木を友に

(文:中野 常明)

10 エゾマツ・トドマツ

エゾマツ・トドマツエゾマツ・トドマツ

海道を代表する針葉樹である。両者共にマツ科であるが、エゾマツはトウヒ(唐檜)属、トドマツはモミ属である。トウヒ属の葉先は、モミ属のように二つに分かれておらず一本針状で鋭いので、肌に触れるとモミ属より痛い。エゾとトドの見分け方として「エゾの枝先は下がり、トドは上がる」とよく言われるが、樹齢や生えている周りの環境によって変わるのであまり当てにならない。樹肌と葉から見分けるのがより正確である。エゾの樹肌は鱗片状で亀裂が多くトドは平滑な樹肌をしている。エゾマツと言えばクロエゾマツを指し他にアカエゾマツ(=ヤチシンコ)がある。一般的には、幹の色が黒っぽく葉の断面が扁平、長さは長めなのはクロエゾ、幹の色が赤っぽく葉の断面が四角、葉の長さが短めが赤エゾと憶えてておくと良い。エゾマツはアカエゾも含めて「北海道の樹」に選定されている。

ゾ、トド共に高さ30〜40m、直径1〜2mの大木になる。エゾは200年くらい掛かって自然更新するが、トドは半分の100年で更新する。つまりトドの方が成長が早いので、林業家はトドを選ぶことが多い。但し、トドの若木は春の霜にひどく弱いという欠点があり注意を要する。両者共に、木材として代表的な樹種で、住宅用木材として大量に使用されている。木肌が白く釘を打っても割れず粘りがある点が評価されている。成長の遅いアカエゾは、材質が緻密で色調も美しいことから楽器の響板(特にピアノ用)や船の甲板用にも使われる。
昔、ふるさとのわが家の斜め向かいに一軒の柾(まさ)屋があった。その家の前には、いつも直径1m近く、長さ4mくらいのアカエゾの丸太が数本積んであり、子供の遊び場になっていた。この丸太を大きな鋸で30pほどに玉切りし、さらに厚さ1.5〜2oに縦割りして、屋根を葺くための柾を手作りしていた。独特の鉈と木槌を使って薄い柾を次々と作る見事な手仕事に見とれたものである。手仕事が機械に取って代わられ機械柾の時代となり、更に、火と風に弱いために耐火性の高い屋根材(スレート、長尺トタン、ステンレス板など)に代わった。短い柾釘を口に含み、独特のさいころ型の金槌で素早く柾を葺いていく柾葺き職人も見られなくなってしまった。柾という言葉自体が、若い世代には通じなくなってしまったのは淋しい限りだ。

勝岳の三段山の中腹に見事なエゾマツの林がある。その林を縫ってスキーコースがある。北大山岳部のスキー初心者のトレーニング場でもあったとか。スキーをうまく曲げられない初心者は、十勝エゾマツの大木に衝突して怪我をしないように、「転べ」と言われたら確実に転べる練習から始めたそうだ。会社の独身寮にいた頃それを真似て、同僚で本州から来た初心者を連れ出し「あぶない!木にぶつかる!転べ!」と号令し、雪まみれになるのを見て大笑いした懐かしい思い出がある。
(写真はいずれも中野。札幌市内で。)

 

 

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