森林人コラム

春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」

21 オオハナウド

 純白の花、オオハナウドは初夏の花です。からかさ形の複散形花序の花を咲かせます。9月上旬のオオハナウドの写真をご覧下さい。茎頂の一番目の花序だけが結実しています。茎の腋から出る二番目、三番目の花序(矢印)は結実していません。雄花の時期で終わって、雌花には進まなかったのです。

 どうしてでしょう。

 オオハナウドの花は雄しべが先に熟します。その後、間期といって雄花でも雌花でもない時期を経て雌しべが熟してきます。一つの花が間期を境目として雄花の時期から雌花の時期へと移行していきます。複散形花序は沢山の花のあつまりです。雄花は周辺から咲き始めます。咲き方の時間的なずれは、先に咲いた雄花が間期で足踏みしてあとから咲いた花を待ちます。そして、一斉に雌花の時期に推移していきます。

 一番目の花序が咲き終わってから、二番目の花序が咲き始めます。二番目の花序も雄花の時期から雌花の時期へと推移していきます。ところが、一番目の花序の受粉がが成立している場合は、雄花だけで終わり、雌花へと進まないで終わるのです。結実しないのです。ただし、一番目の花序に事故あるときは、雌花の時期へと推移して立派に結実します。

 どの花も結実するのはオオハナウドにとっては大変コストがかかることなのでしょう。コストを切り詰め雄花で終わり、せめて自分の遺伝子を花粉に託し運んで貰う。素晴らしいオオハナウドの生き方・戦略であります。

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