木を友に

(文:中野 常明)

18 ハルニレ

ハルニレ

ルニレは、漢字では春楡と書く。別の呼び名として、アカダモ、ニレ、エルム等がある。エルムは英語名で、アイヌ語では、チキサニ「われら・擦る・木」という意である。乾いた楡の木をこすって火を起したためらしい。和名のハルニレは、春に花が咲くことに由来する。本州以南には秋に花が咲くアキニレがあるというがまだ見たことがない。同属にオヒョウ、ノニレ(マンシュウニレ)等がある。

 北海道では、平地のやや湿った肥沃なところに生える落葉高木で、肥沃地の目印になる木。高さ30m、太さ1・5m以上にもなる。開拓前の札幌は、ハルニレに覆われていた。その名残の木が、北大、知事公館、植物園などに見られる。少し前までは、札幌駅前通りの分離帯にも植えられていたが、枝が大きく広がると車の見通しが悪くなり冬は枝から雪が落ちる危険があるというので、見るも無惨に枝が払われていた。現在では大通りまでの地下道建設のため地上部の並木は全て撤去されている。北大キャンパスのハルニレも老木になると幹の中心部に空洞ができ、強風で倒れる危険があるというので、大分切り倒された。しかし、まだでんと構えた立派な木が沢山生き残っている。(写真)

供の頃、薪切り薪割りをやらされたがアカダモは一番嫌いな木だった。繊維質が強く絡まり、乾くと堅くなり、すぐ鋸が切れなくなった。割るときには、大きなマサカリを力一杯振り下ろしても一度で割れるということは先ずなかった。しかも、一度食い込んだマサカリは薪から外そうとしてもなかなか外れず、仕方なく薪もろとも振り上げてへとへとになった思い出がある。木材にしても乾くと釘が曲がるほど堅くなるので、扱いにくい材料とされている。

 一方で、この木の繊維を上手に利用したのがアイヌの衣服アツシである。ハルニレよりオヒョウの方が白みがかった強靱で長い繊維がとれるという。オヒョウの木は、葉のある季節なら簡単に見分けることが出来る。葉の形は基本的には楕円形であるが、楕円の葉の先が食いちぎられたように切り込みが入った葉が混じる。魚の大型のヒラメをオヒョウといっているが、どうやらオヒョウの葉の形に似ているところから来ているらしい。


参考図書
朝日新聞社 「北方植物園」
辻井達一「日本の樹木」(中公新書)
佐藤孝夫「新版北海道樹木図鑑」 (亜璃西社)

 

 

<< 前の号へ     ▲コラムトップへ     次の号へ>>