自然に潜む危険と向き合う

今内 覚(こんない さとる):北海道大学獣医学研究科准教授

第2回 アウトドアにおける危険と必要な警戒(海外編)

 前回はクマの恐さについて取り上げました。そのクマも冬眠中、現在北海道は厳冬期。山仕事はオフシーズンということで海外での『アウトドア』から経験した必要な警戒事例を紹介させて頂きます。

@天気

Z共和国は前回のサッカーW杯が行われた南アフリカの2つ上に位置する国です。私が調査に赴いた頃は、平均寿命が33歳、HIV陽性率が33%という状況でしたが、現在は発展目覚ましいアフリカの国の一つです。吸血バエによってヒトや動物に致死的な病気を起こすトリパノソーマという病原体の調査に赴いた時のこと。山深い奥地では天気予報を知る術もなく、連日調査を行っておりました。調査が終わり撤退前日の夜、小雨が降り出したかと思うと豪雨となり一晩中降り続きました。明るくなると景色は一変、生活水として使っていた近くの小川は濁流と化し、道路は水没。橋も流され食料も無い中、川水だけで数日間足止めされました。無事帰還はできましたが、天候急変の恐ろしさは身に染みました。

A動物

その帰り道のことです。疲労困憊の一行が、ジャングルを抜けて草原に出た時、視界の横に大きな物体が視界に入りました。それはオスの象でした。大変感動したのもつかの間、すごい勢いで車めがけて突進してきました。道無き道をフルスピードで逃げ何とか難は逃れましたが、現地ではライオンよりも象ほうが恐れられ、死亡事故も珍しくないそうです。その他にもカバ、ワニ、毒蛇、毒蜘蛛、サソリにも注意が必要でした。

B食料

日本のように水道水が飲める国は極わずかです。食料についても衛生環境が整っていないため十分気をつけなければなりません。コレラや腸炎、赤痢等のひどい下痢症は完全に活動を停止してしまいます。このような病気の病原体は必ず口から入りますので、過剰な警戒はいりませんが、火を通す等の対策が必須です。

C病気

海外には日本に無い恐ろしい病気が沢山あります。その一部は虫さされによるものです。例えば蚊の吸血によって引き起こされるマラリアやデング熱はワクチンも無く防御法がありません。蚊に刺されないことが大切となります。私は最低限の常備薬を持参で調査に入りますが、海外、ましてや病院も無い山奥で病気になったり、怪我をするとこれほど心細いことはありません。携帯電話やGPSを持参することは緊急時の対策の一つです。

D治安

アフリカ近海での海賊がニュースになっていますが、山賊も出ます。クマも象も恐いですが、一番恐ろしいのはヒトです(詳細は割愛しますが、身を以てそう思います)。今回は海外編を紹介いたしましたが、次回は北海道編をお届けします。

 

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