木を友に

(文:中野 常明)

21 シラカバ

黄葉のシラカバ

が見てもすぐ分かる木である。シラカンバともいう。カバ=カンバである。漢字では白樺である。「華燭の典」というのは、この木から来ている。華は樺を指し樺皮を松明(たいまつ)にして明るくすることを意味する。

 シラカバ属を大別するとシラカバ、ダケカバ、マカバの三つになる。シラカバは平地に育ち、ダケカバ(岳樺)は高地に育つ。マカバ=ウダイカバは平地に育ち皮が厚く、皮肌はシラカバより茶色で葉が大きい。ウダイカバは「鵜松明樺」と書き、鵜飼いの船の松明に使われていたことに由来する。

 樺の皮はガンピまたはガンビと呼ばれ、漢字では「雁皮」と書く。薪や石炭を焚いていた頃は、大切な焚きつけ材であった。原木置き場に出かけ雁皮を剥がしてきて冬中の焚きつけとして貯めておくのは、子供の仕事であった。マカバの太い丸太に、刃の長い鉈を打ち込んで傷を付けバリバリと皮を剥ぎ取るのは、気分の良い仕事であった。

 シラカバは典型的な陽樹で、酸性土壌や砂地であっても太陽の当たるところであれば簡単に種が芽生え、シラカバだけの単純林を作る。十勝岳の麓にある白金温泉の近くに、「白樺ロード」と呼ばれる見事な白樺林に囲まれた道がある。この林は、昔、十勝岳が噴火して流れ出た泥流に種が飛んできて育った林と考えられる。開拓者達は、「白樺林は、酸性が強く痩せた土地だ」ということを経験的に知っており農地にすることを避けたようだ。だから見事な白樺林が残っており、それが今では貴重な観光資源になっているというのも皮肉なことである。

類は、切り倒して屋外に放置しておくと一年くらいで簡単に腐ってしまう。従って、白くて美しいからといって、牧場の柵や杭、ベランダの手すりなどにしてはいけない。但し、製材して乾燥して内装用に使えば、木目が細かく色は樺色といわれるピンクがかった茶色で美しく腐りにくい。特にマカバ材は、強度が強くベニヤ板や家具材として適材である。札幌コンサートホール「きたら」の内装は、床材、壁材など殆どが樺材で、音響効果は良くしっとりした樺色が美しい。

 シラカバの新緑と秋の黄金色を楽しもうと、都会の街中や海近くに植えても良く育たない。煙害、塩害に弱いからである。ダケカバの黄金色、ハイマツの緑、ウラジロナナカマドの真紅のコントラストを楽しみたい方には、初秋の大雪山をお奨めしたい。


参考図書
朝日新聞社 『北方植物園』
辻井達一『「日本の樹木』(中公新書)
佐藤孝夫『「新版北海道樹木図鑑』 (亜璃西社)

 

 

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