山中林思

(文:東前 寛治)

11 森に「子どもの村」をつくる(2)

 徳村彰さんは網走管内滝上町の森林に毎年4回にわたって、『子どもの村』を開設し、小学生を中心とした共同生活を営んできた。夏は7月20日から8月31日まで、秋は9月1日から20日まで、冬と春はそれぞれの休み期間中である。こうして『子どもの村』に学び森の生活を過ごした児童は02年度までに240人にも上るという。『子どもの村』に来て何をするかは、子ども達が決めるという「子どもが主人公」の精神を徹底し、村の「核」として参加した中・高生が自主的・積極的に運営を行う。『逸脱有理』が時と共に無言のルールを必要とし、積年の体験者がリーダーとして集団を導いていく。

 この村には電気がない。夜はローソクの灯だけ。電化製品は一切使えないので、飯を食べようと思えば薪を割ることから始めなければならない。自動食器洗いは小川の中。電話をかけたり買い物をしようとする子は、往復9qを歩いてこの付近で唯一のお店まで行かなければならない。

 それでも、チロチロ燃える焚火を囲んで夜が更けるのを忘れて歌ったり、語り合っている子ども達、学校に行かないでTVゲームに夢中になっていた子が楽しそうに薪割に汗を流したり、一日中ドジョウ取りや魚釣りに熱中したり、ふだんはお寝坊なのに早朝のキノコ取りを楽しみに朝早く起こしに来る子、桑の実やヤマブドウを取りに木に登る子ども達…、このような森の中での暮らしが子ども達を癒し、育み、育てていくことを、かつて横浜での『ひまわり文庫』の頃の夏のキャンプから著者は学んでいったという。バンガローよりはテント、整ったテント村よりは本物の山がいいと、著者が子どもと共に自然に関わりながら気づいてきた結果なのだろう。

 これは今日の自然と社会の荒廃の態様として、次代に生きる敏感な子ども達に現れた退行とも言える現象や、子どもばかりでなく大人の人間関係力の後退と自信の喪失、そんな諸々の課題に対する著者の生活をかけての提案と言えよう。とりわけ今日の教育の在り方を問うものであることは間違いない。学力向上を焦眉の課題とする状況にあっては、極めて厳しいものではあるが、次世代の教育を考える上で森の活用が有効で在りさえすれ、決して無用ではないと言える。

 

 参考図書
 徳村 彰『森に生きる』
 雲母書房 2003年刊行

 

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