命を引き継ぐ 木や虫たちの智恵

(文・写真:春日順雄)

5 ヘラオオバコ

ヘラオオバコ 道端や原っぱにヘラオオバコが咲いている。和名は「普通のオオバコと違い、葉がへらのような細い形しているオオバコ」の意味である。ヘラオオバコはヨーロッパ原産で、日本には江戸時代末期に渡来したとされ、その後北海道から沖縄まで広く帰化し、ごく普通にみられる。

 花は円柱形の穂にびっしりと付き、下から順に咲き上がるが、まず始めに、雌しべが咲き上がっていく。写真では、上部に地味であるがごく短く線状の雌しべの柱頭が見える。下部の飛び出ているのが雄しべの葯で、雌しべに遅れて咲き上がっていくのである。

 この様に同一の花からの受粉を避け、他の花からの花粉で受粉し、よい種子、良い子孫を次代に残そうとしているのである。ヘラオオバコは雌しべ先熟の花である。オオバコもヘラオオバコと同じく、雌しべ先熟である。

 反対に、雄しべ先熟というものもある。トウモロコシは雄の花穂が花粉を飛ばし始めてから、毛状の雌しべの柱頭が出てくる。

 このように雌雄同株(しゆうどうしゅ)の植物には、雄しべ・雌しべのどちらかが先に熟し、近親交配を避ける仕組みを持っているものがある。細かく観察すれば、もっと多くの種類が見いだせると思う。

 長い進化の果てに獲得した形質だと思うが、見事としか言いようのない巧みさである。

 

 

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