森林人コラム

春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」


14 ハコベ(繁縷)

 お祭りで買ったヒナにハコベを食べさせたことがあった。英語はChickweed、 ヒヨコの雑草、謂わば「ヒヨコグサ」である。
 至る所によくはびこる。繁縷は「よくはびこる」の意味である。
 写真は、コハコベの花である。花びらは何枚でしょう。

ハコベ(繁縷)

 10枚に見えるが、5枚の花びらが深く裂けている。目立たせて虫を誘っている のである。あいにく虫の訪れが無い時は、雌しべと雄しべが近寄って自家受粉 をする。

 茎頂に花をつける。花が終わって、もう伸びられないと思ったら、花の下から両側 に2本の分枝を出して花をつける。これを繰り返すから、大きく繁茂する。

 ハコベは、踏まれにも強い。一見か弱く見える茎を引っ張って見ると、細い筋 が現れる。柔らかい茎と丈夫な筋を併せ持つことで踏まれに強い仕組みになっ ているのである。畑に入ると、よくはびこるので嫌われる。取っても取っても 新しい芽が出てくる。沢山の種子が土に埋まっているに違いない。草取りや耕 しで土の表面が攪乱されると発芽条件が整い一気に出てくる。か弱そうに見え ていて、強い強いハコベである。

 ハコベ属の属名はステラリア(Stellaria)、「星型の」の意。花びらの下の 萼が五角形の綺麗な星形である。

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