命を引き継ぐ 木や虫たちの智恵

(文・写真:春日順雄)

8 ツユクサ

ツユクサ ツユクサは人の心を惹きつける鮮やかで清らかな青の花を咲かせる。その清らかさが人に愛され文学にも登場する。徳富蘆花は『みみずのたはごと』のなかで、「花では無い、あれは色に出た露の精である」とたたえている。万葉集の歌には「ツキクサ」の名で出てくる。

 ツユクサの花の青は水や光に弱くすぐに褪せてしまうが、花の汁を衣にすりつけて染めていた。その色は縹色(ハナダイロ)という言葉で今に引き継がれている。滋賀県草津市の木ノ川町付近では、ツユクサが突然変異して生じたオオボウシバナを栽培して青紙を作っている。友禅染の下絵の絵具として使うのである。

 蜜を出さないツユクサの花には4本の飾り雄蕊と花粉を作る2本の本物の雄蕊がある。色鮮やかな飾り雄蕊を目指して虫がやってくるとすかさず本物の雄蕊が花粉を虫の背中につける仕組みである。 ツユクサは朝開き、夕方にはしぼむ一日花である。残念ながら虫が訪れず受粉の機会のなかった花がしぼむとき、雄しべは雌しべのほうに曲がって花粉をつける。他からの花粉を待ったが果たされないときには自家受粉をして命をつなぐのである。
 ツユクサは畑に侵入すると厄介である。茎は地面を這い、節からは次々と根を出し茎を出す。引き抜いても根を出し茎をのばす。乾燥し、かなり干からびた状態でも蘇る生命力をもつ。

 

 

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