森林人コラム

春日 順雄氏によるコラム「命を引き継ぐ 木や虫たちの知恵」

9 シナノキ

 シナノキの開葉は、5月20日頃です。開葉から1週間ぐらいで、葉の脇から花序が現れます。開花は7月中旬です。その間、総包葉は反り返るように大き くなり、花梗が伸び枝分かれし、先端部につぼみがつきます。花序の形が完成 するのは、6月末です。

シナノキ

 開花まで、樹の下には沢山のつぼみの落下がみられます。開花中にも著しい 花の落下がみられます。シナノキは、雄しべが先に熟し花粉を散布し、その後に雌しべの柱頭が発達します。柱頭を発達させる前に落下してしまう、雄機能だけの発揮で終わるものがあります。

 どうして、大量のつぼみや葉を落としてしまうのでしょう。上の写真を見て ください。沢山のつぼみがみられます。全部が稔ることはシナノキにとって大きな負担です。つぼみや花を落とすのは、その年の気候などの環境に合わせ種子の数を調節するシナノキの生き残り戦略なのでしょう。

 北海道には、シナノキ科シナノキ属として、シナノキとオオバボダイジュ、 亜種のモイワボダイジュが自生します。
シナノキの種子  写真は、オオバボダイジュの種子です。シナノキの仲間はどれも、この ような種子の付け方をします。青空をバックにヘリコプターの編隊飛行のよう に 見えます。種子が機体、総包片がプロペラです。風の強い日、梢を離れ、総 包片をグルグル回転させて、遠くへ種子を運ぶのです。 

参考:「光珠内季報」

<< 前の号へ  ▲コラムトップへ  次の号へ>>