木を友に

(文:中野 常明)

25 ヤチダモ

防風林のヤチダモ
防風林のヤチダモ
ヤチダモの葉
ヤチダモの葉

クセイ科トネリコ属で、高さ30m以上となり太さは80〜100pにもなる 落葉高木。本州中部から北海道にかけて湿地に自生する。ヤチは『谷地』のことで、湿地に生えるタモという意味である。 タモは、同じ属にあるタゴの木から転じたと言われている。葉はオニグルミ、キハダ、シンジュなどと同じ奇数羽状複葉である。 小枝が少なく幹は真っ直ぐに伸びるので、昔は田の畦に植えられて稲を乾燥させるハサの支柱に使われた。

 生木でもバリバリ燃えるが、薪材としても優れている。少しぐらい節があっても 簡単に割れたので助かった。 木材としての用途も広く家具、建築材、合板、枕木、車輌、仏壇、算盤の枠、額縁、太鼓の胴、 野球のバット(主に軟式用)などに使われる。オスとメスの木があり強度の大きいのはオスの方である。

チダモは水に強い性質から泥炭地(湿地)を通る鉄道の防風雪林として利用された 。アイヌの伝説によれば背の高いハルニレの木の上で、フクロウが人間を悪魔から守っていたが、人間が増えて見通しが悪くなり、 一番高いヤチダモの木に移ったとの事。札幌の街中でヤチダモを見たければ、道庁赤レンガの北側に、立派な大木がある。 植物園にも開拓時代からと思われる大木が数本見られる。わが家から30mほど南に行くと長さ2・5q、巾50mほどの ヤチダモ主体の防風林にぶつかる。昔は、石狩湾からの強い北風を防ぐためだったが、今では林の遙か北まで住宅が建ち これが防風林の役目をしてくれている。防風林は、今や犬の散歩やウオーキング、バードウオッチング、児童の学習林などに 広く利用されている。

 ふるさとの子供時代によく木登りをしたが、それもヤチダモの木が多かった。 近所の大きな割烹が火事で焼失したが、広い敷地の東西に各一本づつヤチダモの大木が焼け残った。道路の上まで枝を広げて、 秋になると路上一面に、子供の膝の高さまで落ち葉が降り積もった。良く木登りをしたのは3月末頃で、 誤って木から落ちても下に雪が残っているので怪我しないことと、葉のない季節で見通しが良く高いところでも 風が冷たくない事などが理由であった。身が軽かったので、梢近くまで登りあちこちに揚がっている凧を眺めたり、 羊蹄山やニセコ連峰の遠望を楽しんだものである。

 

参考図書
朝日新聞社 『北方植物園』
辻井達一『「日本の樹木』(中公新書)
佐藤孝夫『「新版北海道樹木図鑑』 (亜璃西社)

 

 

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