森林人コラム

荒巻 義雄氏によるコラム「ムー大陸の夢」

第2回 ニューギニアに古代文明が.....

 チャーチワードによると、この幻の大陸は五万年前に存在し、高度な文明を誇っていたが、一万二〇〇〇年前に海没したという。実は、この説明、今日、判明している地球の過去に合致しているのだ。
 すなわち、五万年前と言えば最後のウルム氷期が始まった頃だし、一万二〇〇〇年前は、それが終わった時期である。
 大きな特徴は、両極や大陸に巨大氷床が発達、成長し融けないため、海面が一〇〇メートル以上も低下した。結果、大陸棚の大半が陸地化したこと。気候は寒冷化し、かつ極めて乾燥した。つまり、今で言う冬期間、インフルエンザが流行る環境だったわけだ。かと言って、太平洋上に、巨大大陸が、忽然と姿をあらわしたわけではない。陸化したのはアラフラ海で、オーストラリア大陸とニューギニアが繋がった。

 古気候図を見ると、オ大陸の大部分は、今のように砂漠であるが、タスマニア島と繋がっていた東海岸南部はツンドラ地帯、北は草原である。アラフラ海も同じだ。
 ニューギニアから、われわれが連想するのは、昼なお暗きジャングルであるが、この時代はひらけた草原だったのだ。脊梁部の大山脈には氷河さえあったらしいが、平原となったアラフラ海とあわせると、印度にすら匹敵する広さである。
 肝心の人類はいただろうか。むろん、いたのだ。当時、マレー半島とインドネシアは陸で繋がり、これをスンダランドと言うが、われわれの先祖は、ウルム氷期の最中に、中間のチモール海を竹の筏などで渡り、東の新天地に到達していた。

 彼らがアボリジニの祖先であるが、今日、わかっている以外の遺跡群が、アラフラ海の海底に眠っていないとは言い切れない。 太平洋には、陸地が海没した言い伝えは多いが、必ずしも火山の爆発だけではないはず。種族の記憶に残った氷期の終わり、短期間に進行した温暖化と海進期の記憶ではないかと思う。
 ニューギニアの先史研究はこれからだろうが、紀元前五〇〇〇年ごろの耕作地の跡などが発見されたりするらしい。石器や土器なども想像以上に古いものが出土するという。

 想像の段階だが、たとえば、アラフラ海と印度との間で、ひょっとすると文物の交流があったのではないだろうか。少なくとも、噂は人から人へ伝わる。噂には尾ひれがつくものだから、この新世界のことは印度の種族にも知られていたのかもしれない。

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