木を友に

(文:中野 常明)

17 イタヤカエデ

イタヤカエデ

字では板屋楓と書く。枝が大きく伸びて板屋根を張ったように茂るところから付けられた名前。葉は他の楓類に比べ切り込みが浅く秋には黄色く色づく(変種には赤くなるものもある)。真夏には、気持ちの良い木陰を作ってくれるので、わが豚児等は、その下にござを敷いて風に吹かれながらよく昼寝をしたものである。

 薪材としては、最上級の部類に入る。材が緻密で、堅いので火持ちが良く木炭の原料にもなった。幹は真っ直ぐ伸びるものが多く薪割りは楽な方であった。但し、乾き過ぎると堅くて釘が曲がるぐらい堅くなるので、なまくら鋸では歯が立たない。鍬、まさかり、鉈などの農具や道具類の柄として又くさびの材料としても利用された。昔の単板スキーには、選手用のヒッコリーを除けば、殆どイタヤ単板が使われた。

イタヤカエデの葉

月末から4月にかけて、樹液が増える。夕方枝先を折っておけば、翌朝小さな甘いつららが下がっている。早起きして、このつらら集めをした思い出がある。イタヤ以外の楓類も春先に沢山の樹液を出す。それを煮詰めたのがメーププルシロップである。
 札幌市の街路樹としても植えられている。カエデ類全体で約12,000本で、数から言えば5番目に多い。街を歩いていると時々お目に掛かるが、あまり元気の良い木にあったことがない。車の排ガスと水不足に痛めつけられているので、秋の黄葉もあまり美しいとは言えない。お奨めは、大雪山系、天人峡は衣の滝への道で見られる大木である。

 

【参考図書】
・辻井達一「日本の樹木」(中公新書 )
・佐藤孝夫「新版北海道樹木図鑑」(亜璃西社 )
・朝日新聞社編「北方植物園」(朝日新聞社)

 

 

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