森林人コラム
春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」
2 春植物
早春の大地に彩りを演出するフクジュソウ・エゾエンゴサク・カタクリ等を春植物といいます。
これらの植物は、陽光降り注ぐ落葉広葉樹の林床でわずか3ケ月間のうちに、発芽・開花・結実を終え、翌年まで眠ってしまいます。英語では、「はかない、短命の、ただ1日限り」を意味するスプリングエフェメラル(Spring ephemeral)という名称を与えています。
春植物は、長い進化の歴史の結果、陽光降り注ぐ春の落葉広葉樹の林床に合わせた生活史を身につけたといえます。はかないというより、他の植物と住み分け、共生の道を選んだ生き方をしているというのがぴったりするでしょう。
フクジュソウの花弁は光沢を帯び、凹面鏡のような形で光を集め温度を高め、虫を誘い受粉の機会を多くしています。
自分の花粉で受粉しないエゾエンゴサクは虫の助けが必要です。早春の寒い時期に開花したものは2週間も花を咲かせますが、気温が上がり、虫が活発な春真っ盛りに開花したものは長くは咲いていないそうです。
カタクリは、種子散布にアリの助けを借りるそうです。種子には、アリの好物のエライオソームというものが付いているそうです。アリは、それを食べるのを目当てに種子の運搬役をしているようです。
早春の気候の厳しさの中を生き抜く巧みな仕組みに感心させられます。