木を友に

(文:中野 常明)

5 シンジュ

シンジュ

ンジュは「神樹」のことで、中国原産のニガキ科の落葉高木、胸高直径1m、高さ25mにもなる。幹の肌はニガキによく似ていて滑らかだが、成長すると縦に不規則な裂け目ができる。葉はヤチダモ、オニグルミ、アカシアのように、長い葉柄に小葉が沢山互生するタイプである。葉の形がウルシに似ているところからニワウルシとも呼ばれる。
英語では天国の木(Treeofheaven)ドイツ語では神の木(Gotterbaumu)を意味する名前が付けられているところから、和名の「神樹」がつけられた。(『北方植物園』朝日新聞社)

シンジュ もともとは、非常に成長が早く「天まで届く程の木」からきた名前である。雌と雄の木があり、雌の木には楓の翼果に似た房状の翼果が実り熟すと赤色になり遠方まで飛ばされる。この木は、乾燥、煙害、虫害に強く中国の各地で並木として植えられた。それが西欧や米国に渡り立派な街路樹になった。
ウイーンで、この木の並木を見た農学者津田仙(津田塾大創設者津田梅子の父)が、明治8年にニセアカシアと一緒に日本に持ち帰り丸の内や文京区江戸川沿いに植えた。これが日本で初めてのシンジュの並木である。札幌でもあちこちで見られるが、最も大きな木は、豊平の経王寺境内にあるというがまだ確認していない。比較的新しい外来種なので、故郷で薪を切ったり割ったりしていた少年の頃には、全くお目に掛かったことはない。

年後イスラエルとイタリヤを旅行した時この木を発見し、ユダヤ教とキリスト教の国に相応しいシンジュ(神の樹木)があるのは当たり前などと、妙に納得したことがある。
材は割れにくく木炭にしても火力が弱く、こぶも多く板材にならないとのこと。このため中国では、樗(ちょ)と書くこの木は、サッパリ役に立たない悪木の代表とされた。ウドの大木と同類ということになる。「樗檪(ちょれき)の材」といえば無能な人を指し「椿樗(ちんちょ)」といえば、有用な椿と役立たずのシンジュの混じった林を指し玉石混淆と同意である。明治の作家で評論家の高山樗牛は、自らを役立たずの牛と謙遜してつけたペンネームである。

 蚕の一種にシンジュの葉を好んで食べる「シンジュ蚕」がある。戦時中、食糧難で桑畑が野菜畑にされ、桑に代って、シンジュが山野に植えられ、まゆが採られたことがあった。このころ北大の川口栄作教授が、「シンジュ蚕」の改良種を生み出しこれに「神蚕」という名前を付けた。戦時中シンジュ蚕を育てるために、各地にシンジュの苗木が配給となりその一部は、札幌にも来た。戦後は、これが並木に使われ市内に約1700本の並木がある。(伊達興治『北海道の樹木と民族』北海道出版企画センター)北8条通の北大生協近くに並木が残っている。

が家の近くの防風林や公園にもこの木が植えられている。翼果から育ったと思われるこの木が、以前からあったヤチダモを駆逐して、防風林の日当たりの良い道路側を占領している。根元を見ると実生苗が草原状に繁茂している。電線や電柱近くの大木は、邪魔になるので大枝まで枝打ちされて無惨な姿をさらしている。キツツキに穴を開けられ巣に使われる程度の効用しかないが、そのたくましい成長ぶりを見ていると他の木が全て駆逐されるのではないかと心配だ。

 

 

<< 前の号へ     ▲コラムトップへ     次の号へ>>