木を友に

(文:中野 常明)

13 サクラ

エゾヤマザクラ

州のサクラはソメイヨシノが多いが、寒さと病菌に弱く道内では数が少ない。ソメイヨシノは、葉より先に花を出すエドヒガンと大きい花びらが特徴の花を咲かせるオオシマザクラという二つの品種を交配して生まれた。東京の「植木の里」と呼ばれる「染井」(現在の豊島区駒込・巣鴨)で出来たと言われている。こうして生まれた「大きな花びらの豪華な花が、葉に先駆けて咲く」という優れた性質のまま数を増やすのに挿し木という方法がとられた。(他種の花粉のみで結実し、その種から出来た子は親と異なる性質を持つ故)★道内のサクラは、殆どがエゾヤマザクラ(=オオヤマザクラ)である。色が濃く花が咲くと同時に葉が出てくるのが、ソメイと違う点である。エゾヤマザクラより遅れて八重桜が咲くがこれはサトザクラと呼ばれる。さくらんぼもサクラの仲間でセイヨウミザクラというのが学名である。道内でも道東、道北では寒さが厳しくミネザクラ、チシマザクラ(=エトロフザクラ)など耐寒性が強く小柄のサクラが多くなる。

内には桜の名所が沢山ある。中でも道南の松前と日高の静内の桜は全国的にも有名である。松前が有名になったのは「松前の桜爺さん」こと鎌倉兼介さんのお陰である。同氏は、大正の初めから松前城跡を中心に約80種、3万本の桜を植えてきた。これらが4月下旬から6月初めまで咲き続けあでやかな花を競い合う。また同氏の遺志を引き継いで桜育成組織が結成され、将来も心配なさそうである。

 静内の桜は、旧御料牧場の中央を走る二十間道路(約40m幅)の両側に長さ6q以上も続く並木である。背後に常緑のトドマツが植えられているので、桜が鮮やかに浮かび上がって見事である。かつては、馬車の上から悠然とお花見をしたらしい。如何にも北海道らしい風景である

 エゾヤマザクラは、花が終わると小豆粒ほどの赤い実を付け熟すと黒くなり、軟らかくなる。食べると苦みのある甘い汁が出るので、唇を紫色にして食べたものである。また女の子を中心に、桜のヤニを親指と人差し指で挟み唾で濡らして糸を引かせ、もう一方の手の小指に巻き付ける遊びがあった。今から考えるとつまらない遊びと思うが、当時の子供達は、結構夢中になって遊んでいた。

 

シウリザクラ

オーの森で道内では珍しいシウリザクラを発見した。山地に生えて高さは20mに達し10〜15pの総花序に径5〜9oの白い花を付ける。エゾヤマザクラのように見栄えがしないので、イヌザクラ類として一段下の桜と見られているようだ。シウリは、アイヌ語のシウ・ニあるいはシウリ・ニ(苦い・木)に由来しているらしい。「ワオーの森」には直径10pほどの成木2本が見つかっているが、残念ながら一本は既に頭を切られていた。しかし、周りには自然に生えた実生苗が沢山見つかり、地主の高川さんは、それらを近くに移植して増殖をはかっている。「ワオーの森」は、将来、珍しいヒメアオキ、シウリザクラの見られる森として有名になるかも知れない。

 

【参考図書】
・辻井達一「日本の樹木」(中公新書 1995)佐藤孝夫「新版北海道樹木図鑑」(亜璃西社 2002)
・朝日新聞社編「北方植物園」(朝日新聞社 1968)
・田中 修「ふしぎの植物学」(中公新書 2004)

 

 

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