春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」
13 ドクダミ
ドクダミは沢山の薬効があり、「毒を矯める」から「ドクダミ」。十薬ともいうが、江戸時代に貝原益軒著「大和本草」の中に「十種の薬の能ありて十薬となす」とある。
強い抗菌作用をもつので、我が幼少の頃、お年寄りが庭の片隅に植えていて、吹き出物に葉を揉んで張ってくれたりした。鼻水が出て困るとき、おそらく鼻炎だろうが、そんなときには、葉を揉んで鼻の穴に詰める、そんなことで症状を和らげてくれたことを思い出す。利尿作用や動脈硬化の予防のためにドクダミ茶を愛用する人もいる。
独特な臭いに似合わず可憐な花を咲かせる。花言葉は「白い追憶」。黄色の沢山の小花を穂状につける。小花には花びら無し、雌しべと雄しべのみである。花びらに見えるのは4枚の総苞片である。
牧野富太郎の『植物記』に「ドクダミは種子によって繁殖することは出来ない。雄しべの粉ぶくろには花粉は入っているが、しなびて役に立たない。雌しべは大きな種ぶくろ(子房)を持っているが、一向に種子を作らない。出来てもシイナばかりで発芽しない。」とある。
種子を作らないドクダミは、どのようにして生命をつないできたのだろうか。
「ドクダミは、地下茎によって繁殖する。ほんの小さな地下茎でも芽を出し、はびこる。畑に入ると厄介者である」と、『植物記』は続く。
地下茎による生命の継承と分布の広がりには人間生活の営みが大きく関わっているのであろう。我が家の庭に生えているドクダミは、他所から「ミツバアケビ」の苗をいただいた時に、地下茎の小片が付いてきたようだ。防除を試みたが、全く不可能で、生育範囲の拡大を防ぐのが精いっぱいである。