森林人コラム

春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」


7 サルナシ(コクワ)

 和名がサルナシ、別名で「コクワ」と呼ぶことを知ったのは、かなり大人になってからである。子どもの頃、「コクワ採り」に、友達と誘いあって山に出かけた。だから、実の着くもの着かないものがあることは十分承知していて、雌雄異株とばかり思い込んでいた。
コクワ雄花
  自然観察案内駆け出しの頃であった。「コクワは、雄株と雌株があり、雄株には雄しべ、雌株には雌しべだけがつきます。」と説明して、「雌株」の花をを見てびっくり。何と、雌しべと雄しべがあった。雌株でなく両性花の株だったのである。悔しい思い出である。

コクワ中性花 サルナシは、雄株と両性花の株のツル性の木である。両性花には退化して花粉を作らなくなった雄しべがある。この雄しべは昆虫を呼び寄せるなどの役割をしているらしい。なるほど、自然に無駄なしである。 花時のサルナシ。雌花は、1~3個、まばらに見えるつき方である。雄花は、3~7個が群がってつくという感じである。 雄花の散り方は思い切りがいい。花の柄のところから丸ごと、落下する。これから実を稔らせる大事業を控える雌花は、花びらだけが散り落ちる。  山道に散り敷くサルナシの花を見て、頭上に繁茂するのが雄株か両性花か、と思いを巡らせることも楽しいものである。 マタタビ、ミヤママタタビも雄株と両性花の株である。実は両性花の株のみに着く。

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