木を友に

(文:中野 常明)

3 ユリノキ

ユリノキ

の木の名前を知ったのは、95年の道新の投書欄である。伊藤さんという女性が「胸を締めつける札幌のユリノキ」という題で書いていた。彼女は、その数年前名古屋城の近くで、初めてこの木を目にし、札幌に移って大通公園で同じ木を発見した。その時の嬉しさ懐かしさが投書の題となった。

 早速調べてみると以下の結果だった。原産地は北米東南部、高さは通常20〜30m、直径60〜100p。モクレン科の落葉高木で葉の形が半纏(はんてん)の形に似ている。花は枝の先に咲き6枚の花びらがあり下部は橙色。花の形と大きさがチューリップに似ているので英語ではチューリップツリー、葉の形からハンテンボクという和名がある。花にはたっぷりの蜜を貯え高級な蜂蜜が採れる。

物を見たいと思っていた頃、この木に関する紹介記事がまた載った。大通公園7丁目に5本植えられており、開花期は6月下旬から7月初旬とのこと。また7丁目の公衆トイレの入り口マークはユリノキの半纏形の葉をデザインに取り入れたとのこと(一見すると猫の顔に見える)。自身で木の位置を確かめると5丁目の北側にも大木が一本あることを発見した。その年は花期を逃し実物を見たのは翌年だった。今まで見たことのない珍しい花に大いに感激した。

 その後、北大植物園や知事公館の裏庭にもあると聞いて見に行った。
『ユリノキという木』という本(毛籐勤治他著アボック社)には、新宿御苑や上野公園にもあると紹介されていたので、出張で上京したときに近くに宿を取り確かめてきた。新宿御苑の中央ローンには6本の大木があり、そのほかに日本で最初に植えられたユリノキがあった。明治9年植樹、高さ35m、幹周り3・9m、樹齢115年という説明板があった。この木から種を採り育苗して全国に配布したとのことなので、その中の何本かは北海道にも来たのかも知れない。但し北大植物園の木は、初代園長の宮部金吾博士が、米国の留学先から持ち帰った種から育てたものである。(『日本の樹木』辻井達一著中公新書)

北を旅行して盛岡に泊まったことがある。ホテルに入って窓からよく見ると下にユリノキの並木があり驚いた。『ユリノキという木』の著者は、岩手大学農学部の講師で、盛岡市指定保存樹木保護委員、岩手緑化研究会会長でもある。この人とユリノキの並木との関わりは深いと推察できた。ユリノキと縁の深い街だから、もしかして蜂蜜もあるかも知れないと老舗の蜂蜜屋に寄ったら運良く発見できた。高価だったが、珍しいので買って帰りお裾分けはせずこっそり我が家だけで素晴らしい味を楽しんだ。
因みに、ユリノキは5月30日の誕生木である。

 

 

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