糞は汚染物質の黒い塊のように映って見える。
 福島の毎時7マイクロシーベルトが計測される地点のアカマツの幼樹に、幹が発達せず枝ばかりが放射状に伸びるという異常が40%を超える割合で見られる。ツバメの尾羽が左右不揃いでバランスよく飛べない。筋肉中のセシウム濃度が高いニホンザルほど骨髄に含まれる血球細胞が異常に少ない事例が確認された。
 広大な無人地帯となった「被曝の森」の、放射能に汚染される動植物はどうなっていくのか、それが明らかになるのはまだまだ先だ。

復興は進んでゐますといふ言葉から洩れつづくcesiumと水
 本田一弘(会津若松市在住)

(たかがわ・まさる 会員)

CuP of Tea(カップ オブ ティー) 

〜菊地 憲浩氏によるコラム〜

その4

ロンドン郊外に購入した庭付きの家でのエピソードを続けます。

庭には古い薔薇の木々と数本の3〜4㍍のロケットの様な形の松があります。私はこの松があまり好きではなかったので、ある日伐採することにしました。
 幹の直径は25cmくらいでしょうか。DIY用のノコギリしかなかったので、エッチラオッチラ伐っていました。スキルも知識もないので、ひたすら伐りますが、ノコは挟まって重たくなるし全然進みません。

 数時間も四苦八苦していると、通りがかったご婦人に声をかけられました。
「何をしているの?」
「庭の木を伐っているんですよ」
「どうしてそんな酷いことをするの?」
「この木が嫌いだからです」
「あなたは嫌いかも知れないけど、私はその木を見るのをいつも楽しみにしているんですよ。そんな酷いことは止めてちょうだい」
 木を伐るのが難航していたこともあって、この日は諦めました。

の出来事から、イギリス人は他人の家の庭をよく見ているのだと分かりました。景観とは自分だけのものではないんだなと…。
 
個人の庭や庭木、花も景観という意味では公共性があるということでしょうか。日本人なら「俺のものだから何をしようと俺の勝手」「他人のものだから何をしようと他人の勝手」と思ってしまいますが、イギリス人は少し違う認識を持っているようです。

 どこの家もガーデニングに並々ならぬ情熱を傾けているとは思っていましたが、見てくれる人がいるから頑張っているのかな。
今のスキルがあれば、あの松の4、5本くらいは10分もかからず伐り倒せたと思いますが、あれはあれで良かったのかも。
 日本に帰国する時にあのお気に入りの家は人手に渡しましたが、あのロケット松は今でも元気に育っているのだろうか? ふと気になる時があります。

(きくち・のりひろ 会員)

木霊(こだま) 前号への 読者の感想

★毎号、楽しみにしており、中でも「林間独語」「木霊」を感慨深く読ませていただいています。(M・Mさん)

★今号では、「アレロパシー」という知らなかった言葉に目がとまり、早速電子辞典を手に取った。フィトンチッドもその仲間ということを知らず、また、ジャガイモの忌地も他感作用の例と考えられている、などのことを知った。
 もう一つ、「活動一覧」と過年次の実績を興味深く拝見。活動参加者数はジワリと減ってきているものの、それにしても毎週毎週よく参加してくれる人がいるものだなあ、とただただ感心。
(T・Yさん)

林間独語

▼ 道端の堆積された雪の山も日に日にその嵩を減らしている。振り返れば、今冬、森林調査のために仲間と共に我が山林「ワオーの森」に何度か足を踏み入れた。俳句の世界でいう「山眠る」時分だったが、山はもう薄目を開けて起き上がる時を伺っているだろう。山は春に「笑い」、夏に(緑が)「滴(したた)り」、秋には「装い」、そして、冬になると「眠る」。それは広葉樹林ならではの移り変わりである。その中に常に変わらぬ緑を保ち続ける針葉樹が混じれば言うことなしだが。

▼ 山野の樹木は眺めるだけで心を癒やされるが、人間社会が撒き散らす汚染の浄化など、その多面的機能は上げればきりがない。そこへ持ってきて、木材から取り出すセルロースナノファイバーの登場である。繊維1本の幅が数ナノメートル(ナノは10億分の1を表す単位)。鉄の5分の1の軽さで強度が5倍。透明で熱を加えても膨張しにくいなどの性能から幅広い用途が期待される。

▼ きな臭さが漂う世相だけに、兵器などでなく何よりも山村の過疎化を止める起爆剤となれ、と強く思う。明日は、「ワオーの森」へ行ってみよう。雪どけが進んだ沢筋の地肌を雪どけ水が流れ下っているだろう。含み笑い…くらいの声を聞けるかも知れない。(T.M)

編集後記

 長い間ご愛読いただきましたが、今号を以て「森林人通信」編集の任を辞することになりました。2004年以来12年間、森と樹と愉快な仲間に寄せる想いを紙面に載せたい、との一念で100号という節目にたどり着きました。折に触れて皆さまから頂戴した叱咤激励が何よりの支えでした。ありがとうございました。バトンを受けてくれた新編集者は自然と社会に対する該博な知識の持ち主です。それが次号からの紙面に全開すること請け合いです。乞う期待!(T.M)
高川さん、いままで長い間「森林人通信」の編集作業たいへんお疲れさまでした!紙面の構成、文章の校正、執筆、印刷、郵送まで並々ならぬ大変な作業だったと思います。記念すべき100号でバトンタッチということで少し寂しい気もしますが...これからは 執筆の方で引き続き、よろしくお願いいたします!札幌ウッディーズメンバー 一同