木を友に

(文:中野 常明)

1 ネコヤナギ

ネコヤナギ

コヤナギという名の柳はなく、春になって枝先に「猫」の毛状の芽が膨らめば皆ネコヤナギである、と今まで固く信じていた。根拠は牧野富太郎博士の図鑑の「ネコヤナギというのはカワヤナギの俗称」との説明である。同じ説明をしている坂本直行さんの随筆もある(『私の草木漫筆』茗渓堂)。ところが佐藤孝夫博士の『新版北海道樹木図鑑』(2002年)では、両者を独立した種類と説明している。素人はどちらを信じて良いのか迷うところだが、結論は学者に任せて、こちらは、二説があるという事を覚えておくことにして、木を楽しむことにしたい。

 北海道内でよく見かけるバッコヤナギは、灰緑色の太めの枝にころりと丸い「猫」が付いていてヤマネコヤナギとも言う。「バッコ」は、「婆っこ」の白髪頭に似ているところから来たという説と牛(ベコ)が好んで食べる柳「ベコヤナギ」が訛ったという説がある。3月の彼岸会に供える花の少なかった昔の北国では、自然に咲く唯一の花がネコヤナギであった。堅くなった雪の上をスキーに乗って山に入りバッコヤナギを取ってくるのは、子供の仕事だった。

リヤナギという種類もある。行李を編むときの材料になる。学生時代は、布団袋とヤナギ行李は移動のための必需品であった。卒業、入学の季節だが今の学生は、荷物は何に突っ込んで運んでいるのだろうか。味気ない段ボール箱だろうか。
昔の子供は、よく柳の木を遊び道具にした。川岸の柳を切って皮をはぎ、真っ白い木刀を作って振り回した。七夕祭りには笹の代わりに短冊を吊るし、シダレヤナギの枝を鞭代わりにチャンバラをやってみみず腫れを造り、釣った魚を柳の枝にエラから通してビク代わりに吊して帰ったりした。コンクリートの護岸が主になった最近では、こんな事もできなくなった。

 柳は雌雄異株で、ポプラやドロノキ、ヤマナラシなどは柳の親類で、どれもヤナギ科に属する。平地から高山まで広く分布し道内だけでも30種以上も見られる。我が家の周りにはこれらの木が多く、6月の開花期には、綿毛に包まれた種(柳絮‐りゅうじょ)が飛び交い、雪が降ったような光景になる。

 

 

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