森林人コラム

中野 常明氏によるコラム「木を友に」

6 プラタナス

プラタナス

 古くから街路樹や公園樹として植えられてきたのでよく知られた木で、別名「スズカケノキ(鈴懸の木)」である。詳しく言えば、国内にある多くは「スズカケノキ」と「アメリカスズカケノキ」の雑種である「モミジバスズカケノキ」である。葉はモミジの葉を大きくした形で、幹には迷彩服のようなモザイク模様ができる。落葉した後でも球状果が枝にぶら下がっている。原産地は、化石から判断するとシベリヤなどの寒地らしい。

 和名の「スズカケ」は、枝に残る球果が丁度鈴を懸けた様子なので、これから命名したものと思っていた。ところが違うようである。山伏の法衣に篠懸衣(すずかけころも)といわれるものがありそれには、球形の飾りが付いていることから「篠懸木」と命名した。その後、球状果が鈴なりにつくというので「鈴懸木」と書くようになった。又属名の「プラタナス」は古代ギリシャ語が語源で、「幅が広い」意味から転じて「葉が大きい」と言う意味である。(「北方植物園」朝日新聞社)

プラタナス

 日本には自生しておらず明治初期に輸入された外来種である。最初は、小石川植物園に植えられ今も大木が残っている。新宿御苑の並木は、明治25年に植栽されたとのこと。大変古い樹種で、ギリシャ、ローマ時代から街路樹として植えられた記録がある。ヨーロッパでの植栽の歴史が長く樹齢1000年から1500年、高さ30m、直径が10m~15mという記録が残っている。因みに、札幌の街路樹としては、5番目に多く約12000本植えられている。

 高校生の頃、小樽市緑町の通学路にこの木が植えられて、夏の暑い日には日陰を作ってくれて助かった思い出がある。また砂川の社宅に住んでいたとき庭にあったこの大木は、広い日陰を作ってくれて有り難かったが、秋になるとどっさり葉を落としその後始末に困ったものである。秋に落ちた葉が雪の下になり、雪解けの頃道路の排水口をふさぎ、道路がプール状態になるのには参った。但し、公害や剪定には強く成長が早い木なので、街路樹や公園樹として人気は高い。因みに花言葉は「天才」であり、8月21日の誕生木でもある。

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