森林人コラム
春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」
10 ハルニレ
ハルニレは、葉に先立って花を付けます。花の写真は、昨年4月17日、野幌森林公園で写しました。群がるように咲いています。
果実の写真は、5月18日恵庭公園で写しました。群がるように沢山、そして、翼があり、扁平で、見るからに軽そうです。6月には成熟、褐色になり、風に乗って旅立ちます。翼を持ち、種子を軽量化して、大量に広範囲に飛ばす戦略です。
さて、風に乗って旅立った翼果は、様々なところに着地します。条件のいいところに着地したものは、直ちに、発芽。そして、光合成を始めます。軽量で、栄養の蓄積の少ないハルニレは、いち早く光合成が出来ないと生き残れないのです。
日陰に着地したものは、翌春、林床に光が注ぐまで眠りにつきます。目覚めのサインを出すのは太陽の光です。野菜などの農作物の発芽のサインは水と温度ですが、ハルニレは光環境も条件として加わります。
土の中には、沢山の種類の眠れる種子があり、目覚めの時を待っています。「腐植や土中に存在し、発芽適期になっても発芽せず、休眠した状態が続き、地表が攪乱され、光環境が好転すると発芽してくる種子を埋土種子といいます。」(注)
北の沢でチシマザサを刈り取った後に沢山の草木の芽吹きが見られましたが、光環境の好転があったからなのですね。
注『森林林業木材・基本用語の解説』(北海道林業改良普及協会)から引用