木を友に

(文:中野 常明)

7 イチョウ

イチョウイチョウ

チョウは、1科1属1種の木である。高さ20m、胸高直径2mくらいまでになる。中国原産と言われるが、約1億5千万年前の日本の地質からも化石が出土している。葉は扇形で幅5〜7p、通常は浅く2裂するが、3裂するもの、切れ込みの深いものなど多様である。雌雄異株で、ギンナンは雌の木にだけなる。10月頃直径2・5pほどの大きさになり完熟すると落果する。果肉には、悪臭があり触れるとかぶれることがある。街路樹、公園樹として広く植えられている。木材は碁盤、将棋盤、算盤の珠などに使われる。

 明治29年植物写生画家の平瀬作五郎氏が、小石川植物園のイチョウから精子を発見し、世界の植物学者を驚かせた。続いて、東大の池野教授が同じ小石川植物園のソテツから精子を発見した。これによって、日本の植物学のレベルの高さが世界に注目されるようになった(「北方植物園」朝日新聞社)。数年前に小石川植物園を訪れたことがあるが、記念すべきイチョウとソテツは、大事に育成保存されていた。

チョウは、植えてから24〜25年でなければ実がならないから中国では、孫の時代に実がなるという意味で「公孫樹」と書く。一方、葉の形が、水掻きのある鴨の足形に似ているところから、鴨脚樹と書き宋時代の発音で「ヤーチャオ」と読んだ。これが訛ってイチョウという和名になったという。英語名ギンコウ(Ginkgo)は日本語「銀杏(音読み)ginkyoのyをgと誤記したのが由来。葉脈が波打つ少女の髪のようだというところからMaidenhairtree(乙女の髪の木)とも呼ぶ。

 イチョウは札幌市内でもよく見る木である。札幌の街路樹としては第3位で、約24,000本植えられている。中でも有名なのは道庁正門通りの並木である。大正14年、札幌市で最初の舗装道路に沿って植えられたものである。同じ樹齢の木を探し歩き、東京まで行って、やっと見つけ出した32本を植えたとのこと。(前掲書)

時、既に樹齢19年だったので、今年で100年を超えている計算になる。道庁赤レンガ館の前庭にも立派なイチョウがある。正門から見て右前に乳のぶら下がった巨木(=写真下)がある。乳と呼ばれるのは、多量のでんぷんが樹幹の一部に集まって膨らみ、あたかも乳のようにぶら下がっているようにみえることから。昔、乳のでない女性が、神社の境内にある乳のあるイチョウに、乳が出るように願をかけたら願いが叶ったという話しがあった。

 数年前の秋、NHKテレビの全国版に北大構内(医学部付近)のイチョウ並木がよく放映されていた。春の新緑も捨てがたいが、やはり黄葉の方が一枚上のような気がする。美しいイチョウの黄葉を見ると決まって、与謝野晶子の次の歌が思い出される。
金色(こんじき)のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に。

 

 

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