中野 常明氏によるコラム「木を友に」
28 ポプラ
良く知られた木である。しかし、和名までご存じの方は少ないのではと思う。セイヨウハコヤナギがその和名である。名前の通り柳の仲間であり、春になると柳絮(綿毛)を飛ばす。ポプラの語源説には二つあり。一つは、古代ローマで沢山植えられ、市民の木という意味の「アルボル・ポプリ」のポプリから来たという説。もう一つは、葉が風に良く震えることから、ラテン語の震えるという意味の「ポプリス」から来たという説である。
ポプラの分類はなかなか難しい。古い文献によればポプラとイタリアポプラの二つに分けられるが、新しい文献では、ポプラ=イタリアポプラとエウロアメリカポプラ=改良ポプラの二つに分けている。このほかに王子製紙が独自に開発した、製紙原料用の「王子ポプラ」がある。これはポプラの俗称を持つが、ドロノキを改良したもので、正しくは、ポプラとは呼べない。
ポプラ類は雌雄異株で、雌と雄とでは樹形が異なるので、目で見てポプラ類を正しく分類することは、大変難しい。ここでは新文献分類法によって、ポプラを説明する。原産地はヨーロッパまたは西アジアの落葉樹で、高さ20m~30mになる。スラリと空に伸びた樹形は、良く知られている。但し、それは通常雄の木で、雌の木は、横にも枝を広げてずんぐりしているものが多い。葉は広三角形、長さ4~12㎝、細かい鈍鋸歯があり、葉柄2~5cm、6月頃に種が成熟し柳絮となって大量に種を飛ばす。並木、公園樹として植えられるが、最近では風に弱いことが嫌われ、交通量の多い道路には植えられなくなった。材質は軟らかく、色が白いので、昔は折り箱材や強度の要らない器具材用として利用された。
北大構内のポプラ並木は有名であるが、並木が思ったより短いのにがっかりした観光客が多いという。それも数年前の強風で大半が倒れてしまい次代の並木を造成中である。倒れたポプラを使いハープシコードを作り北大博物館に記念として残してある。北大以外にも、真駒内、月寒、石狩街道などにも立派なポプラ並木がある。これらを観光客に紹介したいものだ。
ポプラは、成長が早い反面寿命が短くほぼ百年である。我が家の近くの防風林に沿った道は、「ポプラ通り」と名付けられている。しかし、ポプラの姿はあまり見掛けない。明治の初めに植林され既に百三十年以上経っている。従って寿命はとうに過ぎて補植もされていないので、僅かな老木が、残るばかり、というのが原因である。欠点の多い木だが、改良されて性質の優れた新種がどんどん出てくるのは心強い。
『北方植物園』(朝日新聞社)
辻井達一『「日本の樹木』(中公新書)
佐藤孝夫『「新版北海道樹木図鑑』 (亜璃西社)