森林人コラム
春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」
3 風媒花
シラカンバの花が最盛期です。花粉を沢山飛ばしています。花粉アレルギーの人にとっては有り難くない存在です。カバノキ科の花芽の動きは早い。ケヤマハンノキは花の時期を終えました。ツノハシバミも終わりました。
花粉の運び役の虫たちの活動が不活発なこの時期、これらの木々は、花粉の運び役を風に求めました。まさに、風任せです。雄花は空高く茎頂にあり、穂状の形は花粉の空中散布に最適。気温が上がり、空気が乾燥するや、大量の花粉が空を舞う。「どんなに美しい花びらをつけても、どんなに美味しい蜜を用意しても、それらは、飾り物。一番肝心なのは、オシベとメシベです。」と、言わんばかりに、風媒花は、それらの虚飾を取り去った形をしています。
ハルニレやオヒョウも今が花盛り、雄しべの葯が群がるように梢について花粉を飛ばしています。盛夏に花をつけるトウモロコシやカモガヤ(牧草としての名称はオーチャードグラス)、オオアワガエリ(同じくチモシー)は風媒花です。花弁なし、蜜腺なし、虚飾なしです。
風任せで、ノーコントロールのようでありながら、シラカンバやウダイカンバ、ダケカンバなどは、それぞれに花粉を飛ばす時期にずれがあるそうです。花粉を届けるのに風任せでありながら、自分の種の純潔を守るために花粉を飛ばす時期を違えるという戦術を持つなど、自然は、味なことをするものです。