木を友に

(文:中野 常明)

24 カツラ

黄葉を始めたカツラ
黄葉を始めたカツラ

地から山地の沢沿いや、やや湿った斜面に生える落葉樹。高さ20〜30m、太さ1〜2m、時には2〜4mの巨木となる。北海道では中央部と西部に分布し、本州、四国、九州にも分布する。雌雄異株、樹皮は灰褐色で深く縦裂する。以前は、流れる水のそばでなければ育たないと言われ、街路、公園には植えられなかったが、最近では街の中でも目に付くようになった。

 カツラは日本の名木である。日本の特有種で英語でもカツラ・ツリーで通じる。中国にも近い種類があるようだが日本種とは異なる。中国の景勝地の「桂林」は、カツラとは関係ない。中国の「桂」は日本のキンモクセイのことで、「桂林」はキンモクセイの名所でもある。明治の始めに米国の植物学者サージェント教授が来道し札幌の円山、藻岩山の調査を行った。教授は、その著書「日本樹木誌」の1ページに藻岩山で撮ったカツラの大木の写真を載せ、藻岩山は樹木学的に見て世界の名山だと評価している。

教授が来道する前の1878年既に札幌から米国にカツラの種子が送られている。1896年にハドソン川河畔に植えられたカツラが現在でもあるという。まだ100年あまりなので巨木にはなっていないだろうが機会があったら見たいものだ。札幌では、円山の一角に残る天然記念物のカツラの一群が見事だ。開拓時代は、二抱え、三抱えもある大木が邪魔者扱いにされ切り倒された。古木は内部が腐りウロ状のものが多く輪切りにされて野天風呂の材料にされたという。十勝や大雪の山奥には、今でも立派な木が残っている。芽吹きの頃の薄紅と晩秋の明るい黄葉は大変美しく、ハート形の小振りの葉も可愛らしい。

 木材としても優れ、木目は直線的で節が少ないので、張り板、裁ち板などの長尺ものの材料にされた。丸木船の材料としても多用され、埋蔵物として出土する丸木船の大半がカツラ製である。苫小牧の博物館には、出土したカツラのすばらしい丸木船が展示されている。適度に軟らかく工作しやすいので、鎌倉彫を始を始め小細工ものによく使われる。カツラの葉は香がよいので、乾燥させて抹香の原料にする。アイヌの女性は、この樹皮を燃やした灰に水を加えて煮て、上澄み液をシャンプーとして使ったという。アイヌの男性は、この香についふらふらになり魂を抜かれたのではあるまいか。

 

参考図書
朝日新聞社 『北方植物園』
辻井達一『「日本の樹木』(中公新書)
佐藤孝夫『「新版北海道樹木図鑑』 (亜璃西社)

筆者注 写真(上)は、9月27日、荒巻山林の作業を終え、同所を後にして直ぐ目にしたカツラ。 車を降り、秋の陽を受けた黄葉の輝きにカメラを向けた。

 

 

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