森林人コラム
春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」
16 エゾユキウサギ
エゾユキウサギ(写真①)の食痕(写真②)です。
鋭敏な刃物で切った様に見えます。そして、マーブルチョコの様な形の、乾いて硬く臭いもほとんどない硬糞に出会うこともあります。(写真③)
エゾユキウサギは軟糞もします。発酵のためにいい素材とそれに向かない大きな木片などに分けて、いい素材だけを盲腸に残して軟糞を作ります。盲腸で微生物の働きで発酵させ、タンパク質やビタミン類など栄養の高い発酵食品に変えたものが軟糞です。軟糞は食べてしまいます。軟糞を食べないとエゾユキウサギは生きていけません。
硬糞は食べたとき十分に噛み砕かなかった植物の破片などが固まって出来たものです。夜行性のエゾユキウサギは、日中ジッとしていますがそんなときにした硬糞は食べます。しっかりと噛み砕いて、今度は盲腸で作る発酵食品の材料になります。
雪原を駆けめぐる足は大きく、指の間には毛が生え、スーノーシューを履くが如しです。外敵に備え、夏毛と冬毛と装いを変える周到さ。大きな耳は外敵をいち早く見つける備えであり、夏の暑さにはラジエーターの役割も果たします。
エゾユキウサギは厳しい自然の中を生き抜き、命をつなぐ見事な身体の仕組みを持っています。