森林人コラム
春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」
20 フキ
山菜シーズンです。香り豊かなフキは美味しいですね。フキの茎は地下茎となって地下を縦横無尽に張りめぐらせています。地下茎から葉柄を立ち上げその先に葉をつけます。茎を食べると思っている人がいますが、山菜として食べるのはフキの葉柄です。茎は地下茎ですから、地上には出て来ないのです。
春、早く地下茎から花茎を地上に伸ばします。これがフキノトウです。フキには雌株と雄株があります。雌株には雌花だけをつけるフキノトウが、雄株には雄花だけつけるフキノトウができます。
フキは虫によって花粉を運んでもらう虫媒花です。ところが、雄花には密腺がありますが雌花にはないのです。これでは、雌花に花粉を運んでもらえません。雌花に花粉を運んでもらう秘密はどこにあるのでしょう。
写真にあるように雌花をよく観察してみますと、必ず数個の雄花が混じっています。その雄花が出す蜜に虫が集まって来て受粉が成立するのです。その雄花には花粉を出している様子が見られませんから、雄の機能を失った虫集めに特化された雄花と考えることが出来るでしょう。
身近にある山菜のフキですが、命をつなぐために巧妙な仕組みを編み出したものであります。